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【創作童話】あまつぶのぼうけん

「さん、にい、いち、それーっ。」
あまつぶの あめすけは、さけぶと くもの うえから とびおりました。

ほかの あまつぶたちも いっせいに おちていきました。

みんな、あめとなって ふっていきます。

あめすけは、ぐんぐんと スピードを あげていきます。

したに ひろがるのは、おおきな うみ。

あめすけは、くもの うえに いたとき、
ずっと うみを ながめて いました。

うみは、じぶんが うまれた ばしょのような きがして、なつかしくて たまらなく かえりたく なるのです。

そして、その いちぶに なって、せかいじゅうを
たびすることが できたら……。

そうおもうと、むねが かーっと、あつくなってくるのでした。


うみは、すぐそこまで せまっています。

「いくぞーっ!」

が、そのとき、よこかぜが ビューッ!
「うわーっ。」

りくのほうへ とばされて しまいました。

それでも、なんとか ちゃくち。

「まいったな……。」

あめすけが こまっていると、

「なんだい、きみ? つめたいなあ……。」

という、こえが ひびきました。

めの まえに くろくて、おおきな まるいものが 
ふたつ ならんでいます。

それは、めでした。

あめすけは、いぬの はなの うえに、のって いたのです。
いぬは ふとっちょで、ちゃいろい けを しています。

いぬは、あめが やんだので、にわに でていた ようです。

「おいらは あまつぶの あめすけだ。」

「ぼくは いぬの ゴンだよ。」

「おい、ゴン。たのみが あるんだ。
おいらを うみまで つれてって くれないか?」

「えー、いやだよ。とおいし、つかれるし」

「そんなこと いわずにさあ。」

「やだよお……。」

「よし。じゃあ、つれてって くれたら、
おおきな ほねつき にくが あるばしょを おしてやるよ」

「ええっ……?」
ゴンの めが、かがやき ました。

「それなら、いいよ。やるやる。」

「ふん、くいいじ はってる やつだなあ。」

ほねつきにくが あるなんて、うそでした。
でも、こうするしか、なかったのです。

「よし、ゴン! しゅっぱつだ!」

ゴンは、はなの うえに あめすけを のせたまま、
あいている もんから でました。

ゆったりと みちを あるいて いきます。

「おい、もっとはやく あるけないのか?」

「え? これでも、いそいでるんだよ。」

「まったく、のろまだなあ。」

おうだんほどうで、とまると、おんなのこが こえを かけて きました。

「わんちゃん、はなが ぬれてるよ?」

おんなのこは、トレーナーの そでで、ゴンの はなを ぬぐいました。

「う、うわ……!」

あめすけが きじに すいとられて しまいました。
からだが どんどん しみこんでいきます。

「う、うううう……。」

おもうように うごけません。

それでも、ちからを こめました。

「おりゃああああ!」

なんとか、ぬけだすことが できました。

でも、からだが ちいさく なっていました。
はんぶん ちかく、すいとられたままに なってしまったのです。

ゴンが あゆみよって きました。

「だいじょうぶ?」

「まあ、もんだい ないって。いくぞ!」

あめすけは、じめんから ゴンの はなの うえに とびのりました。
ふたりは また うみを めざしました。

が、はしに さしかかった ときです。

ゴンが、とつぜん、たちどまりました。

「ゴン、どうした?」

「たくさん あるいたから……。あせで、からだが か、かゆくて……。」

ブルブルッと、ふるえました。

あめすけが、とばされて しまいました。

「うわっ!」

そのまま、かわに ピチョン。

でも、かわは うみに つながっています。
このまま ながされて たどりつけるはず。

ところが、とつぜん、あめすけは おおきな あなに すいこまれました。

そして、タンクの なかに はいり、
ろかそうちで からだが とてもきれいに。

あめすけは、じょうすいじょうに はいって しまったのです。

さらに、まっくらな くだの なかを ジェットコースターのように 
すすみます。

「わあーっ。」

しばらくすると、すいどうの じゃぐちから ジャーッ!と、
とびでました。

「まいったな……。」

あめすけは、ひとまず、キッチンから とびでて、
まどのそとへ でました。

そして、ぴょん、ぴょん、と とびはねて、ひろいとおりに でました。

くるまや バイクが とおっています。

あめすけは、うしの マークが ついているトラックを みつけ、
おもいきりジャンプ。

にだいに、ピタッと くっつきました。

しばらくすすむと、にくやの まえに とまりました。
にくを はいそうする トラックだったのです。

そしてなんと、みせのまえに ゴンが いました。
ショーケースに ならぶ にくを ながめて、よだれを たらしています。

「おい、ゴン!」

あめすけは、ゴンの はなの うえに とびのりました。

「あっ! あめすけくん!」

「ここに いるかもって、おもったんだ。」

「へへ、いいにおいがして……。
それより、うみまで ながれて いけなかったんだね。」

「いろいろあってさ。とにかく、いくぞ!」

ふたりは、また うみへ むかいました。

しかし、あめすけの ようすが へんです。
からだが ますます ちいさくなっています。

じょうはつして いるのです。

「まずい……。ゴン、もっとはやく!」

ゴンは のっし、のっしと はしります。

うみが みえて きました。

でも、あめすけの からだは もうきえてしまいそうです。

「うぅ、ここまでか……。」

すると とつぜん、あめすけは、
ゴンの はなの あなへ もぐりこんで いきました。

「ふが、ふが、あめすけくん、なにを?」


「ゴン! ついたら、うみにむかって うしろあしを あげろ!」

「え、ええっ?」

「いいから、やるんだ!」

ゴンは、ていぼうに たどりつくと、いわれたとおり、
うしろあしを あげました。

すると……シャーッ!

おしっこと いっしょに あめすけが とびでてきました。
そのままうみへ ピチャ!

「やったぞ!」

あめすけは、さけびました。

「よかったね、あめすけくん!」

「あ、そうだ。おいら、あやまらないと。ほねつきにくは……。」

「いいよ、いいよ。かえってきたら、いろんなくにの 
おいしい おにくが あるばしょを おしえてよ」

「わかった、やくそくだ! じゃあな!」

あめすけは、おおうなばらへと たびだって いきました。
                             (おわり)

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