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プロ雀士日吉辰哉_彼が第2回AKracing杯決勝でみせたプロフェッショナル

◇立ちはだかる強敵たち


予選D卓で一時9万点越えの点数をたたき出した後、その差を削りに削られ、萩原プロに7000点差まで詰め寄られたものの、最後は渾身のリーチで振り切った日吉プロ。

決勝を前に、決勝を盛り上げるべく、煽りに煽ったツイートを発信している。(ここでは割愛)


対戦相手

まず和久津晶プロ

決勝に上り詰めた実力者和久津プロ

プロクイーンを2期、第17回女流モンド杯等の獲得タイトルの他、34~36期の鳳凰戦A1リーガー。女性でA1リーガーになったのは史上2人目だ。

次に、伊達朱里紗プロ

かわいいルックスには似つかない打ち回しを見せる伊達プロ

2019年にプロになって2021年に第1期桜蕾戦で優勝。Mリーグ2021シーズンで最高打点をたたき出した驚異のニューカマー。

そして白鳥翔プロ

麻雀が始まる前の白鳥プロはいつもおとなしい

第24期・25期の麻雀マスターズにモンド杯を2回、發王戦も制覇している誰もが知るオールラウンダー。

最後にわれらが日吉辰哉プロ

なぜかぐったりした表情から一転きりっとした表情に戻る日吉プロ

Mリーグ公式実況。鳳凰戦はD1リーグ在籍。タイトル歴なし。失うものは何もない。ここはいくしかない。



◆第1試合



1試合目東1局から日吉プロの配牌は悪くなかった。いや、良い。和久津プロが悪い。国士に行かざるを得ない配牌だ。そして日吉プロは5巡目にはカン5sをきっちり自模って聴牌。そして即リーチ。とても積極的だ。待ちは中と2sのシャンポン。

一方、白鳥プロも聴牌からの即リーチ。待ちは2・5s。

伊達プロだが、11巡目聴牌するもカン8pでは戦えずと見て8sを切らずの降り。しかし、次巡8pを自模ってしまう。これは伊達プロには痛い裏目となった。

このカン8pをいきなり自模るかね?

結果は二人聴牌で流局したが、日吉プロもシャンポンとはいえ5巡目リーチを上がれずというのは若干厳しい展開だ。

シャンポンの中を自模れていれば大きかった

次局、和久津プロが早々に2つ仕掛けてトイトイへばく進。4巡目には3つめの仕掛けを入れて4・7mの両面待ちに聴牌をとった。結局対々ではなく東のみで良しとした。伊達プロから4mが切られ和久津プロが本試合の初上がりを取る。白鳥プロは赤2枚の好配牌を活かせず。

次の東2局も日吉プロ配牌悪くなく、6巡目に5mを自模って七対子白単騎でテンパイ。これが2山。しかも、和久津プロが白を浮き牌で抱えている。ここはリーチか?

いかない。

聴牌したら即リーチしてきたこの大会。なぜか日吉プロはリーチを宣言しなかった。当然待ちは変えられる。

一方、伊達プロも東を仕掛けて3・6mシャンポンの聴牌。

7巡目に白鳥プロが危険牌7sをツモる。これを切れれば一向聴継続だが無筋の7sはリスクが高く、解説の滝沢プロは8p・8pの対子落としを予想。

ここで白鳥プロが7sを強打。

7s・3sは打ちづらい局面だが、ここで白鳥プロは勝負に出る

通ったが、これでドラ3sもレールに乗った。2枚の危険牌を勝負しにいった白鳥プロ。

8巡目に白鳥プロは5pを自模って聴牌。そして即リーチ。5・8s待ち。

ちなみに、8pを切って聴牌した場合の待ちはカン4sとなったが、4sは和久津プロが4枚槓子で所有。一生上がれないところだった。

同巡ついに日吉プロが白単騎で追いかけリーチ。となると、なんで今までダマだったのかという話になるが、とにかく、白鳥プロを追いかけた。

だいぶ遅れたが日吉プロもリーチに出た

だが、日吉プロの次巡。まさかの白鳥プロの当たり牌5sをツモってしまう。しかも赤だ。そして放銃。リーチ・タンヤオ・平和・一盃口・赤の8000点。

日吉プロのリーチが先で、伊達プロの聴牌濃厚の局面なら、白鳥プロが勝負に行ったかどうかは分からなかった。日吉プロリーチ自重の間隙を縫って、勝負に出た白鳥プロが見事に上がりにつなげた。点数以上にこの上りは大きいかもしれない。

