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#184 「かわいい子」に、なぜ旅をさせるのか?

1 秩父にはなぜホルモン屋が多いのか?


旅に出ると「なぜ?」がたくさん見つかります。

今回の秩父旅行でも、
いくつかの疑問がわきました。

秩父地方には、
豚肉やホルモン焼の店が多いのです。

「特産だから」で終わらせてしまうこともできるのですが、
疑問を大切にすると、
何かしらの発見が生まれます。

秩父には武甲山(ぶこうさん)という山があるのですが、
この山は石灰岩でできていて、
明治以降の近代建築に欠かせない、
セメントの原材料になります。

首都圏からも近いので、
都心の建築物に使うため、
大量に切り出されました。

当然、切り出すためには、
たくさんの人夫が必要です。

労働者は豊かなわけではありませんから、
安価にカロリーやたんぱく質を補給できる食事が
大量に求められました。

そこで目を付けられたのが豚肉です。

ホルモンの語源は
「放るもん」と言われているように、
もともと可食部として普及していませんでした。

しかし、きちんと下処理をすれば、
安価かつカロリーもたんぱく質も豊富で、
美味しく食べることができます。

こうして労働者の食べ物として、
秩父地方に広まった豚肉やホルモンの料理が、
今も特産品として残っているのです。

2 強石はどうして栄えていたのか?


今回の旅では、
「ゲストハウス錦」という宿にお世話になりました。

宿は三峰神社への参拝道の入り口でもある
「強石(こわいし)」という場所に立っています。

もともとは明治創業の老舗旅館
「二木屋」の建屋を引き継いでいるのですが、
創業当時の写真を見ると、
とても賑わっていたことがわかります。

失礼な話ですが、
山中の寂れた場所に位置していて、
往時の賑わいは全く感じられません。

しかし、近くには高札場
(お上からのお触れの周知に使われる掲示板)
跡がありましたから、
人が集まる場所であったことは、
史跡からも明らかです。

歴史をたどってみると、
強石には炭の取引場があり、
多摩・秩父周辺の山で作られた良質な炭が売買され、
様々な場所に運搬されていったようです。

昭和初期までは炭が主な燃料として重宝されていましたから、
取引場周辺には人が集まり、
宿や店などがあふれていたわけですね。

今となっては面影は殆どありませんが、
こうして疑問を大切にすると、
生きた知識が身につきます。

3 旅で磨かれるもの


「かわいい子には旅をさせよ」
ということわざがありますが、
旅では「思考力」と「決断力」が磨かれます。

今回紹介した疑問は、
解決しようと頭を働かせると、
どちらも生きた知識・経験とともに、
思考力という形で身についていきます。

こうして体験した知識や経験は、
机上の知識とは異なり、
そう簡単に忘れるものではなく、
いつでも持ち運べる貴重な財産になります。

また、一人で旅をしていると、
想定外の出来事が起こるもので、
ここではベスト(ベター)な選択肢を
自分の責任において選択するという決断力も求められます。

旅を学びあるものにするかどうかは、
個人の姿勢にかかっているということです。

もちろん、子どもに旅をさせるにあたっては、
安全性をきちんと考慮しなければなりません。

しかし、疑問を大切にするという意識づけをさせたうえで、
どんどん旅を経験させることは、
学校ではなかなか体験させられない、
貴重な学びの機会になると思うのです。

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