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地方自治体の伴走支援


はじめに

 研究開発型の新事業が社会実装されるまでに、乗り越えなくてはならないハードルとして、「魔の川」、「死の谷」、「ダーウィンの海」が知られています。中小企業は経営資源が限られており、これらのハードルを、事業者だけで乗り越えることは難しいため、中小企業診断士などの支援が重要になってきます。特に、中小企業の支援方法として、伴走支援が効率的な支援として注目されています。茨城県中小企業診断士協会では、伴走支援研究会を発足し、研鑽に励んでいます。

 近年、地方自治体は、地域課題の解決に向けた実証実験の募集を増やしていて、2014年から2020年のあいだに、74自治体で実証実験が行われたそうです。最も多いテーマは、自動運転で、ドローン、AIと続きます。自治体では、実証実験の効果を高め、「魔の川」を渡るために伴走型の支援を行うようになってきています。

 自治体と連携するメリットとデメリットを挙げてみました。

メリット

  • 担当部署との繋がり。事業者は、福祉関係やインフラ関係など、自治体の担当部署に直接営業することが多いと思います。ただ、地域住民に接する部署であるほど余裕がなく、提案されても対応できないことが多いようです。予算確保も大きな壁です。その点、実証実験として募集されているものは、自治体が予算や人員を確保しコミットすることを約束しており、職員は業務として対応しますので、スムーズに検討が進みます。

  • 自治体の資産の活用。公共施設(道路、橋、上下水道、学校、公民館など)を実証の場として利用できるだけでなく、社会福祉機関や医療機関とのネットワークを提供してもらえることもあるようです。

  • 効果的な広報活動。広報媒体として、ホームページ、SNS、広報誌、区会回覧が挙げられます。特に、高齢者をターゲットとする場合、紙媒体で周知ができる区会回覧は効果が見込めます。プレスリリースも行ってもらえることもあり、メディアの取材に繋がるケースもあります。自治体のホームページは、Google検索で上位に表示される傾向があるようです。

  • 信用力。モニター募集など地域住民に声をかけるときに、話を聞いてもらいやすくなるようです。

デメリット

  • 煩雑な手続き。書類の様式に慣れていないと、記載不備が頻発し、何度も修正を求められることになります。

  • 実証実験の期間。単年度予算であるため、実証実験を年度内に終わらせないといけません。年度初めに募集要項が出たとしても、募集→審査→採択となるため、秋頃以降に実証実験の開始が始まることも多いようで、更に実績報告の手続きのため、実証実験の終了が2月末までなど、実施期間が2か月間もなかったとなることもあるようです。

  • 専門知識の不足。自治体職員は、定期的に異動があるため、所属する部署の内容に精通していないことがあります。

先行自治体の紹介(つくば市)

 つくば市の取組はユニークです。実証実験の募集し年間を通してサポートするものは同じです。次のステップとして、「死の谷」を越えるため、実証実験で成果が出た商品等をモニターに使ってもらうサポートを行っています。
 スーパーシティに区域指定されたことで、従来の実証実験だけでなく、規制や制度改革を求める提案の場として実証実験が進められています。


さいごに

 支援先の中小企業に対して、社会課題解決を目指す取り組みをサポートする際は、自治体が募集する実証実験を、支援策のひとつに加えてみてはどうでしょうか?

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