とはいえこの段階で、白鳥プロ39500点、日吉プロ21500点、まだトップまで18000点差。

東3局の日吉プロ親番。しかし、配牌は良くない。一方、伊達プロが早々に好形の一向聴。7巡目に9pを自模って聴牌。7p単騎の形聴に構えた。

日吉プロ、8巡目でメンツなし。7pが浮き牌だ。伊達プロが役をつける前に聴牌したい。

最後は日吉プロが混一色進行と見える和久津プロの現物8sを打ち、伊達プロが1300点で上がった。大きくなかったのが幸いだが、日吉プロの親番(1回目)は流れた。

東4局、和久津プロが好配牌、伊達プロも悪くない、方や日吉プロはメンツもなく悪い。

白鳥プロも悪かったが、ドラの発を重ね、これでやる気が出たか。

伊達プロは5巡目聴牌もゆったり構えて聴牌外し。この余裕がにくい。

日吉プロは5巡目で9mを暗刻にでき、打3sで両面・ペン張の一向聴にこぎつける。まだドラ発は切らない。和久津プロは4pを槓子にして、3pをポンして対々方向。そして4pも暗カンだ。ドラの乗りづらい形だが、さすが超攻撃型麻雀アマゾネスと言って良い。次いで7sもポンできて9巡目で聴牌。5・8mのシャンポン。8mは1枚山に残っている。そして、白鳥プロの手牌に8mが浮いている。

日吉プロは9s自模り、発を切ると受けが広くなるが、ここまで来るとドラ発は危険牌となっており切れない。となれば重ねればいいこと。ペン張を外していく。

伊達プロが12巡目に5pをチーして聴牌。カン8m待ち。一通のみだが山に1枚残っている。

同順に日吉プロもテンパイ。発単騎だがこれは純カラ。そして、当たり牌の8mを掴んでしまう。ここは、9mを打って凌ぐ。

これは降りか、回ったか。まだ分からない。

遅れている白鳥プロも3mをチー。7・7・8mのブロックを処理するつもりだ。

萬子の上の方は危険だが白鳥プロ踏み込んでいく

そこから西をポンして打7mで両面に固定。打7mも怖いところだが、勝負にいった。6・9mを選択して聴牌。

ここで中とのシャンポンに取らずに打7mの両面を選択した

そして同順。まさかこのタイミングで、日吉プロが絶好のペン7mをツモってしまう。8・9・9・9mからいったんは9mを切って凌いだが、9mは対和久津プロには通ったものの、今9mは白鳥プロの待ち牌となっている。完全に下りているなら9mは止まるが、回ったのなら9mは打たれてしまう。

どっちなのか?残り巡目はさほど残っていない。

日吉プロ、聴牌復帰を選択。打9mで白鳥プロに放銃となった。発・混一色・ドラ3の12000点。連荘目的の和久津プロへの放銃なら傷は浅かったが、白鳥プロへのハネマン放銃は大きかった。

園田プロばりの「回して」の聴牌復帰だったが、この手順を見ていて若干の不安はあった。日吉プロは風に乗って決勝のチケットを掴んだ。この「上手く打ちました」というテクニカルな手順がはまらないような気もした。

また、白鳥プロも試合後にこの局を振り返り「日吉プロはキレイな打ち方をするので」とコメントしている。和久津プロを警戒しての9mの対子落としを見て、もう一枚9mが出てくることを読んでいた節も感じられた。

この東4局。伊達プロが5巡目、和久津プロが9巡目にいったん聴牌しているが、白鳥プロはドラ発こそあったが手は遅かった。そこから聴牌にこぎつけて、日吉プロの打ち筋を読んで7・7・8mから、7mを勝負して6・9m聴牌を取りきった。その上で、この局を上がってしまえば、点数の面でも、勝負の流れでも白鳥プロの流れは出来上がったような気もする。この流れを止めるのはなかなか厳しいのではないか。

しかし、止めてほしい。日吉プロの風の力か、伊達プロの勢いか、和久津プロの超攻撃スタイルか。誰が止めるのか。止められるのか。

まずは伊達プロが牙をむく。南2局に白鳥プロから裏・裏乗せた12000点を上がり、逆転に成功。南2局2本場では和久津プロからリーチ・発の3200点を上がる。

伊達プロが値千金の親マン直撃

しかし、白鳥プロも黙っておらず、南3局に攻め切って和久津プロから3900を上がり、オーラスも日吉プロから発・赤2000点を上がって伊達プロを逆転し、1試合目のトップ獲得。それに伴い、2試合目の北家ラス親を白鳥プロが獲得した。

