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呼吸器内科の魅力について

 こんにちは、呼吸器内科専攻医の楽俊です。
 今回は呼吸器内科の魅力をまとめていきたいと思います。この記事を読んで、少しでも呼吸器内科に興味を持っていただければ嬉しいです。そしてできればいまだに専門医が少なく、絶滅危惧種と言われることもある呼吸器内科をローテート・専攻してもらえることを期待しています。
 あくまで私個人が考える魅力であることを理解いただき、他の科でも言えることじゃないかという内容も多々あるとは思いますが、生暖かい目で一読いただければ幸いです。

呼吸器内科の魅力とは

①疾患の多様性

 肺というひとつ(ふたつ?)の臓器を中心に診ることにはなりますが、その疾患の多様性が魅力のひとつです。
簡単にどのような疾患があるか挙げると、
・感染症(細菌性肺炎、非定型肺炎、結核などの抗酸菌症、真菌症、COVID-19)
・腫瘍(肺癌、悪性胸膜中皮腫、胸腺腫など)
・閉塞性肺疾患(気管支喘息、COPD)
・びまん性肺疾患(間質性肺炎、過敏性肺炎、じん肺など)
・睡眠時無呼吸症候群
・肺循環疾患(肺塞栓症、肺高血圧症)
・呼吸不全
ぱっと挙げるだけでもこれだけあります。
 疾患が多いということは裏を返せばたくさんの知識が必要ということでもありますが、幅広くいろいろな疾患を診ることができる楽しさがあります。もちろんすべてを極めることは出来ないので、ある程度経験したら特定の分野に絞って専門とする可能性が高いと思います。いろいろ経験してから専門を選ぶことができ、その専門分野の選択肢もたくさんあるという点は、魅力のひとつだと思います。腫瘍に進むも良し、びまんに進むも良し、アレルギーや結核を専門にすることもできます。

②急性期から慢性期、終末期まで

 感染症や間質性肺炎急性増悪のような急性期の疾患から、安定期の気管支喘息や間質性肺炎などの慢性期疾患まで、様々な疾患や病状の患者さんを診ます。急性期の感染症では集中治療室で人工呼吸器管理が必要な患者さんもいますし、外来で定期的に診ることのできる落ち着いた病状の患者さんも多くいます。
 また肺癌のように、気管支鏡検査での診断から化学療法の治療、そして終末期・緩和ケアまで、その患者さんの最初から最期まで自分で診ることができます。特に肺癌は他科と比べると高齢で患者さんの数も多く、基本的に診るのがStage Ⅲ期〜Ⅳ期の方になるので、治療にも関わらず病状が悪化し亡くなる方は多いです。告知や病状の悪化、お看取りなどしんどいことも多々ありますが、治療の選択で悩んだり、患者さんがどのような人生・最期を過ごしていきたいか一緒に考えたりと、それ以上にやりがいを感じることは多いです。

③手技は多すぎず少なすぎず

 手技は気管支鏡検査と胸水穿刺・胸腔ドレナージがメインとなります。病院によっては右心カテーテルや気管支動脈塞栓術、胸腔鏡検査、CTガイド下生検などやっている所もあります(稀ですが)。特に気管支鏡検査は通常の気管支生検に加えてリンパ節をエコー下に生検するEBUS-TBNA、最近ではクライオバイオプシーという凍結して検体を採取する手技など様々な手技・デバイスがあります。侵襲を伴う検査であり検体採取しなければならないプレッシャーは毎回ありますが、やればやるだけ上手になり、上達も実感できます。難しい症例で、エコーできれいに腫瘍を描出(within)出来た時には、今でも心の中でガッツポーズしています。
 手技が少ないと思う人も多いと思う人もいるかと思います。ただ私個人としては毎週5-6件の気管支鏡検査と、時々ある胸水穿刺・ドレナージくらいの頻度がちょうどいいと思っています。2-3次救急をやっている病院では大量胸水や気胸に対する胸腔ドレナージ、稀に気道異物に対する緊急気管支鏡検査はありますが、夜間に緊急で呼ばれることは比較的少ないです(もちろん病院によります)。この、検査・手技が多くないという点で、通常の業務も内科の中ではそれほど忙し過ぎない部類かなとは思っています。

