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幾星霜ぶりの綱引きで満身創痍の巻。

夕飯を作ろうと台所に立って、身体中に違和感を感じる。左足首が痛くて体重をかけられない。股関節も痛む。物を握ろうとすると指に力が入らない。それに、右肩がズキズキしている。

文字通りの満身創痍。立っているのもやっと、包丁を握るのもやっとで、なんとか晩ご飯を作り終えた。

あー綱引き頑張り過ぎたわ。

後悔してもあとの祭り。日常に追われて慢性的な運動不足だとか、歳だとか、綱引きやるのなんて幾星霜ぶりとか、そんなこと言ってられない。

なりふり構わず、明日からの体調なんて顧みず、そこには、やらなきゃいけない戦いがあった。

時を遡ること13時間前、たぬきちは小学校の運動場に立っていた。

こだぬきずの通う学校では、学年ごとに保護者と遊ぶイベントがある。過去には、ドッチボール、玉入れ、しっぽ取りをやって来た。

ちなみにしっぽ取りの時には、お喋りに興じるご婦人達から華麗に尻尾を奪い、小動物のように追いかけてくる1年生の襲撃をかわし、見事自分のしっぽを守った。

それを見た娘こだぬきは大笑いしていた。「お母さんが走ってるのもびっくりしたけど、しっぽが取られんと生き残ってるのが1番面白い」と。

やるからにはいつだって全力ですよ。身体が動く限りは頑張ります。

そして今日は綱引き。100人ほどの小さな巨人、やる気に満ちた2年生達が、目を爛々とさせて運動場に横たわる巨大な綱を見つめている。

綱の中央部には赤い紐がくくりつけられており、その紐の先には旗が付いていた。旗にはTSUNAHIKIと手書きの文字が書かれていた。

隣に立っていたご婦人がその文字を見て「綱引き用の旗なんですね」と言い、「綱引き専用ですね」とたぬきちも答えた。

1回戦は見学。娘こだぬきが所属していないクラス同士の対決。ちょっと前田敦子似の女教師が、綱の中央に足を乗せている。「よーいはじめ!」掛け声と共にあっちゃん風先生が足を離した。

「2年生たち綱引きはじめてなのかも、、、」オーエスの掛け声もなく引き合っている。綱引きなんて「綱ひきゃいーんでしょ」とたかを括っていたが、「あのオーエスで、呼吸合わせて、力入れるタイミング揃えてるんじゃないの?」とか急に気持ちが焦り出す。

一回戦の決着がつき、我らが娘こだぬきのクラスの出番が来た。クラスの対抗戦に、保護者も加勢する形式。

いよいよかと綱の横に立ち、綱を握った瞬間、「え?綱太っ。握りにくっ」と驚いた。そして前に立つご婦人は、「なんか臭っ?!え?綱臭っ!」と仰っている。たぬきちとは別の感想を持っておられるようだった。確かに綱は臭かった。

「よーいはじめ!」我らの対戦が始まる。そして、始まった途端にズルズルズルと、相手側に引きずり込まれた。全く歯が立たず、地底にでも引きずり込まれるように、何の抵抗もできず、運動場の砂の上を運動靴が滑っていった。

「これスパイクいるやん!持ってないけど」

負けて意気消沈するこだぬきとそのクラスメイト。怒り出す我が子らに、大人たちにも危機感が迫る。

再び対戦の時。こだぬきのクラスのご婦人達もスイッチが入った様子で、「これは体重かけないとですね」や、「腕だけで引くとダメですね。」など作戦を口にしている。

「よーいはじめ!」次こそ我がチームに勝利を!その思いで、必死に綱を引く。ズル、ズル。悪夢再来。このままでは負ける。綱に体重をかける。もはや引っ張るというより、綱にぶら下がっている。そう、綱に対してオレの身体は20度くらいになってんじゃねーかってくらい踏ん張った。

もし、今この顔を誰かに記録されていたらお嫁にいけないくらいの顔をしてるよーな。ちょっと白目くらいにはなっていた気がする。

先ほどの対戦よりもいい勝負にはなり、数十秒拮抗したものの、ずるりずるりとまたしても敵陣に引きずり込まれてしまった。

こだぬきが顔を真っ赤にして怒っている。その時衝撃の事実を耳にした。

「このクラスは今日7人お休みやから、不利やね〜。」

どえええええええ‼︎7人⁈
8歳6ヶ月の平均体重が27.0kgとして×7人で189kg。189kgって例えばで調べましたら、いました。

ブルガリア出身の力士、191cm、189kg、小結の碧山 亘右あおいやまこうすけ力士。

いやいやいや、力士いたら無理よ。小太り程度のおばんが白目剥いて綱にぶら下がってても無理よ。

老体に鞭打って頑張りました。こだぬきは怒っていましたが、楽しかったです。やっぱり身体を動かすって大事ですね。運を動かして「運動」となる通り、ここ最近のモヤモヤが晴れた気がします。身体は満身創痍ですが。

皆さんも目玉ひん剥いて綱引きに取り組んでみられてはいかがでしょうか。次機会があれば、人数合わせのために力士を召喚した方がいい気がします。

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