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一店逸品運動のススメその3

 私が、一店逸品運動をすすめようと思った理由は、いくつかありますが、きっかけは「元気なお店づくり」の大切さを痛感した、30年ほど前のある出来事です。当時、ある雑誌社からの依頼で、元気なお店の取材をしました。お付き合いのあった都内の某区役所の方に、取材先の候補をおうかがいしたところ、「年商2億円を上げるパン屋さんがある」との情報を得ました。さっそくアポイントをとって、取材にうかがったところ、店内にはすでに商品がなくお客様もいない、閑散とした状況でした。ちなみに取材を指定された時刻は、午後4時でした。店主曰く「昼前には行列ができ、ほぼ毎日3時には完売する」とのことでした。
 パン店が立地する商店街は、空き店舗も多く、いわゆるさびれた商店街でした。聞けば、かつては近くに石鹸工場があり、働く従業員が多く住んでいたので、商店街も賑わっていたそうです。それが、環境問題などで工場が移転してしまい、周辺の人口も減少してしまったため、商店街もさびれていったそうです。
 そんな厳しい状況の中でも、頑張っているパン屋さんです。店づくりもユニークで、売場から厨房(パン工房)をガラス越しに見通すことのできる、開放的なお店でした。店主は、「パンがおいしいのは当たり前、うちは販促のできるパン屋なんだ」と誇らしげに話してくれました。定期的に周辺の住宅にちらしをポスティングしたり、年数回は店内でイベントも開催していました。
 この取材を通じて、「環境が悪くても頑張れば繁盛店になれる」ということを実感しました。視点を変えてみれば、さびれた商店街にあっても繁盛している、おせんべい屋さんや和菓子屋さんなど、そんな事例はたくさんあります。さらには、ショッピングセンターや商店街に来たお客様が「ついでに立ち寄る」お店はなく、「わざわざ行きたくなる」お店になることが、これからは求められるのではないかと考えました。
 そんなわけで「逸品で個店を元気にする」ことが、一店逸品運動の原点なのです。

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