真空管サウンドのオルタナティブ ――③ライン録り
これまで、
「よい音」に真空管は必要なのか?
という記事で問題提起を行い、
真空管サウンドのオルタナティブ ――①ダイレクト・イン
真空管サウンドのオルタナティブ ――②ジャズコーラス
として、2つの事例を挙げてみました。
参考にすべきはベーシスト?
次にヒントになるのは、ベーシストでしょうか。
そもそも、ベースアンプは扱うエネルギーが大きいせいか、ギターアンプほど真空管アンプが絶対視されている印象はありません。
Markbassから出ているMarcus Mirrerのシグネチャーモデルもソリッドステートです。
ライブにおけるベーシストのアンプ事情
DTM等でベース音源を触ったり、ベースのレコーディングをしてみたことがある方なら分かるかとは思いますが、ベースはギターに比べてよほどワイドレンジです。
そのためマイクで録るのは難しく、ライブでは基本的にはDIからPAに音を送っており、よほどDIにこだわっている人でなければ、真空管を使用しているケースはまれでしょう。
レコーディングにおけるベーシストのアンプ事情
レコーディングにおいても、Geek in Boxの嵯峨さんが、レコーディングにおいてDIを用いる理由について、次のように述べられています。
アンプをマイキングした音だと、そのアンプとマイクのキャラクターも込みのサウンドとなり、ベース本体の音をハッキリと聴かせるのには向いていません。現代の録音ではまずは素材を高い質で録音する作業が行われます。それにはラインで録るのが最適で、例えばアンプライクなサウンドが欲しければ、ラインで録った音をアンプに流してそれをマイキングする、リアンプという手法が使われます。
楽器の違いはありますが、ギター本体の音をハッキリ録音することを求めて、DIを用いてライン録音してもよいのではないでしょうか。
アンプシミュレーター神話
しかし、「エレキギター+DTM+録音」で検索すると、当たり前のように「アンプシミュレーターを使いましょう」と書いてあるHPに出くわします。
さらに踏み込んで、「アンプシミュレーターを使わないと、ペラペラの音になります」とまで書いてある場合も。
確かに、真空管サウンドのような「よい音」を目指すのであれば、アンプシミュレーターは必須です。
(そのため、上のような記述をしているHPを貶す意図は全くありません。)
しかし、今回はあえてその「よい音」に対するオルタナティブを考えようという趣旨なので、アンプシミュレーターを使用せずにグッとくるトーンが出せるか試してみたいと思います。
ベースプリアンプ/DIを用いたライン録音
そこで、別の事情で購入したaguilar TONE HAMMERを用いて、録音したものがこちらになります。
(サウンドの比較を目的とした音源でないことをご了承ください。)
まず、クランチ。
次に、クリーントーン。
平板なサウンド?
個人的には、どちらもグッと来ているのですが、どちらかと言えば、クリーントーンの方がよさそうですね。
実際、再生数もクリーントーンの方が伸びています。
このサウンドはやはり真空管サウンドとは異なり、平板な音かもしれません。
その一方でクリアでストレートなサウンドなのではないでしょうか。
これをクランチにすると切っ先の鋭いようなサウンドになっているように私は感じました。
また、良く言われる、「ピッキングニュアンス」、「強く弾くとクランチ、弱く弾くとクリーン」というアレに関しても、ファズフェイス系のペダルを用いることで実現可能だと感じました(個人の感想です)。
DIの可能性
今回は事情があり、ベース用のプリアンプ/DIを用いましたが、より上の音域のEQを持つアコギ用のプリアンプ/DIも試す価値があるかと思います。
(例えば、ANIMALS PEDALのFirewood Acoustic DI。)
また、価格は非常に上がってしまいますが、スタジオグレードのDIを用いることで、よりハイファイなクリーンサウンドを作り出すことができるかもしれません。
(例えば、A DESIGNSのREDDI-V2。)
エレキギター用のプリアンプは?
エレキギター用のものは、おおむねFETトランジスタなどを用いて、真空管サウンドをエミュレートしたものがほぼすべてで、今回の趣旨とはずれてしまいます。
しかし、ともすれば平板になってしまうクリアでストレートなクリーンと真空管サウンドの中間を狙うのであれば、選択肢に入ってくるかもしれません。
次回、最終的な考察です。
全体の構成
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