「完結させる」ということ
唇が乾き、肌は粉吹き、
一歩外へ踏み出せば白銀のカーペット――
気が付けば4度目のこの季節を迎えた。
今年まだ雪積もってないけど。
イヤ、異常だと思います。
三年前の11月30日ころ、私は自動車免許の学科試験を受けに
手稲市の運転免許試験場を訪れていましたが、
世界は真っ白でしたよ。確か。ええ。
それが今年はこんなにも土。アスファルト。
そして——
銀杏。くせえ。
どちらにせよ4度目の年の瀬を迎えていることに違いはありませんが。
まだ年賀状書いてないや、やばい。
私は今大学4年になり卒業研究に追われているわけでして、
何ならこんなnote書いてる暇なんてないんですけど、
まあさっきまでApexしてたし、誤差ですね。7次くらいまで開けば無視できます。
$$
f(x)=\sum_{n=0}^7\frac{1}{n!}\left.\frac{{\rm d}^nf(x)}{{\rm d}x^n}\right|_{x=0}x^n+\mathcal{O}(x^8)
$$
エ?前置きが長いって?よく言われます。
本日は皆様にお伝えしなければならないことがあります。
私は初めて1つの作品を完成させました。
ことは今年の2月頃に遡ります。
進路に迷走し就活
2021年2月、学部3年の全授業が終了して研究室も決まり(確か)、
さて学部4年へと視点を移したらとんでもないことに気付きます。
「卒業した後どうしよう」
別に大学院が嫌だったわけでも就職が嫌だったわけでもなく、ただ単純に自分の未来像が思い描けてませんでした。
で、詳細は割愛しますが就活を取り敢えずすることに。
自分を客観的に見て自己分析をするうちに、またまたとんでもないことに気付きます。
あれ?俺、実績なくね?
ハイ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
終わった~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
コイツ大学入って3年間で何の実績も生んでいない。
業界用語ではガクチカと言うらしいですが、そう言うものが一切ない。
死。
昔から絵を描くことが趣味でしたが、別に金をとる気も無かったし一枚絵しか描かないしバズったことないし、そもそも――
――そもそも世間的に見て、絵描きってただ遊んでるだけみたいなイメージ出ますからね、作品が伴わない場合。ウッ
私は絵を描くというのは素晴らしいことだと思います。フンス。
ですがあまりにも実績として小さすぎたし、それ以外に何の実績も生んでいなかった私は焦りました。
「なにかデカいものを完成させなければならない」
他に作れるものもないので…
とは言ったものの私は不器用の典型で、
別に何か突出しているものもない。
強いて言うなら絵が描けるくらい。今自己肯定感よしよししてます。ヨシヨシ
で、ふと思い出したのです。
私は今まで、絵しか完成させたことがなかった。
頭の中で設定やストーリーを組み立て、漫画や小説をやってみようと腰を上げ、その度に疲れて、あるいはめんどくさくなって、先が見えなくて、失踪していたことを。
そして就活をしながら思いました。
「もし就職したら、きっと何かを完成させる時間は無くなってしまう」
「今何が何でもやり遂げるしかない」
そして何月か忘れましたが多分3月とかそこら、
一つのプロジェクトを勝手に立ち上げました。
読切漫画を一本完成させる
これは私の夢を叶え、無念を晴らし、後悔を無くすための「漫画を完成させる」という実績と、
先が見えなかったり終わりが明確じゃないと絶対にやる気をなくすという経験から「ゴールは明確かつハードルは低めに」という方針、
そして私の技量を自己評価しての目標。
苦肉の策と言ってもいい。
テーマ決めの心境はイマイチ覚えてないですが、恐らく当時のコロナ禍情勢、ふと耳にした「自殺者が増えている」という時事ネタ、そして育ての親たるBLEACHの世界観、自分の状況(就活)とかを一通り煮詰めたんだと思います。
予想以上に長くなった
私の文章を読んでいると分かると思いますが、
文章が冗長になりがちな私の思考回路は
漫画のストーリーや展開にも如実に現れました。
