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「建築見学」グーギー建築について その1

今回は、去年の暮れにロサンゼルスへ行った時に出くわした建築について書きたいと思います。

ロサンゼルスの空港につくと、いきなり目の前に飛び込んで来るこの建築は建築家Gin Wong(1922-2017)が設計した建物。(写真を取り忘れたので他サイトから引用)



この建築家はかなりマイナーですが、この建物はグーギー建築という当時、ロサンゼルスを中心に流行した装飾過多な建築様式の代表格として有名です。




実を言うと、大学3年生の頃この"グーギー建築"についてレポートを書いた事があるので実物を見たときは感動を覚えました。当時は、ハリウッド映画が好きで、よく映画に出てくる奇抜な建物は何なのだろうという単純な興味しかなかったのですが
今回、このブログを書くために改めてグーギー建築を調べ、当時気付かなかった発見や面白さがあったので書きたいと思いました。




グーギー建築の由来

グーギー建築は 1949年にロサンゼルスで John Lautner(1911-1994)が 設計したグーギーズというコーヒーショップに由来しています。ちなみにJohn Lautnerの建築はハリウッド映画に何度か登場しています。帝国ホテルを設計したフランクロイドライトの事務所にいたことでも有名です。

Googies(1949) by John Lautner


グーギー建築の定義

グーギー建築はその形態の多様さから定義しにくいのですが Googie Redux: Ultramodern Roadside Architectur(著 Alan Hess)では、いくつかの特徴を持っていると記されています。

1ブーメラン形状の屋根

2大きく覆われた屋根

3 建物から張り出した鉄製の梁

4 大きく全面に飛び出し た屋根

5空飛ぶ円盤のような形態

6外部から内部を見 渡せるような大きなガラス面

7原子モデルのような形態

 8アメーバ状の形態




また建築批評家の Douglas Haskell(1899-1979)はグーギー建築とはいくつかの決まりがある と以下のように定義しています。

1は有機的な形態

2重力を無視した形態

3ミニマリズムとは対照的な多 種多様な素材,石材、ガラスブロック、合板、プラス チックなどを使用した建築


というように、定義は曖昧です。簡単に定義すると建築が車からでも分かりやすいような奇抜な形態をとるようになったという事だと思います。

グーギー建築が流行し始めた 1940 年代は、第二次世界大戦 が終わりモータリゼーションが生活圏を郊外に押し広げていきました。街中にあるレストランは郊外化に対応するた めにファミリーレストランとして郊外に分散しました。また、これらの建築では顧客を取るためグーギー建築の特徴でもある派手な看板や今までにないような斬新な幾何学、外部から内部が見渡せるようなガラス面を使用しました。このデザインは当時アメリカが原子力、宇宙旅行に熱心だったという社会の流れに影響を受けています。




グーギー建築? 装飾された小屋?

グーギー建築の魅力は何と言ってもその形態にあると思います。実は、大学時代のレポートではあっさりとしか調べなかったのでその面白さに対して自覚的ではありませんでした。その授業の先生からはグーギー建築の構造に着目すれば面白いレポートだったかもねというアドバイスを貰いましたが当時はサッパリでした。

グーギー建築は目立たせるために誇張された形態になっています。一方で、同じ目的で看板だけが誇張された建築もあります(建築形態としては普通)

この看板だけが誇張された建築に着目したのが建築家のロバートヴェンチューリ(1925-2018)です。彼はラスベガスを調査し、高速道路沿いに立つビックサイネージに新しい空間秩序を見出だします。つまり、看板は顧客を引き付けるために自立し、建築は建築として存在しているという事です。

自著のラスベガス(1972)で、"あひるの形をした建築=彫刻になりかけている建築"と"装飾された小屋=建築は建築として存在しそこに無理なく装飾が付けられている"を比較し、近代建築の批判をします。ここで少しややこしいのがヴェンチューリは単に"あひるの形をした建築"を批判している訳ではない事です。

ヴェンチューリは近代建築は機能主義を掲げ装飾を排除した結果、どの建築もホワイトボックス化(無装飾だか建築造形、空間の追及)してしまった、つまり、装飾を排除しようとした結果、近代建築という存在を1つの装飾としてしまったと指摘しています。その点で近代建築とあひる型の建築は同じとしているのです。

このややこしさがグーギー建築を捉えにくくしているのだと思います。グーギー建築はこのヴェンチューリの分類で言うと"あひるの形をした建築"にあたります。それは建築の構造自体が広告的機能を持つからです。あひるの形をした建築はただの彫刻である一方で、グーギー建築は建築のエレメントに広告的機能を上手く組み込んだ建築とも言えるのではないでしょうか。

このように捉えると、先生にアドバイスされたグーギー建築の構造に着目するというのはとても良い着眼点だったことがわかります。

グーギー建築は1980年以降、下火になります。ポストモダニズム全盛の時代へと移行するからです。つまり、お金のかかるグーギー建築よりも、安価ですむポストモダニズム建築が重用されたという事です。一方でこのグーギー建築は次代のロサンゼルスの建築のoriginなのではないかと僕は思っています。

それについてはその2で書きたいと思っています。

その2へ続く

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