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焼き芋と焼き芋、そして甘ったるいバター!


そ、それは私の焼き芋だあ!
なんて叫んでいた。一昨年くらいまでは。


柿畑だらけのこちら長野は、枯葉がすごい。それを集めていたら文句を言う人なんていない。そして集めている人は、結構いる。みんな、芋と餅が焼きたいのだ。


私が知っている限りでは、長野で焼き芋をするといったら、必ず餅がついてくる。子供会の焼き芋大会も、老人ホームの焼き芋大会も、マラソン大会後の焼き芋大会も、必ず芋と餅だ。なぜかはわからない。


みんな、皿を持っている。紙皿に、バターとザラメを溶かして煮たものを入れて、今か今かと待っているのだ。出来上がった芋と餅をどこにどぼんと漬け込む。口の周りをテカテカにしながら食べる。


私はその風習を知ったとき(おそらく大学生の頃)、うへえ!真似したい真似したい、といって、すぐに庭に枯葉の山を作ったものだ。


今となっては、それはできない。理由は、環境保全のためとかいって焚き火が禁止になってしまったからだ。草葉を焼きたい農家の人は、消防署に申請して年に数回やるみたいだけれど、素人は許されないことになった。


くやしいけどまあ、環境は大事。でも、焼き芋も大事!


でもね。奥の手があるのだ。
焚き火をするのは禁止されていても、焼肉は禁止されてない。


往生際の悪いわたしは、七輪で芋と餅を焼くことにした。ホイルにしっかり包んで、薪のなかに差し込む。熾でゆっくりと、じっくりと。


火が通ったサツマイモは、橙色で、本当はザラメなんていらないほど甘いんだけれど、甘ければ甘い方がいいって言うのは、世の常じゃないですか。


サツマイモと餅を、ベトベトになりながら交互に食べていると、これほどに幸せな季節はないと思える。うまい。


餅をのびーーっとしていると、面白い形のアルミホイルが出てきた。夫が、じゃがいもを包んで放り込んでいたのだ。さすがはじゃがいも大国出身の方。じゃがバターか、はたまたオリーブオイルに岩塩か、なんて思っていると、フォークでぐちゃぐちゃに潰し始めた。


そこに、たっぷりのマヨネーズと明太子、醤油を上からたらり。


湯気が上がる、即席ポテサラの出来上がりだ。う、うまそう・・!
わたしも真似しよう、とじゃがいもを潰す。マヨネーズと明太子。醤油はどこだ、どこだ。


すると夫はまたじゃがいもを潰して、今度はオリーブオイルをかけた。かりかりに焼いた小イワシを乗せ、塩とレモンでさっぱりと。う、うまそう・・!


わたしも小イワシを乗せていると、また何やら始めるから、いちいち先をいかれるのに腹が立って、ちょっとストップ、なんて言った。次はシーチキンマヨに、ねぎばか(ばかみたいにねぎをかけることを「ねぎばか」という)だと言うので、慌てた。


さあ、そろそろ腹も満たされてきたな、と言うとき、なんだかソースのいい匂いがする。振り向いたら、母が七輪の熾で焼きそばを焼き始めた。え、焼きそばやるの。早く言ってよ・・・。といっていると


ああ!


とばあちゃんが叫ぶので、何かと思ったら素手で焼きたてのアルミホイルの塊を取り出した。

やりすぎたー


と言ってホイルから出てきたのは、くたくたバナナ。ばあちゃんはバナナに砂糖をまぶしたものを焼いたらしい。きれいにとろとろに焼けていて、それをホットケーキにのせて食べていた。


いいもんねー、わたしには焼きそばがあるからね。なんていいながら、わたしも何か、アイデアを出したいぜ!なんて悔しがった。





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