交点

おや、松村くんじゃないか。久方ぶりだな。

平井さんですか。
お久しぶりです。お元気でしたか。

さてそれは僕も知らないことだ。
例え知っていても、僕にはそれがわかることはないがな。

相変わらずお元気ですね。
今日もお散歩ですか。

ふむ、散歩だ。日本人は世界の退屈をよく表しているよ。
今日も駅のホームで黙っている学生たちをみたよ。
実にいけない。学生はもっとうるさくなくっちゃいけない。
世の全てを知った風で嘆いてこそ学生たるものだ。
君もそうだったろう。松村くん。

はは、そうですね。
でももうすっかり忘れてしまいました。

そうだ。いつかは全て忘れるものだ。
ところで君の姿から察するに、警察官になったようだね。

はい。もう4年になります。
もうすっかり職が板について、いまでは悪巧みをするものの匂いがわかるんです。不思議でしょう。

それは不思議だ。
話をきかず、見ただけで人の考えがわかるのであれば世界はもっと退屈になる。

そうかもしれません。
でも私は警察官という職業に誇りをもっています。

立派だ。
それとひとつ聞いておきたいことがある。
世の警察官は2つに分類することができる。
法律に従順な阿呆の犬か、己の正義のみを信じて闘う馬鹿か。
それともそのどちらでもないただのコスプレイヤーか。

それでは三種類ではありませんか。

いやコスプレイヤーはそもそも警察などではない。
奴らは警察が何たるかを知らぬまま、学校を卒業して制服をきただけのこどもだ。

私は、、、
私は、世界が平和になればいいと思っています。
争いのない、皆が笑って安心して暮らせるような世界を。
そのために日々、職を全うしています。

ふむ。戦争反対、世界平和、なんと美しい理想郷だろう。
なんと儚い妄想であろうか。
君は警察という職につきながら、頭の中はこどもの頃から変わっておらんな。
それでは身を滅ぼすぞ、愛しい子よ。

どうゆうことですか。
私は至極まともに、素直に生きております。

それだよ。
君は絶望を知らん。裏切りを知らん。孤独を知らん。
それらは全て大人になるための儀式である。

私には貴方の言っていることがわかりません。
私は私なりに生きているので大丈夫です。

そうか。ならばいまの君にはもう言うことはない。

はい、それでは。お元気で。

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