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祭りの夜

夏祭りなので、私と従弟の浩二は、祖母から浴衣(ゆかた)を着せてもらった。
私の記憶では、中三の夏休みが浴衣を着た最後だった。
高校になって、もはや実家の門真から高安家に泊まりに行くことはなくなったからだ。

私は、浴衣の下に何もつけていなかった。
たぶん、浩二が後ろから突かせてくれと言うに違いなかったから、最初からショーツをつけずにいた。
こんなことを思いつく中学生だった私は、すでに淫乱な嗜好があったのだろうか。

薄暮の中、浩二と二人で、慈光寺の前の広場に向かった。
盆踊りの櫓(やぐら)が建ち、踊りの輪ができていた。
浩二の母親も踊りの輪の中にいるはずだった。

行く道々、同年代の子も散見されたけれど、どちらかといえば、小学生たちがほとんどだった。
向こうから戻ってくる子供らは手に手に、綿あめやらヨーヨーを持っていた。
慈光寺には縁日の屋台がたくさん出ていて、相当な賑わいだった。
「こんなに人がいるんやね」
「榜示川(ほうじがわ)の部落のひとも来てるからちゃう?西畑(にしばた)とか垣内(かいと)の子らも来てるみたいや」
浩二の口から、この辺の集落の名前が飛び出す。よそ者の私にはほとんどわからない。
「払底(ぼって)に昨日、行ったやろ」
新池(しんいけ)の上(かみ)の西側の杣道(そまみち)を行くと、土地の人が「ぼって」という場所に達する。
「ぼって」には、山芋を掘ったり、栗を採ったりする場所がある。三等三角点があって「ぼって山」という山頂になるらしい。
「それがどうかしたの?」
「あそこでな白骨死体が、あがったことがあってん」
「え?そんなこと初耳やわ」
私は背筋が寒くなった。ただでさえ薄気味悪い「ぼって」である。たとえば、新池の反対の道は「地獄谷」といってもっと恐ろしい場所だと聞く。
私は、にぎやかな露店をのぞきながら、気もそぞろに歩いていた。
「地獄谷やったら、むかし、牛馬が死んだらあそこに捨てるから、骨の一つや二つでるやろけど、ぼってやで」
「ぼってのは人の骨なんやろ?」
「警察はそう言うてた。事件性はないやろとかも言うてた」
「事件性がないって、自殺?」
「自殺は事件やで」「そっか…ほなら、行き倒れ?」「かもね」
その話はそれでおしまいにした。
私たちは「なんば(焼きとうもろこし)」を買って、むしゃむしゃ食べながら歩いた。
そして、作り置きだったのか、冷めた不味(まず)い、たこ焼きをひと舟買って、境内の石段に座って食べた。
「なんや、生焼けみたいなたこ焼きやな」
「もうやめとき、こうちゃん。お腹、壊すよ」
「そやな」
浩二は小さい時から、よく下痢をした。
私は、姉のように、浩二をたしなめ、へぎ(たこ焼きの舟)を捨てに行く。
浩二は後ろをちょこちょこついてくる。
雪駄(せった)が歩きにくいのか、歩き方がおかしかった。
「帰ろか」浩二のほうが、言い出した。
「うん」
「こっちから帰えろ」
浩二に手を引かれて向かったのは慈光寺の裏手だった。
そこには高安の屋敷へ通じる道がついていたのだった。
しかし、日も落ちたこの時間だと、あの道は街灯がないので真っ暗のはず。
「真っ暗で、危ないよ」
「これがあるねん」
そうやって懐から出したのは、小さな懐中電灯だった。
たしかに、けっこう明るかった。
二人して喧騒から逃れるように、その小道を登って行った。
しばらくは村の街灯の光が届いていたが、じきに、小川のせせらぎの音しかしない暗闇になった。
浩二の熱い手が、私の手をつないで引っ張っていく。
「足元、気をつけな」
そういって、頼りない懐中電灯の光で下を照らしてくれた。
しばらくいくと、あのクスノキのあるちょっとした広場に出た。
もう下には、高安の家の屋根が見えるはずだった。
「なあ、なおぼん」
そら来た…浩二が催してきたらしい。
「なんやのん?」
「そこのクスノキに後ろ向いて手をついて」
「ここですんの?」
