見出し画像

かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #11

私は夫と約束したとおりにピザやチキンナゲットをクリスマス用に購入し、熱々のまま持ち帰るべく、少し急いで車を走らせていた。

イヤホンで聴いていたのは、私の推しであるA君が所属しているグループのクリスマス配信。

妻として母としてクリスマス行事をこなす中でも、A君の声が聴きたい私は、ピザの匂いが充満している車内で配信を聴きながら運転に集中していた。

そしてあと5分で自宅に到着するというところで、私は近くのコンビニに慌てて駐車した。

なんと、A君のグループが初のファンクラブを立ち上げ、さらに年に1回のツアーの応募がスタートする、という重大発表がイヤホンから流れてきたのだ。

「入会しなきゃ!応募しなきゃ!」私は考える前に行動していた。

コンビニの敷地内で、約3分でファンクラブに入会し、ツアーのVIP席に応募。

そして『ご入会ありがとうございます』『ツアーの応募が完了しました』

この2つのお知らせメールが届いて、やっとまともに呼吸ができるようになった。

「ツアーに参加できれば、A君に会える!」

そう舞い上がって応募手順をふんでいた私は、息をするのも忘れてスマホを操作していたのだ。

「当たったらどうしよう、何を着ていこう、デビュー曲から全部聴き返さないとなぁ…」

応募しただけで当たった気持ちになる、脳内お花畑っぷりの私。

夫には正直に言う?子供たちのごはんの準備は?
…など、妻として母として考えるべきところが沢山あるにもかかわらず、A君のことしか考えていなかった。

「ツアー前日に美容室に行って、髪を赤ベースの色にしないとな…
上司に注意されないくらいの赤ってどのくらいのトーンかな…」

と、スマホで『アラフォー 髪 赤』と検索をかけたとき、ピザの匂いでハッと我に返った。

「やばい、ピザ冷めちゃう」

急いで帰宅した。

一方、夫はサプライズでシャンパンを準備してくれていた。

それがものすごく美味しかったので、夫にお礼を伝えた。

フルーティーで私好みだったのか、A君に会えるかもしれない嬉しさで美味しく感じたのか、よく分からないまま飲み干した。

そこから私は、家族と過ごしたクリスマス会の記憶がほとんど残っていない。

憶えているのは、A君に下記のDMを送信したことだけ。

「A君へ メリークリスマス。ファンクラブへの入会とツアーの応募は完了しました。A君に会えるのをすごくすごく楽しみにしています!
あやはるより」

#12 に続く

※実在する推しA君の正体はこちら

みなさまの「いいね」が励みになります♡(*‘ω‘ *) ライター:あやはる 

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?