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【ピアノ教室】最後のレッスンには「別れのノクターン」を

前回の続きです。

親子共々強制退会を申し渡されたとき、

(まさか来ないでしょうが)一応、次回のレッスン枠を空けてあります。

と先生が言っていたので、その翌週、ぶぶ漬けを食べに、教室に行きました。前回、前々回と先生にはレッスン拒否と同様なことをされましたが、今回は私がレッスン室に入ると、すぐに先生も入ってきて席につきました。

主宰のO先生に諭されたんでしょうか。。。
何だか緊張しているというか、恐縮しているというか、それとも「何しに来たのか」と怯えているのか。前回と打って変わって縮こまっている印象です。

いやいや噓でしょ?そんな殊勝な性格でしたっけ? と思いましたが、怖がらせるのは嫌なので、「今日は、強制退会についてゴネに来たわけではないです」とまずはきっぱりと言い聞かせました。

そして「先生を先生とも思わない態度で不愉快な思いをさせてしまい、申し訳ありません」と謝罪しました。

別に私の今までしたことが間違っているとは思っていませんし、それについて謝罪するつもりはありませんが、意図せずこの先生のプライドを傷つけてきたのは事実だと思っての謝罪です。そして、最後は形だけでもレッスンを成立させて、険悪じゃない状態で関係を終わりにしたい。。。

そこまではっきりとは言いませんでしたが、お互い大人ですし、私の意図することを察して先生も同意しているようなので、「それではレッスン始めますか」と先生に声をかけて、この教室での最後のレッスンを始めます。

ツェルニー40番 No.1

強制退会をくらったショックなのか、それともツェルニー40番との相性が良かったためなのか。。。大人になってこの教室に通い始めても全く治らなかった、私の悪い癖がツェルニー40番を練習したことで今更になって治り、手のフォームの改善がついにできたような気がします。

おそらく、小指球に筋肉がつき、小指を立てて弾けるようになってフォームが安定。母指球、小指球がともに白鍵に触れるくらいに手首が下がり、鍵盤が指に吸い付くような感覚を味わえるようになりました。

すらすらと弾くNo.1に対して、先生も思わず、「いいですね! あ!」と言うほど。一発合格で○をもらいました。そして、この曲がこの先生に○と日付を付けてもらった最後の曲となりました。。。

バッハのレッスンはスキップ

いつもなら、ツェルニーの次はバッハ/フランス組曲を弾くのですが、第5番のブーレⅠは強制退会のきっかけとなった曲。それに過去のレッスンを振り返っても、バッハは拍子感やフレーズ等のダメ出しで嫌な思い出ばかりだし、また喧嘩になっても嫌ですし、もうこの先生にバッハは習いたくないので、「バッハはやめにしましょう」と一言だけ言って、弾かないことにしました。

ベートーヴェン/ソナタ 17番 3楽章

次にテンペストを弾くことに。この曲も毎回「ゆっくり弾くように」と言われていましたが、今回は普段私が家での練習で弾いているやや速いテンポで弾きました。先生もテンポについてはもう何も言いません。

今回も私の苦手な381小節の両手ユニゾンの跳躍の部分を直されますが、結局、この部分は最後までうまく弾くことはできませんでしたね。

ひとまず曲の最後まで弾き終えたあと、「テンペストは私がピアノを始めるきっかけとなった昭和のドラマで出てきた憧れの曲。これに挑戦ができるまでになったのは先生のおかげです」と御礼を言って、この曲のレッスンを終わりにしました。

グリンカ/ノクターン「別れ」

まだ時間が余っていますが、次に何をやりますか?