白鳥  44.6
伊達  43.3
和久津 23.6
日吉   8.5

1試合目を終えて時点で、日吉プロとトップ白鳥プロの差はまだ36100点差だ。だが、点差以上に白鳥プロの強さを感じるのも確かだ。


◇閑話休題


2022年5月末KONAMIの麻雀格闘倶楽部Extremeに11人の新雀士が新規参戦した。我らが日吉辰哉プロがその1人。20周年となる節目の2022投票選抜戦が開催された。

9月26日に発表された投票結果は以下のとおり

1位 佐々木寿人プロ 898,446票

人気・実力でぶっちぎり

2位 滝沢和典プロ  678,512票

実力だけでなく麻雀界きってのナイスガイ

3位 沖ヒカルプロ  614,444票

元パチスロ必勝ガイド編集部の副編集長
麻雀界に留まらない多くのメディアに出演

4位 灘麻太郎プロ  592,416票

プロ雀士、エッセイスト、漫画原作者、歌手
日本プロ麻雀連盟の名誉会長

5位 日吉辰哉プロ  554,507票

幅広い人気を獲得

本人曰く「実況枠」というような参戦理由を言われていましたが、36人中の5位を獲得。新規参戦者がいきなり5位という驚愕の結果に。

同じ団体で実況を務める古橋崇志プロが35位というのは差がつき過ぎとも思います。


老若男女、ガチ層からライト層まで、幅広く支持されている日吉プロの人柄および実力を結果が反映したか。



◆第2試合


第2試合は東1局で日吉プロが早々に聴牌し2000・4000を自模り、点数を戻して始まる。しかし、この局も白鳥プロが日吉プロの当たり牌4sをきっちり止めていた。

何とも悲しい展開になったのが東3局。

日吉プロ親番で絶好のダブ東対子。しかし、先に白鳥プロが聴牌してリーチ。伊達プロは東を抱えたまま降りてしまう。日吉プロはダブ東を断念し発のみで聴牌し和了。何とか和了も500オールは何とも厳しい。

とはいえ、この段階で日吉プロとトップ白鳥プロの差は23100点となっている。まだイケるはず。

次局は白鳥プロの4巡目聴牌に和久津プロが放銃して8000点。3度目の親番も終了してしまった。残る親番は1回だ。

東4局の和久津プロの親番では、白鳥プロが11巡目に待望のドラ7sを自模り、テンパイして親マン確定の即リーチ。和久津プロもテンパイで対抗する。待ちは西と8sのシャンポンでリーチにいった。赤2枚を内蔵だ。

日吉プロ応援者としては、何が何でも白鳥プロから和久津プロに放銃してほしい場面だ。

そこに一向聴の日吉プロに絶好の8sツモの聴牌が入ってしまう。打西でテンパイだ。

聴牌してはいけない場面だった。無風というか逆風が吹く。

西?

日吉プロの西は和久津プロのストライクど真ん中に放り込まれ、ライトスタンドに叩き込まれた。8000点。

この流れで、この点数は、ほぼ終戦を覚悟せざるを得ない展開。

解説の滝沢プロは「白鳥プロの4000オールを防いだ面もある」と、一応日吉ファンへの慰め発言もしてくれたが、とても「そうだ、そうだ!」と言えるような状況ではない。そのフォローにはムリがある。

※解説者としてはそういわざるを得ません

しかし、この場面で絶好の8s自模るか・・。

流れが悪い。

いや、風向きが悪い。

風マイスター日吉辰哉といえども、風は操れない。

南1局では6巡目にペン7sを自模って高目一通の聴牌。4・7の両面で即リーに出た。

絶好の2度受けの7sを自模ってリーチ
問題は安目の7sが出た時の対応だ

ここで問題になるのが安目の7sを自模る。もしくは、7sが打たれたときに上がるかどうかだ。

リーチ・平和とリーチ・平和・一通では天と地ほどの違いがある。

一番いいのは高目4sを自模ることだ。

4sを自模れ!!

