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~動き出した未来~

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大学を卒業した私が進んだ道、「バーテンダー」。縁もゆかりも無かった世界で体験する様々なこと、奮闘の想い出。そして、これから。
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記事一覧

自分探しの中に見出したもの・後編

感情類別:「後悔」「感謝」「強い意志」 感情影響度:重め シチュエーション:「お別れ」  それからというもの、件の講義は毎週訪れる「ストレス曜日」として負担になっていった。教授と顔を合わせるのも気が進まないというのに、個別で進捗状況を報告しなければならない。都度、顔色を窺いながらビクビクと過ごすのだった。他の生徒達との扱いの差も一々気になってしまう。何の為に自分はここに来て図面を書いているのか。何の為に材料費を払って模型を作っているのか。もはや本来の学習という目的は頭の外に

自分探しの中に見出したもの・中編

感情類別:「不安」「憤り」「理不尽」 感情影響度:経験者には辛い シチュエーション:「パワハラ」「嫌味」  卒研は期日に間に合い、無事受理された。 とはいえ、アレルギーレベルで抵抗のある数学系科目のテストなどがまだまだ残っている。そして、実をいうとここに漕ぎ着けるまでに既に人よりも長く大学に通っていた。コース変更も含めいくつかの理由があったのだが、大体は私自身の精神的な脆弱さが原因だった。卒研受理に至るまでの過程を丁寧に思い出して綴ってゆく。 私が抱えていたのは「過敏性腸

自分探しの中に見出したもの・前編

感情類別:特に無し 感情影響度:良好 シチュエーション:「就活」「卒研」  学科内ではリクルートスーツを着る者が増えてきた。就職活動である。様々な就活情報が飛び交い、履歴書の書き方や面接での作法など集団で講習を受ける機会が多くなった。 就活の方向性を定めるにあたって自己分析を試みる。 ここ数年で身に染みたことだが、私は期限やノルマという物が性に合わないと気付いた。営業成績で評価される業種、進捗状況の報告が必須となるクライアントとのやり取り。元々マイペースだった私をそんな環

暴虐なる社会の権化

感情類別:「怒り」「悲しみ」「悔しさ」 感情影響度:危険 シチュエーション:「学び」「体験」 備考:叱られ描写あり とある秋の夜、私は徹夜で製作課題をこなしていた。 その頃の私は工学系の学部に新設されたデザイン科の学生で、 専攻はアーバンデザイン(都市開発・公共空間デザイン)だった。 元々文系上がりだったこともあり、工学系に進むことに不安がなかったわけではない。当然、座学ではこれまで触れたこともなかった数Ⅲや数Cを扱ってくる。そういった授業で「終わった人から提出して解散」

・Prologue

感情類別:「楽しい」「嬉しい」「幸せ」 感情影響度:良好 シチュエーション:「旅行」「家族団欒」  二十歳を迎えた年の夏休み。毎年訪れる南伊豆のホテルは相変らず品の良い佇まいで訪問者をもてなしていた。チェックインを済ませる間、ウェルカムドリンクを楽しむ家族連れが今後の行程に胸を躍らせ談笑している。 ロビーから見下ろしたラウンジにはソファーが並び、正面には太平洋が見渡せるオーシャンビューが広がる。正装したスタッフが手際よく淹れるコーヒーの音。鼻を掠める香ばしい香り。穏やかで