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GAIASEED2


逃避

息を切らし、必死に逃げる
頭の上の奴も必死だ

四つん這いに迫る怪物は
少女の足より早い

「もう無理‥死ぬ⁈」

そう考えた矢先
怪物は何かに反応し
追うのを止めた。

少女が気配が離れたと
感じると振り向いて
様子を見る

巨体の怪物の足元に
小柄な少年が
いつの間にか現れた。

帯刀
靡くバンダナ
空間が歪む足元‥

「誰⁈急に現れた⁈」

怪物が前足で払い除けようと
少年に蹴り掛かる。

消えた

少女の目の前に再び現れる。
足元の空間を歪ませて

「また?消えたり現れたり
何なのこの子⁈」

怪物はキョロキョロ
足元を探している

少年が少女に振り向く

少年
「何してる、早く逃げろよ!」
少女
「え、あの‥」

少女は気が動転している様だ
でなければこんな荒野に
一人彷徨かないだろう。

少年が怪物に向き直る
既に怪物は視界に捉えている
逃げても間に合わないだろう。

少年は少女の手を掴む

少女
「え⁈」
少年
「飛ぶぞ‼︎」

一瞬にして迫る怪物の足
消える男女。

向けた進行方向に向け
空間を歪曲し圧縮
定めたベクトルの
距離指定を想定し、
全身を前方に押し出す。

向かう先は木の生えた岩礁
少年がいた場所だ。

押し出された男女。

しかし岩礁に到達した途端に
少女の手袋がすっぽ抜ける

更に押し出された少年が
岩礁の更に外側へと
飛び出してしまう。

少女
「ええ⁈何処行くの⁈」

空中でクルリと反転すると
少年は落下前に次の
ベクトルを定め自身を押し出す
空間が歪曲し一瞬で押し出された

止まった先は木の幹だった
大の字に打ち当たる。

悶絶さえできず大の字に転がる
少年を痛そうに見下ろす少女。

少女
「だ、大丈夫⁈」
少年
「っっっ‼︎‼︎」

顔面を押さえてようやく悶絶
鼻の骨は折れていないと
気付くと、ガバッと起き上がる。

少年
「痛〜〜〜‼︎ダッセェ‥」

苦笑いする少年
無事だったと安堵する少女

少年
「7つん時から振った刀だからな」
少女
「え⁈」
少年
「俺、アモスだ」

チャンバラごっこではなく
7歳で帯刀させる
教育なのどあるのだろうか?
仰天する少女は
アモスをじっと凝視する。

少年が視線に気付く

少女
「ありがとうアモス。
助けてもらって
申し訳ないんだけど‥
お願い、私をその力で
上の島に連れてって」
アモス
「?」
少女
「お願い‼︎」
アモス
「理由は知らねえけど、
何あるかわかんないぞ
危険だって事くらい」
少女
「わかってる!」

少女は力強く答える。
本当にわかって
いるのだろうか?

少女
「母さんの願いでもあるの」

訳ありの様だ
アモスが立ち上がり、
空を仰ぐ。

広がる上層
浮遊する岩礁帯。

アモス
「簡単にはいかねえさ」
「けどな」
少女
「‥‥」
アモス
「ワクワクしねえか?」

少女は目を見開く。
アモスは見知らぬ少女の話に
嫌な顔せずニヤッと
笑ってみせたのだ。

13歳でこれ程の経験を積んだ
彼の半生はどんな
ものだったのかと、
少女は疑問に思う。

しかし、打ち明けた事で
少女も安堵した。

少女
「フフ。何だか行けそうな
気がしてきたわ」
「私、フィユ!」
アモス
「ああ。ところでフィユ」
フィユ
「何?」

アモスが腰の巾着袋を手に

アモス
「俺金無いんだ。町で稼ごうぜ」
フィユ
「はい⁈」
アモス
「だからこのままだと野宿だ」
フィユ
「ええええええ⁈」

前言撤回
宿泊費も無く根無草で
アモスは飄々と笑う。

アモスはフィユと
正反対のアウトドア

フィユは旅のイロハも
知らないインドア派。

アモスは鋭い目付きから
糸目に変わっている。

旅の目的をアモスに訴え
正解だったのか

フィユは不安に迷っていた。

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