④他科との関わりが多い

 先ほど自分たちで最初から最期まで診るとか言ってましたが、嘘でした。ごめんなさい。他の科の先生に助けてもらいながらなんとかやっています。
 難治性の膿胸や気胸、肺癌の手術で呼吸器外科に、早期肺癌の定位照射やⅢ期のケモラジ、緩和的照射で放射線治療科に、BAEやMDDで放射線診断科に、気管支鏡検査の診断で病理部に、膠原病関連肺疾患で膠原病内科に、人工呼吸器管理で救急科や麻酔科に、呼吸器リハビリでリハビリテーション科に、終末期・緩和ケアで緩和ケア科に、脳転移で脳神経外科に、肺塞栓や肺高血圧症で循環器内科に、irAEで内分泌内科や消化器内科、脳神経内科、皮膚科に、気管切開やSAS、副鼻腔炎で耳鼻咽喉科、化学療法の口腔ケアで歯科口腔外科に、EBの視神経炎で眼科に、本当にいろんな科にお世話になっています。この場を借りてお礼申し上げます。いつも本当にありがとうございます。
 キャンサーボードでは、呼吸器外科と放射線治療科とトコトン話し合い治療方針を決めます。最近は術前・術後の免疫チェックポイント阻害薬や術後分子標的薬の有効性が示され、術前ケモして手術なのか、術後ケモなのか、ケモラジなのか、より一層密な連携が必要になってきています。
 以上のように他科との関わり・連携が多い点も魅力のひとつと考えています。個人的な感想ですが、だいたいどこの病院も呼吸器内科と呼吸器外科は仲が良いと思います。

⑤専門医が少なくニーズがある

 呼吸器専門医の数は2023年4月時点で7,359名で、消化器病専門医23,330名や循環器専門医16,358名と比べると、まだまだ少ないです。地方では呼吸器内科医がいない病院も多く、ニーズは高いと思います。不本意ながら高齢化に伴い部位別死亡者数は肺癌が1位ですし、内科外来での主訴1位は「咳」という報告もあります。専門医までとればさすがに食いっぱぐれることはないと信じています。また呼吸器疾患という疾患の特性からも、急性期病院だけではなく慢性期病院でも必要とされることは多く、またクリニックや開業という点でも有利な気はします。

⑥治療法の進歩

 気管支喘息に対する生物学的製剤、肺癌に対する分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬、間質性肺疾患に対する抗線維化薬により、呼吸器疾患の治療は劇的に変化しています。肺癌では細胞障害性抗がん剤しかなかった時代とは違い、StageⅣの肺癌であっても長期生存が見込める例も出てきています。また高齢者やPS不良例でこれまで治療できなかった人にも分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が使える例があります。
 分子標的薬が次々と登場していること、周術期治療に分子標的薬や免疫チョックポイントが加わったことで、毎年のようにガイドラインも変わっています。覚えることは無限に増え続け、勉強しても勉強してもゴールに到達できない苦しさはありますが、一生学ぶべきことがあるというのは素晴らしいことだと思います(もちろん呼吸器に限りません)。
 また最近はXなどのSNSや、ケアネット・日経メディカル・HOKUTOなどのサイトで論文や学会情報を知ることができ、最新の情報に触れて勉強はしやすい環境だと思います。

⑦優しい先生が多い

 これも個人的な感想で、完全に医局の雰囲気や医師個人によると思いますが、比較的穏やかで優しい先生が多い印象です。まあ呼吸器の中でも何の専門かで若干キャラクターは偏りがあると思いますが(笑)。
 科の専攻を選ぶうえでどの分野を選ぶか、どの場所で働くかということも大事ですが、誰と働くかというのも大事な要素になってくるかと思います。

私が呼吸器内科を選んだ理由

 私は医学部入学時点で漠然と内科をしたいと思っており、特に腫瘍・がんをやりたいなと考えていました。呼吸器内科、消化器内科、血液内科はかなり最後まで迷いました。最終的には手技であったり医局の雰囲気、感染症や膠原病・緩和ケアにも興味があったので呼吸器内科を選びました。まったく後悔はなく、むしろ自分にぴったりでした。まあ多分どの科に行っても楽しかっただろうなとは思っています。消化器内科の胃カメラで処置・治療ができる点、血液内科の抗がん剤で根治を目指せる点は、いまでも羨ましく尊敬しています。肺癌もいつか薬剤だけで根治を目指せる日が来て欲しいものです。
 腫瘍の勉強は当然楽しいですし、中堅に片足を突っ込んでいますが気管支鏡検査は今でも自分が一番にやりたいと思っています。「やっぱりわけわからん難しい!」と思いながらする間質性肺疾患の勉強も楽しいですし、COVID-19を最前線で対応したこともよい経験でした。大学院に入って今後少し臨床からは距離を置く可能性がありますが、やっぱり呼吸器内科の仕事を続けていきたいなと思っています。

以上少しでも参考になれば嬉しいです。
ぜひ興味がでてきたら呼吸器内科をローテート、専攻してください!!!
みんな、呼内にこない?

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