下を覆い隠す雲海から
突き出た大樹

遥か昔の忘却の
記憶が蘇る

野道を歩く3人
一人の少女が尋ねた

少女
「ねえ、グラン。いつか貴方の故郷に辿り着いたら、その地にエレアを植えても良い？」
グラン
「何ぃ⁈」

少年は仰天する。
3人目の男が笑う。
頭身の低いゴブリン

「ハッハッハ！そりゃ良いでよ！」

足で蹴り合う
ゴブリンとグラン
笑う少女‥

ただ一つ‥

「ただ一つ？」

半身を起こし
胡座をかく13才の少年。
先程まで寝起きした
後の表情だが

その表情は暗く、
グランと言う名の夢に
視線を落とす
傍らには横たわる一太刀。

「親父は‥三年前に死んだ」
「今更何だってんだ‥」

立ち上がり、腰の巾着袋の
硬貨を確かめる
自分が立つ岩礁から町が見える。

「街が近いな」
「宿代稼がないと」

下で崩れる音
その方向に視線を下す

奇岩が崩れたその先で逃げる
人影が見えた

怪物に追われている
追いつかれそうだ

少年は一つため息を漏らし
横たわる一太刀を掴み、装備。

「距離あるな。届くか？」

そんな考えもニヤッと
少年は不敵に笑う。

「届くだろ。この縮間之太刀なら」

構えた少年が一瞬で姿を消す
消えた場所から空間が
ぐにゃりと歪む

風が吹いた‥

少年が消えた岩礁には
草むらが茂る真ん中に

一本の木が風で揺れている