マルチ商法集団と友人との思い出

今思うといい思い出だな〜ということをぼんやり思い出したので書く。

2,3年前、友人がある事業家集団(環境、アムウェイ等の検索で出てくる)のグループに属しており、そこに私も友人から勧誘されたことがある。

話で聞く限り、友人のその集団に入った(?)ルートは、
相席屋で飲み会などの誘いを受ける→謎の飲み会→フットサル→ボードゲームを使った勉強会
といった感じだった。

「フットサル行かない?✨色んな職業な人が居て交流出来るし、経験値が溜まるよ!」
友人からの最初の誘いはこんな感じだった気がする。

上京してまだ知り合いが少なく、寂しかった私はすぐに乗った。友人は私より年上で、同郷ということもあって心の支えだった。

謎のフットサル運動会には、確かに色んな職業の人がいた。しかし、年齢は20第後半〜30前半と割と限られていたイメージがある。
最初は社会人サークルかと思ったが、しばらくしてなにか違うことに気づいた。
まず、彼らはあだ名で呼び合っていた。お互い本名を知らない人が多かった。そして、3分の1が私と同じように誘われてきた人達だった。それからやけにみんな親切だった。これだけ聞くと、Twitterの集まりみたいにも思えるが、彼らに趣味とかそういった共通項やテーマは見当たらなかった。そんなことより、"何となくいい人"達がよく分からない形式的なノリではしゃいでいて、すごくモヤモヤした。
友人に「これってどういう集まり?」と聞くと、「私も最初は誘われてきたんよね〜結構頻繁にこういうイベント行ってるよ」と、問に対して答えになっていない返事をされた。
が、私は曖昧に色んな大人が集まる集団なのか…と納得してした。
同じことを何度か聞いて、最終的には行きつけの飲み屋の仲間という風なことを言っていた。

「多様性との交流in東京」に憧れていた10代の私は、友人からの謎の集団とのBBQやクラブなどの誘いに何度か足を運んだ。
その頃から友人は「経験値」「自己投資」「人脈」というワードを連発するようになっていた。「経験値厨」と自称していた。絵文字がキラキラしていた。
都会に来たからには色々と経験したい、という気持ちには私もとても共感していた。
「広い人脈が大事、将来の財産になる」
と友人は言っていた。
私は本気で「分かる〜」と言っていた気がする。

しかし、全ての時間を有意義な時間として変換しようとしていることに少し引っかかった。
そしてただの飲み屋の仲良しの集まりではないことは何となく察していた。
それでも、「人と関わった方が良いし…」と自分を納得させていた。

ある時、飲み会の最後に、幹事らしき人が「皆さんお疲れ様でした。次のイベントは○○グランプリがあります。場所は××、ゲストは〜です…ぜひ来てください!」と告知をした。
なんでそんな場所でイベントが出来るんだ。てか主催者側みたいな言い方だな。
友人に一緒に行こうと誘われたが、やんわり断った。
帰りの電車でそのイベントの名前で調べると、事業家集団の名前が出てきた。その末端の活動についても、数時間前までいた恵比寿の飲み屋についても書いてあった。
最初は飲みやフットサルなどに誘い、最終的に勉強会へ投資させるマルチ商法だった。
何となくいい人達の共通項が、その時分かった。

私は友人に対して激しい怒りが湧いていた。
騙されたとは思わなかった。友人は本気でその集団や勉強会が好きだったし、純粋に私に自分と同じく楽しんでもらいたかったのだと思う。

私の怒りは
「無知なのに経験値とか人脈という言葉で私を釣って、クソつまんない大人の茶番会に付き合わせやがって」だった。
(無知なのも、そういう言葉や価値観に1番踊らされていたのも私だったが…)

集会は私にとってつまらなかったのだ。
結局、私はその集団の誰とも仲良くなっていなかった。本名とLINEを知らないからではなく、その人達の好きなものが分からなかった。未来の話が苦手だった。どうでもいい話がしたかった。
友人は心底楽しそうだった。
大人と仲良くなれない自分が未熟だと思っていた。
自分に自信がなかった。

頻繁にそういった集会に参加したり、実際にお金を巻取られたわけではなかったが、「つまんないことに付き合わされた」という意識が根強く残り、怒りはなかなか消えなかった。

その後、友人から勉強会を申し込まないかというLINEが来た。
その頃には怒りを消化していて、「そういうことには興味が無い。そしてもう集まりには行かない」と返した。

しばらくして、友人と何度か会った。キラキラワードも使わなくなっていたし、勉強会にも行っていないようだった。何があったかは聞かなかった。

今思えば
学生時代に(恐らく)あまり遊べなかった社会人に課外活動や大人数の飲み会で男女共存の擬似青春の居場所を提供
→コミュニティに浸かせる
→セミナーや勉強会に誘い込む
→自己投資や自己実現という名目で「お金のリミッター」を外させて注ぎ込ませる
よく出来た仕組みだと感心する。

クラブやフットサルなど、プライベートでも共にすることでコミュニティを強化して、抜けづらくしてるのかもしれない。

設定されたゴールがマルチ商法なだけであって、入り口はみんな新しいコミュニティが欲しかっただけだなんだなと思う。

その頃の私は、知り合いが何人いるとか、遊びの予定が詰まっているかとか、珍しい話のネタがあるか、とかそういうことに執着していた。確かにそういう価値観が重視される場所もあるけど、私には向かなかった。その頃は小説を読んでいなかった。

時が経って、友達は1人居ればいい、平凡も非凡の物差しもどうでもいい、夢中になれることがあれば最高と思って過ごしている。
本も再び読むようになった。

この一連の出来事が無ければ、マルチ商法の具体的な勧誘方法も、自己実現病の人達は何となく良い人だということを知ることが出来なかった。

ありがとう、マルチ商法。

ちなみに、その友人と近々しゃぶしゃぶに行ことになった。
最近ハマっているタイBLの話や、こめかみあたりの生え際が三角形にハゲた話をするつもりだ。

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