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フィンランド映画『枯れ葉』

個人的に、『過去のない男』で妙に惹き付けられた記憶のあるフィンランドの名匠アキ・カウリスマキ監督が引退宣言を撤回して映画作りの現場に復帰した作品を鑑賞しました。
以下、ネタばれありです。



タイトルは『枯れ葉』
地味な作品ながら案外評判が良いようで、客席の入りも8割位でした。

物語の舞台はフィンランドの首都ヘルシンキ。鬱屈を抱えながら生きる男女がカラオケバーで出会い、互いの名前も知らないまま惹かれ合います。
外見も境遇もあまり冴えない、不器用な二人が、紆余曲折もありつつ徐々に距離を縮めていく過程をとつとつと描く、毛色の変わった、でも間違いなく「恋愛映画」……そんな、いつしか愛おしさが湧いてくる作品です。
小津安二郎監督を敬愛してやまないという、カウリスマキ監督の持味は健在ですね。

風のいたずらとか、ほんの短時間でのすれ違いとか、交通事故とか、これは韓流ドラマか?!と思わなくもない筋立てでありながら、朴訥な台詞回しと非常に細やかな表情の演技と、ウクライナの戦況を流し続けるラジオの音声とで、「まごうことなきカウリスマキ作品」に仕上がっています。

特に気に入ったのは、病院の受付でのヒロインの台詞
「妹です・・・・宗教上の」
ここをはじめとして、病院絡みのやり取りが、皆何ともユーモラスでした。

歌詞に登場人物の心情をだぶらせる音楽の使い方も効果的で、シャンソンの名曲『枯れ葉』が流れる中、温かい余韻を残すラストが素敵です。

万人受けはしないかと思いますが、様々な意味で面白い作品でした。
観て良かったです。

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