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筋肉少女帯ベスト盤『一瞬!』の新録曲が良い。

おはようございます。

皆さん、筋肉少女帯の最新アルバム『一瞬!』、もう聴きましたか?
私は最近買いました。昨年6月発売なのに、今更。しかも中古を待ったわけでもなく、新品を定価で。
『一瞬!』はベストアルバムでして、私は収録されている音源を大体全部持ってたんですよね。新曲は「50を過ぎたらバンドはアイドル」のみで、他は「サンフランシスコ」と「高円寺心中」を再録音したものだけ新しい音源です。「50を~」と「サンフランシスコ」はめちゃくちゃ聴きたかったですが、発売当時は金欠だったので泣く泣く購入を断念しました。

発売から時は過ぎ、昨年9月18日に鬱フェスという音楽フェスが開催されました。
自称ビョーキなリスナーのための、盛り下がることを目的とした知る人ぞ知る素晴らしいフェスです。
出演者の大槻ケンヂ、神聖かまってちゃんと主催のアーバンギャルドが観たかったので、私もオンラインで参戦しました。
その鬱フェスでオーケンとアーバンギャルドが件の「50を過ぎたらバンドはアイドル」を演りまして、私はそこで初めてこの曲を聴きました。とても良かった。
オーケンが赤いちゃんちゃんこを着て杖ついて、「まだお弁当食べとらん!」みたいなボケ芸をかましながら歌う姿に爆笑しました。(本当にそうなんだって、信じてくれ)
いつもの歌詞ミスですらおじいちゃん芸になってたから、この形態のオーケンは最強なんじゃなかろうか。

……という楽しい記憶を、オーケンのエッセイ読んでたらふと思い出しまして、久しぶりに聴きたくなったのでCDを衝動買いしました。
頼んですぐに届いたね。アマゾンは凄いや。
こちら(↓)が無料で読めるオーケンのエッセイだ!鬱フェスの舞台裏の話とか載ってておすすめ。

というわけで、この記事では『一瞬!』を買わないと聴くことができない「50を過ぎたらバンドはアイドル」、「サンフランシスコ(2023ver.)」、「高円寺心中(2023ver.)」の3曲を聴いた感想をグダグダと書きます。

結論からいうと、筋肉少女帯や大槻ケンヂのファンなら買って損はない!です。
とはいえ、ネット上ではクロスフェード動画(これ↓)でほんの一瞬聴けるだけでストリーミング音源が存在しないし、買う前の視聴が難しいんですよね…
そんなところまで『一瞬!』にしなくてもいいのに……

ともかく、行きます!
よろしくお願いします。


50を過ぎたらバンドはアイドル

本アルバム唯一の新曲です。これが凄い良いんです。

曲調は最近のアイドルというより、80年代の男性アイドルソングに筋少流ハードロックを融合させたイメージ。クラップ音と跳ねるようなエディ(三柴理)のピアノのお陰でとてもキャッチーです。そんな曲に載せて、全員50代後半の筋少メンバーが楽しそうに歌います。非常に斬新なサウンドなのではないでしょうか!
ちなみに私のイメージしている80'sアイドルソングというのは、マッチの「情熱☆熱風 せれなーで」とイモ欽トリオの「ハイスクールララバイ」です。あいにく私は『春子の部屋〜あまちゃん 80's HITS〜』でしかこの時代を知らないのでな(己の無知を威張るな)

それでは「50を~」の好きな部分をひたすら語っていきます。
何より歌詞が良い。曲の入りはめちゃくちゃ楽しそうなんですが、Aメロ?に入った瞬間50代バンドマンとしての人生の自虐&諦念が始まります。生々し過ぎて笑っていいのか泣けばいいのかわからん!
そしてサビ前に泣きの演奏。泣き要素に合わせてオーケンがライブの情景を歌うのエモい。私の感情はジェットコースターになってしまう。
満を持してサビに入ります。サビでアイドルっぽくメンバー全員が合唱するのが良い。ハモらずにあえて全員おんなじラインで歌うのがいいんです。
曲全体を通して「今、この一瞬のきらめきを噛みしめよう」というメッセージがビンビンに伝わってきます。アルバムのタイトル回収ですね。オーケンが長年歌ってきたテーマの一つでもあります。

