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算数の教え方

私は気晴らしも兼ねて、近所の「落ちこぼれさん塾」の手伝いをしています。もちろんボランティアです。

塾頭の先生夫妻と町内会の集まりで知り合いになり、算数と理科とキャッチボールと将棋を、行き場のない子供たちと楽しんでます。

フォークボールの投げ方を教えたりしてるんですが、あたしがあんまりわかってないので、どうも落ちません。小学校の時は落ちたんだけど…気のせいだったのかな?

二宮康明先生の競技用紙飛行機を組み立てて、田んぼで飛ばしっこしたのは、みんなも盛り上がったなぁ。アマゾンで「White wings」(あおぞら社)のキットを取り寄せてね。

生徒さんから「サクランボ計算」なるものを教えてもらいました。繰り上がりを分かりやすくする計算なんだけど、めんどくさいね。そろばん習ってる子はかえって混乱するんじゃないの?

私の小学校のときは「水道方式」という教育方法が先生方の中で広まっていて、もちろんそんなことを学生の私たちは知る由(よし)もなかったのですが、後に数学に興味を持ち『数学セミナー』(日本評論社の専門誌)をとっていたら、遠山啓(とおやまひらく、数学教育者)先生が「水道方式」の解説をなさっていましたので知ることになったのです。

「水道方式」では「タイル」という教材と概念を使って、数の大小や四則を学ぶんです。

算数と数学の垣根は、具体化と抽象化の垣根でもあるわけ。算数は、まず具体例で生徒にアプローチするのだけれど、それではいつまでたっても抽象化する段階を経ないので、数学にならないのです。

小学校低学年で「文字と式」なんて教わらないけれど、ミカンだのリンゴだのを出してきて足したり引いたりすることが、実は数学的には無意味であることに早く気付かせたいのです。

そこで文字と式という「抽象化」をどうしても教えなければならない。その抽象化への一段階前が「タイル」を使った学習なんですよ。

タイルは一枚が正方形の色も塗っていない、白い画用紙か厚紙でできています。「一枚=1」とまず教えます。これが五つ縦に並べて集めると「5のかたまり」になり、「5のかたまり」が二枚縦につなげると一本の「10のかたまり」になり、これが10本横に並べると、10×10=100の正方形のかたまりになるのです。

大人への説明はこれだけでわかると思います。要するに、「リンゴ三つと、ミカン二つを足せば五つ」というまったくバカげた数式によらずとも(足してもリンゴは増えないし、ミカンも増えません)、タイルならば自由に足せるし引けるのです。

子どもたちにいきなり「抽象化(一般化とも)」を教えるわけにはいかないけれど、タイルならそれができるんです。子供にとってタイルは十分抽象的なのですから。

「タイル法」は「水道方式」の一部に過ぎません。遠山先生の構想は「筆算を重視する」ことにあったようです。タイルでも繰り上がりを視覚的に表現できるし、思考の過程を学生が確認しつつ学べるので、「サクランボ計算」よりは「そろばん」に近いものと推測します。もちろん「サクランボ計算」にも視覚的なメリットがありますが、子供たちの算数に対する理解度が画一化しないか心配で、現に、計算が早い子は「サクランボ計算」など使ってはいないようです。「旅人算」や「つるかめ算」は和算の「考え方」を学ぶもので、様々な解き方を知って柔軟な思考を訓練するもので、必ず「つるかめ算」によって解かねばならないわけではないのです。

これから理系に進む者は数学を道具にする人がほとんどですから、もっとも効率の良い計算方法を用いるべきで、計算のやり方で四苦八苦することだけは避けてください。概算を知るだけでよい場合もあり、最後の一桁まで計算する必要もありません。また数字そのものより「オーダー」といって桁(ケタ)がどれだけなのかが大事です。算数でつまづくような教え方だけは、教師はしてはならないと思います。

もちろん文系の方でも、数字は世の中の見通しを明るくしてくれますので、ぜひとも嫌いにならないでください。ただ数字に惑わされないためにも…



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