長い。71ページて。
ネームを描き上げてページ数が71ページにもなっているのを見て目を疑いました。ヘタクソ。話を作るのがヘタクソ。
まあ個人的な信念と言いますか、持論と言いますか、あれ、なんて言うんだっけこういうの……語彙力無いのバレちゃう……
「展開はできるだけ自然に」
別に世の読切を批判する意図は全くないのですが、「凡人が非日常に巻き込まれる」系の話を読切でやろうとすると、起承転結にかけられる時間(ページ数)が少ないせいで「起」から「承」の間がすごくスピーディになって不自然になりがちです。そこを上手く違和感なく作ることが出来るかどうかがストーリー構成力の見せ所と言う感じになるわけですが…
しかも今回は一部自己投影があったのもあり、主人公が熱血系と言うよりは怠惰系、陽キャと言うよりは陰キャ、脳筋というよりは全身が脳なタイプ。無惨様より脳の比率多い。ちょっとやそっとのことじゃ日常を捨ててくれません。
なのでそいつを引きずり出すのにめちゃめちゃページを食った。
しかもペン入れから背景、トーン、ベタ、文字まで全部自分でやるしかない。背景に関しては一部でBlenderを使って楽しましたが、一枚描き上げるのに、コマ数の少ないページで3時間、後半は構成を大幅に変えたこともあって6時間とかザラにかけてました。
それでも一枚描くごとに思い描いていたページが出来上がっていくのを見るのは気分がよかった。
完成、そして公開
当初の予定では前期が終わるまでに描き上げる予定が、伸びに伸びて最終的には11月30日に完成というザマ。しかし完成させたときの感情は忘れられない。
いままでいくつかの作品の完結は見てきたつもりで、STAR WARSにしろハリポタにしろBLEACHにしろ、受け手側としての完結の感情は知ってたつもりでしたが、創作者側のそれは初体験でした。
私がもともとめんどくさがり屋で飽き性というのもあって、「もうこれで続きを描かなくて済む」という感情は無かったと言ったら嘘になります。
ただ「これでもうこの話を描くことはないんだな」という複雑な気持ちを持ちました。
あと、これはいま文章にしながら気付いたことですが、物語の続きを頭の中で想像/創造することがなくなりました。
私はこの読切の前にも未完成で失踪している作品が2つほどあったのですが、今回の読切も含めて、結構な設定を練っています。ですが前の2作品と比較して、追加の設定を考えてウハウハする時間は明らかに少なくなった気がします。
これも私の中で「完結」という認識が意識的にしろ無意識的にしろあるからなんでしょうかね…
なにか少し寂しい気分もあります。
ただ、自分が今まで完成させられなかった「物語」を1つ、短く拙いものではあっても完結させられたというのは、個人的にはすごく満足がいっています。
おわりに
長々とお付き合いいただきありがとうございました。
私はBLEACHに出会ってから、設定の練り込まれた長編漫画に憧れが強く、いずれは自分も、商業誌でなくとも一つ完成させたい、という謂わば夢がありました。多分。だからこそこれだけ満足いってるのかもしれません。
ただ、私が今回達成したのは、漫画である以前に、一つものを完成させたという事実以前に、恐らくは「今までどうしても達成できなかったこと」という側面が強かったと思います。
失踪を繰り返し、頭の中だけで話がどんどん膨らむ。
膨らむ分には楽しいですが、どこかその裏で「でも俺にはこの素晴らしい(当社比)叙事詩をみんなにお裾分けできるだけの技量がない」という自己嫌悪が産まれていたのもまた事実でしょう。
自己啓発本みたいなことを言いますが、今回読切漫画を完成させるにあたって「俺はもう一つ作品を世に送り出したぞ」という、よく言えば自信、悪く言えば傲慢を得ました。これからはこの傲慢ちゃんをかわいがって、公の場で暴れ出さないようにしっかり躾て、家では思う存分はしゃがせてやろうと思います。
重ねて、長々と失礼しました。
宣伝はあまり好きではないのですが、よければ私の最初で最後の完結作「黒袈裟日誌」を、どうぞよしなに。
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