歌詞を全体で眺めてみるとかなり技巧的です。
この曲のキメ台詞である

50を過ぎたらバンドはアイドル
君とLet's go to heaven 連れてくよ

筋肉少女帯、「50を過ぎたらバンドはアイドル」

の意味が、曲の冒頭と中盤、終盤、ラストの4段階でガラッと変わります。
最初はアイドルがファンの皆さんに向けて「今日は最高のステージにしてやるぜっ☆」って言ってるのかなという感じです。しかしいざ曲が始まってみれば、実はheavenというのは文字通りの「天国」、死後の世界を意味していた。「死が近い年齢である我々が、皆さんにheaven(=老い?)というものを実感させてあげるぜ!」でした。えぇ…。
曲の後半ではそれまで不特定多数のファンを指していた「君」がある特定の一人へと限定され、ラブソング的な展開に。色々妄想の余地があって私は好きです。例えばおじさんバンドマンと若いバンギャの恋。バンギャにとっては永遠の恋に感じるかもしれないが、色々経験してきたバンドマンは「この恋も絶対長続きしないだろう」と薄々分かっている。歳の差もあるしね。だからこそ、おじさんはこれまでの経験をフルに生かして、今の一瞬だけは彼女を全力で楽しませてあげたい。という感じでしょうか(妄想乙)
ラストは「バンドは」という主語を「誰もが」に拡張させます。クソデカ主語です。バンドに限らず、50歳を過ぎちゃえばみんなアイドルみたいなもんだよ、と。ファンの皆だってもういい歳だろ、だからみんなでリアル天国に行こうぜ!です。ラストで曲の対象を聞き手に拡張させて自分ごとにさせる手法はオーケンよくやりがちですが、この曲でも上手くハマっています。

いやぁ、こんな凄い曲がストリーミングで聴けないのホント勿体ない。
公式でMVかライブ映像上げて欲しい。そして順当にバズってTikTokとかで何も知らないギャル達を踊らせて欲しい。あわよくば海外でもバズって、筋肉少女帯をいま一度メインストリームにするんだ!!!!
50を過ぎても筋少は最強!!!私の希望!!!!!!!
ぜひ皆さんもCDを買おう!!!!!!!!!!!!!!!!!

サンフランシスコ (2023ver.)

この曲は満を持して登場!という感じですね。ファンならサンフランシスコのためだけにこのアルバム買ってもいい位です。
何故かというと、現在の筋少における二大テクニシャンのGt.橘高文彦とPf.三柴理が揃ってこの曲を演奏するのが、スタジオ盤では初めてだからです!あと太田さんやみのすけさんではなく長谷川浩二さんのドラムなのも初!ニュアンスの違いが味わえます。
ライブでは割と演奏される定番曲であり、CD音源大好きな私としては待ち焦がれてました。2013年の再録ベストアルバムになぜこれが入らなかったんだ!って。

結論として、期待を更に超える素晴らしい仕上がりでした。
ライブで何度もプレイしているからか、円熟度がいつにも増してすごい。もうライブ定番曲は全曲スタジオで再録して欲しいな(無茶)
イントロから凄まじい。咆哮する橘高ギターがオーバーダビングされてえらいことになってます。これはスタジオ盤ならではです。それに続いて長谷川さんのタイトなドラムとサンフランシスコお馴染みのシンセ(?)サウンドが加わって、重厚な演奏が繰り広げられます。いやあカッコいい。。。
曲が始まればオーケンの歌声も演奏陣も滅茶苦茶ノッてます。この曲がCDの高音質で聴けてわたくしもう大満足です。曲展開の起点になる長谷川さんのメタリックなドラムが良い。カッチリとしたロックなリフで曲の雰囲気を決めてるおいちゃんのギターも良い。うっちーの渋いベースソロも良い。橘高ギターvsエディピアノの対決も良い。そしてオーケンの声も若い頃の勢いと最近の表現力が両方活かされている感じがして良い。つまり、ありえん良さみが深い
オッ、と思ったのはコーラス。原曲では女性ソプラノだったのがライブに準拠してかエディの声になってます。エディのダンディーなコーラスが個人的に好きすぎるので有難い。
アウトロの余韻ある終わり方がちょっと寂しい。なのでもう一回聴いちゃう、をひたすら繰り返す永久機関にあなたも成れます(?)

