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Sawamura ロースタリー

 早朝、白い息を吐きながら、木立の間を歩いて歩いて、ひたすら歩いて、空を映す池を見に行った。街道を小道に折れると、冬枯れた樹々の奥にひっそりとたたずむ水鏡が現れた。青い冬空と針葉樹の濃い緑の木立が、そのまま逆さまになって映っている。綺麗だ。きりっと冷えた空気の中、霜柱が立つ枯れ葉をかしゃかしゃと、さくさくと踏みしめながら進む。先に広がる水面には、まさにデコイのように、鴨たちが浮かんでいるのが見えてきた。二十羽ほどだろうか。群れるというよりは、互いに微妙に距離を取って、一羽一羽独立している。鮮やかな緑の首周りの羽が朝日に輝く。水中に顔を潜らせ餌を探しているもの、考え事をしているもの、おそらく水中では絶えず水を掻いているのだろうが。それぞれ無心な様子が可愛らしかった。

 冬は良い。

 ふと見ると他の観光客らが、お互いや自分自身の写真を撮るのに夢中になっている。さて、引き上げようか。つるつるすべる薄氷が張ったアスファルトの路を、慎重に、かつ、テンポ良く、来た時と同じようにまた歩いて帰る。30分ほど歩き、ずいぶん歩いたものだから連れに「大丈夫?」と心配された。確かに息が上がっていたが、、、これくらい大丈夫である。息が白いので楽しいのだ。

 辻のところに辿り着き、地元ベーカリーのロースタリーでひと休み、朝食を取ることにした。連れのお気に入りのベーカリーである。ホットドッグ2つ、カフェラッテとチャイミルクティを注文した。ストーブの側の席についてほっとする。暖かい。そしてカフェラッテの香り高いこと。ホットドッグをゆっくりいただき、私たちは静かな店内で読書を続けた。

 私の旅は、急ぐ旅ではないのだから。

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