と先生に聞かれたので、あらかじめ用意していた楽譜を取り出しました。
グリンカのノクターン「別れ」です。

別れと名が付く曲は、ショパン/エチュード「別れの曲」、ショパン/「別れのワルツ」、ベートーヴェン/ソナタ「告別」などが有名ですが、「別れのノクターン」って曲があること知っていますか? この教室の人も弾いたことがある人はいないんじゃないかな。。。

と、いつものようにそんな蘊蓄を傾けても、この先生の相変わらずの塩対応。というか、興味なさそうな態度は最後まで変わらずですね。。。

グリンカのノクターン「別れ」。枯れ葉舞う秋の季節にぴったりの良い曲。哀愁漂う低音のメロディは、本当はピアノではなく、チェロで弾いたほうが合うのではと思います。

(ダニール・トリフォノフの子供のときの演奏らしい。。。)

強制退会を申し渡された直後に譜読みを開始したので、まだ上手くは弾けず。でも、最後まで何とか弾き切りました。ただの自己満足ですが、この曲を弾いてこの教室との関係は終わりにします。

そして席を立って、帰り支度。その際、先生に「明日の時間、息子を挨拶に伺わせます」と告げ、先生もそれを了承してくれました。

そして、「もう私のことブロックしているかもしれませんが、最後に1回だけLINEをお送りしておきますね」と告げて教室を出ました。

LINEで送ったのは、10年前の私と息子の発表会デビューの動画。小さな息子と私が舞台上のピアノの前でお辞儀し、その脇で先生が笑顔で拍手しているサムネイルです。そして、お世話になった御礼と「明日、息子のことをどうあしらっていただいてもかまいませんが、可能でしたら大人の対応を願います」と付け加えました。既読は付きましたが、動画は見たかどうかはわかりません。

息子の最終レッスンの後、家族3人で打ち上げ

翌日、息子と妻が菓子折りをもって教室に行き、10年間お世話になった教室での最後のレッスンを終えました。そして息子のレッスン終了後に待ち合わせて家族で外食することに。私も久しぶりにワインを飲みながら、家族とピアノ教室の思い出話に花を咲かせました。

私と息子は数少ない男の生徒で、そのユーモラスな親子連弾は名物コーナーだったんですよね。発表会にあるまじき「観客からの笑い声」が起こるのは私たちくらい💣。そして、発表会の演奏のたび、ほかの生徒の親などからよく声をかけられていました。息子が年々上手くなっていく様子を見守っていただけていたようです。

よく声をかけていただいた人、打ち上げ等で会話するほかの大人の生徒、ほかのピアノやヴァイオリンの先生。発表会でしか会わない方たちでしたが、そのような方たちとも、先生と喧嘩すれば簡単にぷっつりと縁が切れてしまうんだな。。。もう二度と会えない人達のことを思うと、すこし感傷的な気持ちになります。

主宰のO先生には、今までの感謝と発表会の演奏動画から私と息子のものを消去するようにメールでお願いしておきました。消してくれるかどうかわかりませんが、トリをつとめた高校生とその親の演奏が消えていれば、異変に気付く人もいるでしょう。勝手ながら、それをほかの方たちへの別れ&お詫びの挨拶とすることにしました。

今年の納会では、先生方および大人の生徒間で、いなくなった私のことが噂され、悪く言われることでしょう。それは甘んじて受けます。結局、私は先生との距離を詰められず、その先生の取り巻きの大人の生徒たちとのコミュニティにもなじめなかったんだなと理解しました。

息子が「先生が『大学生になったら戻ってきなさい』と言ってくれた」とちょっとうれしそうに話します。

どうやら、先生は私の最後のLINEでしたお願いを聞いてくれたようです。感謝です。でも「それはただの社交辞令だよね?」と私の顔を見つめて伝えてくる妻の無言メッセージの通り。息子はもうあの先生には習えないでしょう。

子供の時に10年も習った先生との関係を息子から奪ってしまったことに罪悪感を感じます。でも、切れてしまった縁を嘆いてもしかたありません。息子のピアノの発展、そして新しい縁、環境に出会うために必然だったのだと考えることにして、前に進むことにします。

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