と当然日吉応援者としては念じる。

断じてそれ以外を願うことはナイ。

が、そんな一視聴者の願いはだいたい通じないものだ。

安目の7sを自模ってしまった。

これは上がらざるを得ない。神様が「今日は諦めろ」と言っているような7sツモだ。700・1300。20符3飜の点数は2600点。それは麻雀が日本に導入された当初から決まっていることらしい。

このツモを見て思ったが、ここは自模った7sを叩き切ってほしかった。(いや、素人の戯言です)

和了牌を自模って捨てることはなかなかあることではない。他荘が切った牌を見逃すことはあるが、自模った和了牌を切り捨てた麻雀プロというのを私は見たことはない。(割とありそうではあるが)

しかし、ここまで吹き荒れる白鳥プロへの風を日吉プロへのフォローウィンドにするには、それぐらいの胆力が必要だった気もする。万一、その後4sを引いて高目として卓に叩きつけたら、視聴する日吉プロ応援者全員がその後の逆転という奇跡を信じたと思う。一つの伝説になっただろう。

何にせよ、安目で一通ならず700・1300。この局の開始段階でトップ白鳥プロとの差は38400点差だったので、親番が1回残っているとはいえ、2700点の上がりで局を進めたのは痛かった。

さて、南2局1本場に流局寸前にぎりぎりチーテンでテンパイを取りきった和久津プロに、ようやく風が吹き始める。2本場で東・発・ドラ1の3200オールを上がって2番手に浮上。

2本場では6巡目に聴牌した白鳥プロがヤミテンにとった次巡、一発で自模ってしまうという若干裏目が生じた。

南3局は日吉プロ最後の親だが配牌は悪い。一方、白鳥プロは悪くない。そして聴牌一番乗りは伊達プロ。13巡目にカン8sでリーチ。16巡目に白鳥プロも5・8sでテンパイしてヤミテン。

同順に日吉プロも8sを自模って1・4m聴牌。ドラ4sをぶった切って即リーにいった。この判断は良く、同順に白鳥プロが4pを掴み撤退。この撤退が裏目となり、白鳥プロは次巡さっきまでの和了牌5sを自模ってしまう。もしリーチしていれば一発・ツモだった。親の日吉プロの即リーで2軒リーチとなり、白鳥プロがリーチを自重する流れになった。

白鳥プロに暗雲か?

と言いたくなるが、なにせ2試合目の南3局。残り局は少ない。

次局は白鳥プロが4巡目に聴牌。誰にも止められない6・9s待ちに捕まったのは伊達プロだった。そしてオーラスへ。

南4局は和久津プロのみ役満条件が残った。伏せれば良い白鳥プロだがタンヤオ・平和・赤・赤・三色18000点を伊達プロから上がって見せた。

本当に麻雀が好きな男だ。

次局和久津プロ役満ツモ条件。もう、AKracingの椅子に白鳥プロの名前が刻印しても問題ない点差だ。(刻印があるのかどうかは分からない)

そして流局となり白鳥プロが76600点を積み上げて優勝した。

AKracing愛に溢れる雀士が、AKracing杯を優勝した
のはある意味必然だった(既に1脚購入済み)



◇日吉プロが見せたもの


振り返ると数か月前、AKracing杯に古橋プロから予選に抜擢されたことを茨城のLucky FMの「root for M league」で報告した際、放送対局に特別な想いがあることを日吉プロが語っていた。それは一般人では理解できない業界人ならではの放送対局に対する一種のリスペクトだった。

1試合目の東2局の5巡目の白単騎。

なぜリーチをかけなかったのか?そこに無意識の逡巡があったようにも思う。前回の予選観戦記にも書いたが、団体のトップリーグに在籍歴がなく、タイトル歴もなくこの大会にエントリーしているのは日吉プロだけだ。何が何でも勝つというふっきれたものがあれば即リーチにいったように思う。最終的にはリーチにいったが、そこに一瞬の迷いがあったかもしれない。

それにしても、日吉プロの日ごろの実況からすると、風を感じるクレイジーな打牌があってもおかしくないと思ったが、真反対の技巧派の白鳥プロ曰く「きれいな」打ち回しを見せた。Mリーグでも日吉アナのドリブンズ愛を時折感じることがあるが、技術を尽くした打ち筋を日吉プロは志向していることが感じられた。

日吉プロはその熱の入った劇場型の実況が目立ちがちだが、そういった基礎技術があるからこそ、その上にそのプレイヤーのヒストリーや想いをのせて実況できるのだ。

日吉プロは実況前にプレイヤーの関連データを事前に予習することに相当の時間を使っていることを前出ラジオ番組で語っている。

裏打ちされた麻雀技術入念な事前準備卓越したワードチョイス、この3つが複合して100万人が熱狂する実況を演出することが可能となる。

それが理解できる対局であった。

そして、事前に対局者を煽り、敗れていった流れは、ある意味日吉プロの「次善策」として計算どおりだったのかもしれない。


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