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自宅でプロレベルの音楽制作ができるようになるには⑥EQ【制作編】

こんにちは。今回は、EQについての記事を書きました。EQもかなり大変ですが、自分なりの言葉で書いてみましたので、ぜひご一読いただければ幸いです。

概要

・Compressorは筋肉、EQは血液

Compressorが筋肉の強度を調整するのに対し、EQは、血液型を合わせる、という意味合いを持つのでは無いでしょうか。

例えば、A型の人に、B型の血を入れてはいけませんよね。同様に、A型のドラムなのに、B型のピアノに仕上げては混ざりが悪い、というイメージで書いています。

とどのつまりまずは、EQで調整するのは、この音のキャラクター(血液型)、ベクトル、音楽的な方向性である、と言えます。

と言いながら、実際のところはこの音の方向性をどのようにジャッジするのか、というのは、極めて難しいことです。試行錯誤の積み重ねが必要になります。

できる気がしていても、いざ他の再生環境で聴くとまだうまく混ざっていないこともザラです。

一方で、資金でモニター環境を買い叩くことが正解ではなく(もちろんぐんと変わり事もありますが)、本質的には、着実にある程度のモニター方法でもEQ処理のスキルをかなり向上させることは可能だと確信していますので、その方法について考察していきたいと思っています。

ちなみに概要編で書いたことのうち、特に音源とモニター環境については抑えておかなければ、EQの重要性を理解するのは難しいかもしれません。

・いつ、どのタイミングで、何を考えるべきなのかということ

MIXがややこしい原因の一つに、その作業をいつやるのか、という問題がありますよね。
たとえば、ギターの1khzあたりをカットしようかどうかを悩んでいたとして、それを確定するのは、ミックスが60%程度終わったと自分で感じる段階なのか、各トラックをソロにして聴いている時なのか、2mixのBus処理をしている時なのか。

悩みを持たずにその作業を完結させるには、いくつかの手段が考えられます。リファレンストラックを用意し、目的によってはラウドネスをも比較監視する、経験値から判断する、プラグインやモニターのクオリティを上げる。(FabfilterのProQ3、買いましょう。)

ただし、方法は複数あれど、いつどのタイミングで周波数処理の判断を確定させるのかは、明確ではなく、大詰め段階になればなるほど、EQ作業のフローを体系化することも難しいと言えます。(解決になっていなくてすみません)

ただし、下処理に関しては、簡素化しておくことが可能です。そして、ミックス処理についてもいくつかの考え方や手段はあります。

下処理ついて

まずは、トラックに対して最低限必要なアプローチについてです。

・EQにおける下処理①:まず必須なのはローカットとハイカットをサボらないこと&バンド帯のソロで聴けるプラグインを用意すること

ローカットとハイカットをサボってはいけません。

ハイパスやローパスで、ソロにした状態で、必要ないと思うところまでは確実にカットしたほうが無難です。

ソロにした状態で、というのが肝で、ソロにした時に聞こえる音は、本当に全体で聞いた時にも必要かどうかの判断が求められます。(ローカットの場合は、いらないなと思うところまで、ハイカットの場合は、シャリシャリして耳障りだなと思うところまで、削ることができます。)

実は音源によっては、かなり深くまで削ることができます。ローカットの場合でも1k以上カットできる時もあれば、ハイカットで4kあたりまでカットできる時もあります。

最終的にはBus時での処理で、Tapeやサチュレーションでロー感を補填する事が可能なためです。

それよりも、ローの個々の必要不十分な処理のために、ラウドネスが下がらないことのほうが、現代(-14lufs基準など)に沿っていないのではないでしょうか。サチュレーション例↓

・EQにおける下処理②:マイク録音時(特にコンデンサーマイク)は、反響ノイズを取らないといけない

ピーク処理ということを聞いたことがありますか??コンデンサーマイクで録音した場合は、ほぼ必須で部屋の反響ノイズを取らなければいけません。

かなりおすすめのYouTube動画がありますので、これに関してはそちらをご覧いただきたいと思います。(Tool#3 Sweep EQから)

反響音をとるだけで、プロクオリティの録れ音に激変する、と声を大にしたいです。
ただし、どこに反響音が潜んでいるのかというのは、慣れとトレーニングが必要で、これは人によって個人差が生じてしまうところだと思います。また音をクリーンにするという目的もあります。

簡単に言えば、声をゼロ距離で録音したような録れ音にしながらも、聴きやすくする、という表現があるかと思いますが、動画を見ていただいた方が早いかもしれません。ピーク処理の際は、周波数帯に偏りのない、聴きやすいヘッドホンの使用が好まれると思います。

