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たおやかに散ったあの子のもとへ EP4

11月14日 佐世保から福岡へ

 気分で黒島へ行くのを辞め、波戸岬へ向かう。道中で買ったパンを食べ、華金カップルの動画をみる。エンディングのあと『かわいそうだね?』を読み、やはり憐れみからくる同情なんて醜いと思い、眼下に広がる海原をみる。これがしたかった。これがしたかったのだ。
 しばらく眺めているとうとうとしてきて少し目を瞑った。するとどこからか子供の元気な声が聞こえてくる。あたりを見渡すと、小道を男女6人の中学生らしき人が歩いている。皆同じ柄の体操服を身に着け、男の子は声を挙げ、突っ走った。その後ろを少し遅れて気だるそうに、でも心の内は楽しそうに追いかける女の子がいた。少し懐かしくなった。

波戸岬にて



 夜の街は特別だ。昼間どこに隠れていたのか強面の人たちが我がもの顔で歩き、女性は心なしか肌の面積が増えた気がする。酔っ払いに絡まれるかもしれない、客引きに引き留められるかもしれない。一人で歩く僕はとても心細い。昼は活気に溢れる街が、夜は欲望に溢れかえる。道行く人は厚い幸せオーラを着ている。僕も手持ちの少しばかりの幸せを縫って着る。しかし、他人のそれはよくみえるのが人間の性。恋人や友達と歩く人々のそれはダウンより厚い。一方自分はカーディガンほど。風はオーラを通り抜ける。それでも僕は歩いていく。街に温もりを吸われた躰で、あっついお湯のある銭湯へ。


夜の街

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