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秋の好日@早稲田大学~演劇博物館の松岡和子展と大隈庭園~

小春日和の一日を早稲田大学のキャンパスで過ごしました。

青空に映える大隈講堂

主たる目的は、世界でも有数の演劇専門の博物館、早稲田大学坪内博士記念演劇博物館です。
エンパクという愛称で通っている同館は、1928年、坪内逍遙博士が古稀(70歳)を迎えたことと、彼が半生を捧げた「シェークスピヤ全集」全40巻の翻訳が完成したのを記念して建てられたもので、エリザベス朝時代、16世紀イギリスの劇場「フォーチュン座」を模した素敵な洋館です。

早稲田大学坪内博士記念演劇博物館

正面の張り出しが舞台で、建物内の図書閲覧室が楽屋、舞台を囲むようにある両翼は桟敷席、建物前の広場は一般席という見立ての構造。演劇博物館の建物自体が、ひとつの劇場資料というわけです。
舞台正面に掲げられている言葉は
Totus Mundus Agit Histrionem  全世界は劇場なり
というラテン語だそうです。

エンパクでは古代から現代までの日本の演劇、さらには世界の演劇の各種資料を展示する常設展のほか、企画展も随時開催しており、今回訪れたのは、シェイクスピア戯曲全37作品翻訳記念「Words, words, words.―松岡和子とシェイクスピア劇翻訳」と題された特別展が目的です。

特別展チラシ

松岡和子さん(翻訳家・演劇評論家)がシェイクスピア37戯曲を完訳したのは2020年12月。シェイクスピア劇全作品の翻訳は、坪内逍遙、小田島雄志に続く偉業だそうです。
松岡さんがシェイクスピアの言葉と、そして日本語の奥深さと、真摯に向き合い続けた日々の軌跡を、直筆の翻訳ノートや翻訳原稿、書籍、上演台本、舞台写真、チラシなどを通して辿る展示です。ご本人が英語と日本語で読む音声が流れるのに合わせて直筆の文字がスクリーンに映し出されるコーナーには暫し釘付けになりました。
また、従来の翻訳では女性の登場人物の台詞が、男性に対し過剰に丁寧だったり謙譲語だったりしたのを、そうした表現のない原語に即して「普通に」訳した功績もとても大きいということが印象に残りました。
※例えば…うろ覚えですが
 「This is the man」の訳を
 従来の「このお方でございます」に代えて
 「この方です」としていました。

外観やインテリアも含めて演劇博物館をじっくり味わった後は、大隈講堂に隣接する大隈庭園へ。
早稲田大学創立者・大隈重信の邸宅跡地にある、広い芝生と池を擁する和洋折衷式の庭園で、学生や近隣の人々の憩いの場となっています。

大陸風?の鐘楼
十月桜

秋色の風景の中、淡いピンクの十月桜が可憐です。
園路を奥に進むとリーガロイヤルホテル東京に通じています。こちらのホテルの、高い天井ときらめくシャンデリアが優雅なガーデンラウンジでカフェタイムを楽しんで、帰路に着きました。

文学・演劇と自然に親しむ、秋の好日 でした。
(ちなみに、エンパクも大隈庭園も無料です。
 ちょっとした行楽としておススメですよ!)


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