難しい場合は、無理せず、ダイナミックマイクや単一指向性のものを使いましょう。

MIX時のEQについて

以上の下処理を行うだけでも、ラウドネスにアプローチできたMIXに仕上がる可能性もあります。ですが、そうでない場合もあるので、その場合には追加でどのようなことを考慮した方が良いのかという点について、箇条書きでリストアップしてみたいと思います。

・宅録であろうが音源であろうが、100hz-2000hz程度の帯域には、想像以上に悪魔が潜んでいる

中域をどの程度カットするのかということを真っ当に判断するのは、ほぼ不可能に近いですが(人にヨリケリ、MIXに正解はないと言われる所以の一つだと思います)、それでも中域をどの程度カットしスッキリさせるかが、腕の見せどころ(EQ作業の中で最も大切)であることは間違いありません。

特に、音源を複数立ち上げ、音色を多く用いる場合(あるいは一つの楽器でもまたは音数がかなりなっている和音系の楽器などの場合)、様々な楽器のこの帯域を丁寧に減衰させないと、後で大変なことになります。(もこもこした仕上がり、音量が小さく聞こえる、等)

常に聴き比べたり、ソロで聴いたりしながら、削ってもおかしくないかどうかを自問したほうがいいというのが僕の意見です。結果的に、想像以上に削ることになる可能性はかなりあります。どの程度削るのかはなかなか言葉で表しにくいですので、まずはこれを知って、試していただければ嬉しく思います。10dB程度カットしてもおかしくない事も普通にあります。

参考までに中域をスッキリさせることで、全体的な印象を太くすることに成功しているなと感じる音源を紹介させていただきます。

DURDN - WARUNORI

なとり - Overdose

上記いずれも、その他に楽器数がそれほど多くなく、アタックが出ているという特徴もありますが、中域がすっきりとしているのが印象的ですね。他のYouTubeの音と比べても、はっきり音が届いてきます。(アーティストや製作陣にそのような意図があるかは全くわかりません)

・重心を合わせる

MIX時に細かいところにフォーカスする時と、全体のまとまりをより俯瞰的にみなければならない時と、2パターンあるのではないでしょうか。

全体のまとまりを見る最も簡単な方法が、小音量で聴き比べる、という方法ですね。

この時になんとなく小音量で聴くのではなく、重心が上すぎないか、下すぎないか、というアイデアを持ってきくと、MIX BusでのEQあるいはMultiBandCompの設定を見直す際に役立ちます。(この場合原因がコンプレッサーにあるケースもあります)

当たり前のように聞こえるかもしれませんが、高域が出ていれば重心は上がり、低域が出ていれば重心は下がります。

中には1khzを広いQで下げることで、スネアが他の音に馴染むということもあります。

・MSEQでの定位感の補填と、音の清掃

MidとSideにアプローチすることができるMSEQをBusトラックで使用するのは、かなり有用ではないでしょうか。

まずは、どこか下げられるところはないか、というのを検証するところから始めましょう。

デフォルトでは音を綺麗にしていき、必要があればブーストするという流れが個人的には合理的に感じています。

MS作業時においてもそれは同様で、意外とMidの2khzを下げれば音がうまくいくかもしれませんし、Sideの400を下げればリファレンスに近づくかもしれません。ただし、Busトラックに使用するEQの設定は、極端にしない方がいいとよく言われています。(ハイカットとローカットは除く)

ちなみに18−19khzまで、非常に急な傾きのCutフィルターで高域がカットされていることは多いです。

・自分の中での良い音の基準を見出せているかどうか、その音を言語化できるかどうか。

Compresser編で簡単に書きましたが、やはりアタックをどのようにして残しながら、全体を仕上げていくのか、がイケイケな音作りのベースにあると感じています。僕自身もまだまだ勉強中です。

より色々な国の音源を聴き感じるのは、-14lufsの世界において、本当に邦楽ロックは音痩せしている曲が多いということです。

著名な音楽雑誌で、Spotifyのラウドネスノーマライゼーションの外し方の説明がされていましたが、それではまるで例えば、FIFAサッカー連盟がVARを導入しているのに、いつまで経ってもJリーグでは導入されない、みたなものではないでしょうか?(もちろんサッカーはそんなことにはなっていません。)

もう随分と、音のクオリティの違いが騒がれてから、時間が経っている気がします。元記事は削除されているのかもしれませんが、確実に真実は存在しています。


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