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怪談43「チリンチリン」

 当時、田舎に引っ込んでいた時期がありました。
 いくつか私の怪談話にも書いた田舎なわけですが、他にもさまざまな不思議なものがありまして、今回の話もそのうちの一つ。

 その田舎に引っ越してまもなく、ある現象が起に気が付いたんです。
 その頃、私はとにかく怠惰な生活をしていたんですが、そんな時期の夜中の話です。
 私の部屋は道路に面していて、窓をあけたらすぐ道路があります。
 車1台半ぐらいの道路で比較的狭い感じなわけです。

 夜中の1時ぐらいに、オンラインゲーム(モンハンフロンティア)をプレイしていたのですが、その日は使っていたヘッドフォンが壊れたので、普通にPCのスピーカーから音出して遊んでいました。

 引っ越してきてその時が初めてヘッドフォンなしでまわりの音が聞こえる状態だったんですね。

 ゲームしていると、ゲームの間に「チリン」と鈴かベルのような音がする?と感じました。
 それでも無視しているとまた「チリン」と。

 その日は、まあ気のせいだろと思っていました。

 その四日後の夜中、ゲームしているとまた「チリン」と音がする。

 ゲームの音を消して、耳を澄ませていると「チリン」とやっぱり聞こえる。

 そうしているうちにその音が窓の外、つまり前述した道路から聞こえるということに気が付きました。

 ・・・・・が、まあ、いっか?と思ってその日はスルー。

 しかし、それから4日たった夜中に、「チリン」と聞こえだす。

 しばらくその音を聞いていると、ある事に気が付きます。

 その音は遠くから聞こえ、私の家の前を通り、そして遠ざかっていく。

 つまりは家の前をなにかが「チリンチリン」鳴らしながら通っているわけですね。

 ・・・・・これは面白い!となったわけですよ。
 それに気が付いた日に懐中電灯の電池を買いに行き、さっそく夜を待つ。

 もうなにするかわかると思いますが、その音の正体を見てやろうというわけです。

 それから夜はゲームもせず、懐中電灯を窓際に置き、しずかに音を待つという日々を過ごしました。

 数日たった頃、同じ時間ごろに音が聞こえてきたんですね。
 遠くからしていた「チリン」という音は、一定の間隔をあけながら鳴り、そしてすこしづつ音が大きくなってくる。
 つまりは私の家の前に近づいているわけですね。

 そして、おそらく私の家の前に来たであろうというタイミングで、窓をあけ、懐中電灯で外を照らしました。

 なお、田舎のため、街灯なんてありませんから懐中電灯の明かりと、家から漏れる明かり以外は漆黒の闇です。

 ・・・・・・が、ですね、なにもいなかったんですよね。

 ただし、音だけは鳴っている。

 「うそだろ」と思って、私は玄関から道路に出たわけです。

 すると「チリン」という音がどんどん遠ざかっていくのが音の大きさでわかります。

 その音の場所だと思うところと照らしますが、やっぱりなにもいない。

 でも、その現象がその時の私には面白いものであったので、その音を追いかけることにしました。

 「チリン」という音を追いかけて、後ろ?から歩いていく。

 田舎なので、家に明かりが付いているところもほとんどない。
 真っ暗の中、懐中電灯を持って音を追いかけていく。

 しばらく進むと、十字路があり、その十字路を左に音が曲がっていった気がしました。

 当然追いかけるわけですが、その十字路から左はほとんど民家は無く、数件過ぎたら、完全に山の中に入っていく道なわけです。

 音はそのままその道を山のほうに向かっていくわけですね。

 しばらく後をつけていたんですが、本当に山の中に入ってしまうし、音は鳴るものの、さすがに不気味になっていくわけです。

 それでも追いかけていったわけですが、山の入口の森の中に入ったあたりで諦めました。

 ・・・・余談ですが、追いかけている時は「チリン」という音があったので、そこまで感じませんでしたが、音が無くなったあとの山の入口付近の道を改めてみると、めっちゃ怖かったです。
 (帰りのほうが怖かったんですよね~。まじで人なんていないし。音があった時はなんとなく「誰かがいる」感じがするんで安堵感もあったんだと思います)。

 次の日、その音の話を母親にしたのですが、母親は家の奥にある部屋で就寝するので、その音には気が付いてませんでした。

 それからも音は鳴るわけですね。

 そんなある日、近所のおばあさんと話してた時に、そのことを思い出し、聞いてみたんですよ。

 おばあさんはその音が鳴ることには気が付いてませんでしたが、聞いてすぐに「ああ、托鉢だろ」と言ったんですよね。

 詳しく聞くと、おばあさんが子供の頃、かなり昔は、托鉢がこの道を通ってて・・・という話を聞かされていたそうです。

 私が「へ~そうなんですね~。でもその音を追いかけたら山のほうに入って行ったんで、お坊さんじゃないんじゃないですか?音の正体って」と言うと「あんた、夜中にその音をつけていったんか?物の怪とかだったらどうすんねん」と呆れていましたが、続けて「でも、音の正体はやっぱお坊さんかもね。あんたは地元の人間じゃないので知らないだろうけど、その山の中のほうにしばらく行くと昔から寺があってね。そこのお坊さんだったんだよ托鉢してたのは」と言ってました。

 と、いう事で、音の正体は一応「お坊さん」ということになりました(笑)。
 
 しかし、それよりも「おお」と思ったのは、さすが田舎のお年寄りなのか、「物の怪だったら」なんて言葉が出てくることですよね~。
 都会じゃなかなかそういうセリフ聞きませんよね(笑)。

 

 

 

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