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3000万人の訪日観光客へのおもてなしをリデザイン! 【Re:Design Workshop オーバーツーリズム編 イベントレポート】

海外からの観光客があふれ、ゴミや騒音、渋滞などの問題が観光地を襲う。そして、観光地自体の魅力がどんどん低下していく。このような状態のことを「オーバーツーリズム」と呼び、世界各地で深刻な問題をもたらしています。

日本でも、将来的に発生する可能性のあるオーバーツーリズム。どのような対応を取ることが出来るのか、オーバーツーリズムを起こさないためにはどうすればいいのかーー。

2019年9月22日、訪日観光をめぐる状況を把握し、解決に導くためのワークショップ【Re:Design Workshop オーバーツーリズム編】が開催されました。
その内容についてレポートしていきます。


■訪日観光をめぐる状況


▼人口減少・少子高齢化の推移・予測

人口減少が進んでいる日本。2052年には日本の人口は1億人程度になり、その後も減少し続けると予測されています。2065年には総人口が約30%減少し、生産年齢人口が約40%減少する見通しに。


▼観光交流人口増大の経済効果(2017年)

国は、減少した人口分の消費額を訪日外国人で補うため、観光に力を入れる方針を立てています。

定住人口1人あたりの年間消費額「125万円」を、旅行者の消費に換算すると、外国人旅行者8人分になります。


ちなみに、宿泊する国内旅行者に換算すると25人分、日帰りの国内旅行者に換算すると81人分。国内旅行者を対象にすると、外国人旅行者よりもはるかに多くの人数が必要になるのです。

訪日外国人の国を見てみると、上位を占めているのが、中国や韓国、台湾などのアジア圏。外国人旅行者の70%以上を占めています。


アジア圏の訪日外国人旅行者は5泊ほどする場合が多く、いわゆる「爆買い」で商品を大量購入しています。過去には「家電の爆買い」が話題になりましたが、今増えているのはドラックストアで薬などを大量購入するパターンです。

欧米からの旅行者の割合はアジア圏と比べて少ないですが、13泊ほどと長期滞在する旅行者が多いのが特徴です。


▼訪日外国人旅行消費額(2018年)

2018年の訪日外国人旅行消費額は、4兆5,064億円と過去最高になりました。2012年以降、7年連続で前年と比べて増加を記録しています。

このような結果から、日本政府は「訪日外国人旅行者数」「訪日外国人旅行消費額」といった数字の増加を目標設定し、訪日外国人の観光に注力しているのです。


▼都道府県別日本人・外国人延べ宿泊者数(2018年)

都道府県別の宿泊者数を見てみると、日本人・外国人ともに、TOP3は東京都・大阪府・北海道という結果でした。外国人に絞った宿泊者数を見てみると、島根県や高知県といった地域の宿泊者数とTOP3を比べたとき、大きな差が開いているのがわかります。

数が多い地域と少ない地域の差を埋めるため、国は地方の文化財などをPRして、観光地化することを支援しています。


▼持続可能な観光の推進にかかる、各地域における諸課題

旅行者が増える一方で問題になっているのが、マナートラブルや地域住民への影響です。立ち入り禁止の場所に入ってしまったり、ゴミがポイ捨てされていたり。文化の違いなどもあり、一筋縄では解決できない問題になっています。

また、交通機関が人数に対応できず、地域住民が公共交通機関を利用できない事態も起きています。


▼海外におけるオーバーツーリズムの状況

バルセロナやヴェネツィアなど、海外の観光地ではすでにオーバーツーリズムの問題が発生しています。

バルセロナでは、世論調査における市民が考える社会問題で、「失業率」を上回り「観光」が1位になりました。過度な混雑や景観破壊などの問題が浮上し、観光客と市民との間に摩擦が生じています。

ヴェネツィアでは、クルーズ船によってもたらされる景観破壊などの問題を解決するため、市民によって乗入れ制限を求めるデモが起こりました。また、観光客が増えたことで地価が高騰し、市民が退去せざるをえない状況になり、人口が激減しています。

近い将来、日本もこのような問題が発生する恐れがあるのです。


■オーバーツーリズムを解決するためのアイデアソン

日本を脅かしているオーバーツーリズム。その問題を解決するために、未然に防ぐために、どのような施策をとればいいのでしょうか?

そこで、チームに分かれ、オーバーツーリズムを解決するアイデアを出し合いました。


▼1チーム目:ゴミ拾いをして芸術作品を作る

1チーム目は、拾ったゴミで芸術作品を作り、イベントを開催するというアイデアでした。

忍者や侍などの服装したスタッフがカゴを背負い、観光客に自らゴミを入れてもらうようにします。そして、集まったゴミを使って芸術作品を作り、その作品を展示するイベントを開催。ゴミをカゴに入れた観光客は、お得に参加できるというイベントです。


▼2チーム目:ダイナミックプライシングを導入する

2チーム目は、ダイナミックプライシングのサービスを提供する案でした。ダイナミックプライシングとは、需要と供給にあわせて商品やサービスの価格を変動させる値付けのこと。

ダイナミックプライシングを導入した支払いシステムを、観光スポットに提供します。神社や寺の料金を、時期によって変動させることで、観光客を分散させることが目的です。


▼3チーム目は、地域ごとに通貨を作って相場を調整する

3チーム目は、地域ごとに通貨を作り、通貨の相場を調整して、地方に観光客を呼び込むアイデアでした。

東京都の通貨の価値が1だとしたら、島根県の通貨の価値が100になるように相場を調整するイメージ。日本国内にも、専用の通貨を作っている地域はすでにあるという指摘
もありました。


■オーバーツーリズムは新しいビジネスのチャンス

減少した人口の分の消費額を訪日外国人で補うため、訪日外国人の観光を重視している日本。今後、さらに外国人を呼び込むにあたり「オーバーツーリズム」の問題は無視できません。

今日本を脅かしているオーバーツーリズムですが、逆に考えると、新しいビジネスのチャンスでもあります。どんな策であれば、日本観光を楽しんでもらいながら、マナーを守ってもらえるのか。解決の糸口となるアイデアを出し、新しいビジネスにつなげてみてはいかがでしょうか?

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