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版画家 丹阿弥丹波子の世界

本の装幀に感動したことがあるでしょうか。
私は、まったく知識なしに「美しい」と思ったのは丹阿弥丹波子(たんあみ    にわこ)の遠藤周作著「冬の優しさ」の装幀でした。
銅版画の一種であるメゾチント(注)という技法で草花や日用品などの身近なモチーフを題材とした作品を発表している方なので、装幀が専門ではないのです。
それだけにとても贅沢な本です。繊細な絵なので、写真では伝わり切れないかもしれません。ぜひ、手に取って鑑賞していただきたい本です。出版されてから時を経た今、経年変化も味わいになっています。
残念ながら、この装幀の本の発行は昭和57年と古いうえ、冊数も少なかったようで、ネットで検索しても簡単には出てきませんでした。(その後の版の別の装幀本ばかりがヒットします)

【丹阿弥丹波子(たんあみ    にわこ)】    略(過ぎる)歴
1927年生まれ。1960年代よりメゾチントの技法で50年以上作品を生み出しています。その中で、(数少ないながら)遠藤周作などの装幀も手掛けています。
姉は俳優の丹阿弥谷津子(黒澤明監督「生きる」に出演)

韮崎大村美術館の作家別収蔵品一覧を見つけました。

そして、(すでに終了していますが)2015年の展覧会の情報を見つけました。

表紙カバーをめくると、このような景色です。

遠藤周作「冬の優しさ」

モノクロの花をデザインしているので、とても地味なのですが、表紙裏の鮮やかな深紅にぐっと心を掴まれます。本自体の絵は、表紙の絵に薄紙をかぶせたようなトーンになっています。最小限の色数で最大の効果を出していると思いました。
単なる写実だけでなく非常に繊細で美しい構成が絵の魅力となって、古さを感じさせないと思います。

「丹阿弥丹波子」の名を忘れないように撮影しました
ここで、「装幀」とあるため、記事内で統一しました

この本に出会った場所は、駒場にあるブックカフェ「BUNDAN(ブンダン)」でした。

カフェの本棚からコーヒーのお供の本を背表紙(タイトル)と装幀で選びました。
本を開いた時の深紅の裏表紙とのコントラストに感動して、思わず写真を撮っていたのでした。カフェの本なので、手元にはありません。

そして、装幀者の名前に1ページを使っていたので、”これは相当な方に違いない”と直感し、帰宅してから調べていました。
このような場でご紹介できるなんて、嬉しいです。

(注)メゾチントとは何かを調べました


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