あやはる

日頃は真面目な文章を書いているライターです。 このエッセイを書くために「あやはる」とい…

あやはる

日頃は真面目な文章を書いているライターです。 このエッセイを書くために「あやはる」というライターネームを作りました。 無職歴4年を極める夫との生活を、実体験に基づいて綴っています。

最近の記事

  • 固定された記事

かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #11

私は夫と約束したとおりにピザやチキンナゲットをクリスマス用に購入し、熱々のまま持ち帰るべく、少し急いで車を走らせていた。 イヤホンで聴いていたのは、私の推しであるA君が所属しているグループのクリスマス配信。 妻として母としてクリスマス行事をこなす中でも、A君の声が聴きたい私は、ピザの匂いが充満している車内で配信を聴きながら運転に集中していた。 そしてあと5分で自宅に到着するというところで、私は近くのコンビニに慌てて駐車した。 なんと、A君のグループが初のファンクラブを

    • かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #10

      「ピザは3枚、チキンナゲットは15ピース、ケーキは…俺が引き取りに行く」 世間はすっかりクリスマスモードになっているその日、私は夫とクリスマスイブの打ち合わせをしていた。 ちなみに、夫は相変わらず無職。 9月から新しい仕事を探すと言っていた夫だったが、12月になっても面接すら受けていない。 私と長女がA君の推しゴトに夢中で、ずっと機嫌が良いのをいいことに、サボっていたのか、はたまた根っから働く気が無いのか…。 しかし、それももう、私にはどうでも良かった。 「A君の

      • かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #9

        夫からA君へと「推し」を乗り換えた私は、A君の配信を聴けば聴くほどA君にのめり込んでいった。 ネイルをA君の『推しカラー』に変えたことや、A君の歌を無意識に口ずさんでいる私を見て、夫は不審に思ったのであろう。 機嫌の良い妻をニコニコ見守っていた夫の表情は、次第に暗くなっていった。 「いかん、また浮気と勘違いされる!!!」 私は大切な推し活を邪魔されまいと、作戦を練った。 それは小学3年生の長女を巻き込んでの『作戦』だった。 まず長女には、A君が所属するグループの動

        • かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #8

          「あやはるさん、いいね!あなたがうちの店頭に立っていると、お店の雰囲気が良くなる!」 仕事にて、とある店舗の入口のテナントを借りたときのことである。  お店のオーナーに突然、褒められた。 実は以前も同テナントには入店したことがあったので、このオーナーと話す機会はたびたびあった。 しかしオーナーから、しっかり褒めてもらったのは、この日が初めてだった。 なぜ急に褒められたのか、理由は明確だった。 「もしかするとA君がこの店に立ち寄るかもしれない」 私はこんな妄想をし

        • 固定された記事

        かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #11

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #7

          意図せず夫の推し活を卒業してしまった私は、美しい声の持ち主「A君」と出会ったことで、推しをあっさり乗り換えた。 新しい推し『A君』は、とある歌い手グループの中心メンバーだった。 A君は主にツイキャスやYouTubeなどを活動の舞台としている。 つまりテレビ世代である私の友人に、A君を知っている者はいなかった。 そしてA君のファン層は10代~20代。 …40歳が目前に迫っている私にとって「推しても良いのか」という後ろめたさも出てくるほど若かった。 でもA君の配信を聴

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #7

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #6

          「不安にさせてごめんね、そんな浮気とかするわけないよ!あなた以上の男の人なんていない!」 かつて夫を推していた私は、夫が冗談で浮気を疑ったときに、全力でこう答えていた。 そんな夫も、今や無職歴4年を極め、20キロも増量したリビングの主。 もちろん、私の口から冒頭の少女漫画なセリフは、1ミリも飛び出すことはなかった。 代わりに「私さ、仕事しかしてないのに、なんで浮気とか疑えるんかな?」と半笑いで答えた。 しかし私は言葉とは裏腹に、心で泣いていた。 夫に「優しくできな

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #6

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #5

          過去「推しを卒業した」ことがあるか? ―私は「NO」だった。 「推しを卒業」とは、例を挙げるなら「福山雅治を推していたけど彼の結婚を機に、ファンをやめた…」といった経験である。 そもそも私は過去に、芸能人やアイドルやアニメキャラや声優といった「推し」がいたことがない。 ずっと夫だけ。 夫だけを推していた。 なので推し活が終わるとどうなるのか、全く未知の世界だった。 さらに、ここでの問題は、私自身が推し活を終わらせたいなんて1ミリも思っていなかった点である。 なぜ

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #5

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #4

          「あれ?夫に対する『尊い感情』って、どこにいった?」 夫をがむしゃらに推してきた私は、ある日突然パニックになる。 それはある朝、夫から 「トイレの四隅は毎日キレイに拭き掃除したほうが運気上がるよ」 と一言アドバイスされたときだ。 いや、"アドバイス”とはその時1ミリも思わなかったので、下記のように綴り直す。 無職歴4年の夫は、会社へ行く準備に追われている私に、こう言い放った。 「トイレの四隅は毎日キレイに拭き掃除したほうが運気上がるよ」 これが正解。 ソファーで朝

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #4

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #3

          「しょうがない、それが推し様の答えだ」 私は「推し」のために仕事を変えた。 稼ぐために。 推し=夫は、仕事を辞めてもなかなか次の仕事に就こうとせず、4年経っても無職のままだった。 「なんで『仕事して』って口やかましく言わないの?」 と状況を知っている身内からはさんざん責められた。 もちろん全く何も言わなかった、なんてことはない。 現実にまだ小さい子供を3人抱えている私も、さすがに経済的にキツイと夫に何度か伝えた。 しかし状況は変わらなかった。 そこで冒頭の結論が

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #3

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #2

          「推しは夫だ」 そう思っていた私の結婚生活は、おそらく常識を逸脱していた。 アラフォー女性に分かりやすく例えるならば「キムタクがずっと自宅にいる」状態だ。 だから夫が寝るまで寝たくない、メイクを落とした顔を見せたくない… 今考えると苦痛そのものな生活(笑) しかし自宅にいる時間ずっとドキドキさせてくれていた夫の存在は、私の全てだった。 夫が少し不機嫌そうな表情をすると「何か気に障ることしたかな…」と不安になる… 夫の言った言葉が聞き取れないと「ごめん、何て?」と

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #2

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #1

          私の推しは、たしかに『夫』だった。 夫とは20歳で初めて出会い、28歳で結婚。 29歳・30歳・31歳と3回の出産を経ても、私の推しは夫だけ。 母性が欠けていると思われても、はっきり言えるのは「夫が1番大好き」。 そんな私だったが、40歳を目前に転機が訪れた。 夫以外に『推し』ができたのだ。 相手は…一般人やホストでなかったことが幸いだった(笑) 新たな推しとは、とある歌い手グループの1人。 たまたま聴いていた音声配信で耳を奪われ、素敵な声に恋してしまった。 「あ、初

          かつて夫が推しだった私へ~無職の夫と私の記録~ #1