おまけ:ネットで聴ける色々なサンフランシスコ

今回紹介した2023年版サンフランシスコは、今のところ残念ながらCDを買わないと聴けません。
代わりに色々なサンフランシスコを聴こうよ!ということで公式の音源を3つ集めてみました

まず、2023年版と一番雰囲気が近いのが2019年演奏のライブ版です(↑)。
もうね、サムネからして素晴らしい。ステージ中央の謎の高級そうなソファで足組んで座る大魔王オーケンが拝めます。このオーケン格好良過ぎない?良い意味でサムネ詐欺です。
パフォーマンスも非常に素晴らしい。本当にライブの一発撮りなのか疑っちゃうぐらい演奏も歌唱も安定感が半端ない。そしてこのバカテクオンパレードの中でメンバー全員がニッコニコの笑顔なのが良い。本当に音楽を、ライブを、この一瞬を全力で楽しんでいるんだなというのが伝わってきます。最近はこの映像のみんなの笑顔を見るだけで泣いちゃう(パブロフの犬)

お次は1988年リリース、筋肉少女帯メジャー1stアルバム『仏陀L』のサンフランシスコ。
メンバーはオーケン、うっちー、エディにドラムのみのすけさん、ギターの関口さんという編成です。オーケンの声が若いね!感情が滅茶苦茶こもった歌唱が良い。しかし曲としてはもう完成している。
メジャー盤ではこの音源が最古ですが、サンフランシスコにはインディーズ時代のバージョンも存在します。(残念ながら公式では上がってなさそうです。)
ちなみに以下のブログ(↓)で「インディーズ時代の歌詞を見ると、なぜ"サンフランシスコ"という曲名なのかが分かる」という考察がなされており、なるほどな~と思いました(小並感)

逆に公式サブスクで聴けない曲と言えば、ベストアルバム『SAN FRANCISCO』バージョンの「サンフランシスコ」と、大幅リメイク版の「サンフランシスコ10イヤーズ・アフター」も良い曲です。
メンバーはエディが抜けて、オーケン、うっちーとギターの橘高文彦&おいちゃん、ドラムの太田明さんという編成です。
特に10イヤーズアフターは凄まじいので何とかして聴いて欲しい。筋肉少女帯は活動凍結していた時期があるのですがその凍結直前に作られた曲で、バンドとしてギリギリな感じが音源に籠ってます。1998年の丁度私が1歳くらいの頃にリリースされましたが、私はもう涙が止まりませんでしたね(それはただの夜泣き)

「ちょっと、あんたネットで聴ける音源を紹介するんじゃなかったの?????」
……あっ、ごめんなさい。

最後の音源は竜理長バージョンのサンフランシスコです。ちょっとオシャレ過ぎませんかこれ?
演奏者はサンフランシスコの作曲者たるピアノの三柴理さんに、筋少でもおなじみドラムの長谷川浩二さんと、オーケン&エディが別でやっているバンド「特撮」のベーシスト高橋竜さんが加わった3人です。三人から一字ずつ取って「竜理長」です(言わんでもわかるわ)
メジャーデビュー後の筋少版はひたすらハードロックでしたが、このジャジーな感じも良いですね。ピアノとベースとドラムという必要最小限の構成で、非常に繊細な表現をされています。

ちなみにこれも公式音源が見つからなかったのですが(またかよ)、2002年リリースの三柴さんのソロアルバム『Pianism』収録バージョンではサンフランシスコがインスト曲になってます。いろいろ広がるサンフランシスコの世界。
ギターがジェットフィンガー横関さんなのでハードなサウンドで、なんかRPGのボス戦の曲みたいな仕上がりです。こういうのすき。
自分でもサンフランシスコを歌いたくなった方は、ぜひ手に入れて下さい!

高円寺心中 (2023ver.)

最後は「高円寺心中」。
元々は私が個人的に滅茶苦茶好きな『UFOと恋人』というアルバムに収録されていた曲です。
1993年リリースなので、ちょうどバンドブームが終わったころでしょうか。バンドブーム真っ盛りの頃のバンドマンとモデルやってる綺麗なバンギャとの、バブルのように儚く美しい恋模様を回顧して歌っています。

この曲は色々と意外でした。
今まで一度もセルフカバーされていなかったことにまずびっくり。なぜ今までやらなかったんだろう。
そして筋肉少女帯でカバーしたこともびっくり。この曲調ならオーケンのソロプロジェクトの「オケミス」とかでやりそうなイメージがありました。
しかし、聴いてみると今の筋少メンバーだからこそ出せる独特な説得力があります。原曲にエディの綺麗すぎるピアノが加わって、より一層幻想的な曲になってます。あと橘高さん&おいちゃんの泣きのギターがこの曲にビタッとマッチしてます。何よりオーケンの声が良い。30年経ったからこそ出せる質感です。
何より筋少メンバーはみんなあの頃のバンドブームを実体験してる世代ですからね。各々の当時の思い出が演奏にあふれ出ているのかもしれない。

