2022/09/05 リゾバ日記11日目 清らなる一日

・ここのところ朝7:30からの労働が続いていて、規則正しい生活を余儀なくされている。夜更かしもできないし二度寝もできない。まあどっちもしなくていいんだけど、自堕落な生活っていうのはそれだけで甘いものだから、たまに求めてしまう。

・しかしカスみたいな寮では気持ちよく微睡むことなどできない。心を預けられるほどこの住処を信頼していない。だから毎晩、深くは考えずに布団に潜り、無意識的に入眠している。


・午後からは街に連れて行ってもらった。ここに来たときにも送迎してくれた優しいおじさん運転手が、ゴミ出しついでに車を出してくれたのだ。駅で帰りの切符を買って、領収証をもらって、スーパーで生活必需品や嗜好品を買った。用事を済ませられたのも良かったが、なによりも車窓から見える広々とした景色が心を晴れやかにしてくれた。10日間ずっと同じ景色のなかで生活していたが、いつのまにかそれが抑鬱の一因となっていたようだ。

・「窓開けてもいいですか」と聞くと「そうだよな、あんな閉鎖空間にいたら外の空気吸いたくなるよな」と開けてくれた。こういうワンテンポ早めのハイコンテクストなコミュニケーションも久しぶりだったのでなんだか妙に感激してしまい、すこし涙が出そうになってしまった。

・送迎おじさんは若い頃、生命保険会社で営業をしたり上場企業で偉い役職を務めたり、バリバリ働いていたらしく、だいたいお金も稼いで東京でやりたいこともやり終わったから、北海道の自然豊かな温泉地でゆったり運転手をしているらしい。なんて羨ましいんだ。道々、あそこにリスがいるとか、熊鷲が飛んでるぞとか、鹿だ!あいつらなぜか逃げねえんだよ、こっち睨みつけてな、かわいいよなぁ、とか教えてくれた。

こちらをじっと見ている

・宿に帰ってくると、おじさんは駐車場に停まっているキャンピングカーを指差して「あれ俺のなんだ」と言った。いやめちゃくちゃかっこいい老後だな。所ジョージみたいだ。「たまに長めに休みもらって道東のほうをドライブして、そのとき旬の魚とか野菜を車内で調理して食べんだよ。海辺の道の駅なんかに停めてさ。日の出見ながら飲むコーヒーは最高だぜ?」

・そんな最高の送迎おじさんに来週また街に連れて行ってもらう約束をして、仕事に戻った。


・厨房では料理長があいもかわらずキツそうにしていて、あーあーもう疲れた辞めちまおうかな、みたいなことを延々とボソボソ喋っている。「さっき鹿見たんですよ」と話しかけてみたら「鹿ねぇ…俺あいつらに2回も車壊されてるから大っ嫌いなんだよ」と返された。どっちが良い悪いとかではないけど、差がすごい。


・退勤し、温泉に入り、ポカポカのツルツルになり、今日買ってきたオイルトリートメントを髪に馴染ませ、YMOのコズミック・サーフィンを流し、従業員の人からいただいたサッポロクラシックの中瓶と料理長からいただいたホッケで晩酌をする。うめ…うめ… グラスを傾けながらこれを書いている。


・350mlの缶ビール1本に生活のハリを担わせているし、外出するためにも一苦労だし、私っていますごくカイジに近い状態かもしれない。


・あと今日の買い出しではタバコも一箱買った。自分で吸うのではなく、料理長が吸ってるやつを買ってきた。ここでの仕事が終わったらお礼にあげようと思って。私はこういうプレゼントをするのが好きだし、ほぼ自己満足だけど、きっと喜んでもらえるでしょう。あげるのが楽しみだ。


・街に降りたことでかなり心が綺麗になった感覚がある。濁りが取れたというか、毒抜きされたというか、靄が晴れたというか、すごく清々しい気分だ。このリゾートバイトは、自分の心を清潔に保つためには何が必要なのかを知るよいきっかけになっている。私の心には「多少ゆらぎ幅のある生活」が不可欠らしい。判で押したような一定の生活は私を殺しうる。学びを得た。

・心が清らかになるとおもしろいことが書けなくなってしまう。なんかダジャレでも捻り出すか。

・なーんも思いつきません。

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