「ええやろ?後ろから…」「もう…」
私は、馬飛びのように前かがみになって、クスノキの硬い皮に両手を置いた。
ぱらっと浴衣がめくられ、私のお尻は丸出しになっているはずだった。
「うわ、パンツ、履いてへんやん」
「あんたが、するやろと思って、脱いできた」
「すっげ、なおぼん」
「はよ、しぃ」
「よっしゃ。暗いな」
彼も浴衣なので、前をはだければ、勃起を取り出せるはずだった。
浩二は私の濡れ具合をたしかめるように指を這わせてきた。
「ううん…」
私がのどを鳴らす。自然と足が開いた。
「ああ、濡れてる。いくで」
軟らかい先が、谷筋をこする。
汁を塗り広げる、いつもの浩二の動きだった。
蚊があちこちを刺す。
その痒みが快感を誘った。
「入れるよ」
ぐに…
硬いものが胎内に割り込むように侵入してきた。
私はのけぞるように、上半身を起こしてしまう。
「あかんて、立ったら。抜けてまう」
「でも」
私は、内部をこすられる快感を得ようと立ちバックをねだった。
私よりやや低い浩二は下から突き上げるようにし、私はひざを折って高さを調節してあげた。
ぬち、ぬち、ぬち…
愛液なのか汗なのかわからない湿った音が下から聞こえる。
浩二が私の浴衣の前立てから手を入れてきて、乳房をもみしだく。
「はうっ。いいっ」
「なおぼん、締まるぅ」
「締めてるの。わかる?」
「わかる。やばいよ」
「中に出さんといてや。今日は危ないんやから」
「わかった」
浩二のペニスは深く差し込まれたり、浅くこぎざみに動いたりした。
たまに抜けて、前に飛び出す。
そのとき、クリをこすったから、たまらない。
「やん、きもちいいっ」
そのまま「スマタ」で浩二が腰を振り出した。
私にはこれの方がよかった。
浩二が私の脇の下に顔を入れて、その部分の匂いを嗅いでいる。
私には少し「腋臭」があった。浩二はそれが好きなようだった。
「ああ、なおぼん…」
そう言いながら、激しくスマタを動かしている。
このまま逝くのかもしれなかった。
「いいの?外で」と訊いてやったら、
「中はあかんねやろ?」浩二が言う。
「じゃ、このまま逝(い)って」「うん」
そういうと、浩二が羽交(はが)い絞めみたいに密着して来、私は熱く硬いペニスを腿(もも)で挟んでやった。
浴衣は着崩れ、汗みどろになっているだろう。
「なおぼん、いくっ」
浩二が、背中でぶるぶる震えて、熱いものが私の腿(もも)を伝うのが分かった。
「で、でたぁ」
「いった?」「うん。いった」
浩二がゆっくり私から離れた。
目が慣れたのか、周りの景色がわかるようになっている。
蚊に食われ、私はぱちんとむき出しのひざなどを叩いた。
暗がりで、浴衣をどこまで整えられたかわからないが、とにかく胸元を合わせて、膝も合わせた。
「行こうか。ここにいたら、蚊にやられてボコボコになる」
「うん」
高安の母屋に帰った私たちは、かなり乱れた姿だった。
大人たちに見つからないように、二人は別れた。
浩二は、自分の離れに、私は母屋の祖母のところに…
内腿に乾きかけの精液がつっぱりつつあった。
「早くお風呂に入ろ」
私は、風呂場で浴衣を脱ぐことにした。
そこには祖母が洗った私の下着を置いていてくれていた。
風呂場の明かりで浴衣を点検すると、前のすそに、だらだらと浩二の「お印(しるし)」の伝った跡があった。
「おばあちゃんに見つかるかなぁ」
もうしかたがなかったので、そのままにしておいた。
足と腕にいっぱい蚊に食われた跡があり、かゆかった。
汗みずくの体を、五右衛門風呂に沈めて、私はほっとした。

「なおこ、帰ってるんかいな」
祖母の声が外から聞こえた。
「うん、汗で汚れたからお風呂、もろてます」
「そうかぁ、浴衣はそこに脱いでおいて、明日洗うから」
こちらの声はあまり聞こえてない祖母なので、当て推量でしゃべっている。

私は、さっきの淫らな行為を反省していた。

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