歌詞はとにかくエモすぎます。
夢に向かって2人で一瞬一瞬を嚙みしめて生きた情景がクリアに浮かんできて、結局夢破れてしまったという結果を含めて切ない仕上がりです。
バンドブームを体験できなかった、平成後期のゆとりたっぷり無菌室で育った実験マウスの私からすると、”あの頃”の何もかもがもうドブネズミのようにべらぼうに美しく見えてしまいます。
私も心の通じ合った美少女と古本を探しに行きたい。

最後にオーケンイズムの話で、タイトルに「心中」ってあるのに2人は結局死にきれなくて、別れて今も生きているっていうのが個人的に味わい深いです。
オーケンもこの曲を書いてた頃は今にも死んでしまいそうなほど儚い人間性だったとうわさに聞きます。しかし実際は50代まで生き残り、現在進行形でこんなに良い曲をリリースし続けて下さっています。
「大槻ケンヂは異常者に憧れて、でも一線を超えられなかった人間だ」みたいな評論をどこかのブログで昔読みましたが、別に異常者に成れなかったことは負けではないのです。なにも太宰や三島のように綺麗に死ぬ必要も、ムツオさんのように大量殺人をする必要も無い。大槻ケンヂという偉大なアーティストの存在が、そのことを実証してくれています。
だから私のようにイケてない同志の皆、つらくてもヤケになるな!!!!!!!!!
銀輪銀輪マッハマッハだ!!!!!!!!!!!!!!!!!

ちなみに「異常者への憧れと挫折」系で私が一番好きなのは「UNDERGROUND SEARCHLIE」という曲です!!!!!(そんなこと誰も訊いてないよ…)
現実の事件で言えば、ホアキン版『ジョーカー』に感銘を受けたのになぜかヒースレジャー版の『ジョーカー』のコスプレで犯行に及んだ彼のような物語です。私と同い年なんですよね彼。きっと私みたいな冴えない人生を送ってきたであろうことには同情するが、それはそれとして犯した罪をきちんと償ってほしい。全て清算したら、一緒に筋肉少女帯を聴いて生きよう。

おまけ:原曲とその原曲

「高円寺心中」の原曲はこちらです。オーケンの声が若い!(2度目)
曲で歌われている恋の日々を今まさに送ってそうな人々がこの曲を演奏しているのも、なんだか不思議な感じですね。
生きろ、そなたたちはチョベリグに美しい。

原曲の原曲、ザ・ブルーハーツの「リンダ リンダ」も聴きましょう。
「高円寺心中」の歌詞で言及されている「リンダリンダ」、「ドブネズミ」の元ネタです(多分みんな知ってる)
1985~90年ぐらいの日本では音楽バンドが大量にデビューするブームがあったのですが、この曲はそのバンドブームの象徴みたいな曲です。オーケンがそう言ってたので間違いない。
同じバンドブームの時代を共に駆け抜けた筋肉少女帯と違って、こちらのバンドはドストレートな青春ソングです。王道を極めるとここまでカッコよくなるのか、って圧倒されます。

結論

ファンならめっちゃ買いだと思う。
「50を過ぎたらバンドはアイドル」では最新の筋肉少女帯を感じることができます。ふざけているようなタイトルだけど、内容はかなり深い。
「サンフランシスコ」は説明不要の激アツです。ライブ勢でもそうでなくても、今こそド定番のこの曲を聴こう。
「高円寺心中」はこの2023年バージョンが完成形といっても過言ではないです。30年前のあの時だからこそ作れた曲を、今しかできない円熟したテクニックで演り切っています。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

たった3曲しか紹介してないのに、執筆に休日まる1日使ってしまいました。相変わらず書くのが遅い。
紹介したいCDも、音楽以外に他に書きたいテーマも、ブログ以外にやりたいこともとにかく全部膨大にあるので、もっと頑張っていきたいなと思います。

何はともあれ筋肉少女帯のベストアルバム『一瞬!』はいいぞ
CD音源を概ね持っている私のようなコアなファンにとっては新録曲がファンサ満載です。
これから筋肉少女帯に入門するという方にとっても、色々な時代の名曲が沢山入っているのでお勧めできます。
私も無理して発売日に買っておけばよかった。

それではお読みいただきありがとうございました。

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