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出会い系アプリ x 黒猫彼氏

「最近、出会い系アプリはしてないの?」

と言われたのが1年半前。この発言をした人は、当時「友達以上恋人未満」みたいな関係の人でした。

彼は私が当時唯一安心して懐に潜り込める人でした。しかし彼氏ではなかったのです。微妙な関係だったけど、ある意味安定した関係ー2020年から二年間ほど、週1回~月1回、お互いの都合がつけば会って一緒に過ごすという関係を続けていて。出会ったのはコロナのロックダウン前、2019年秋。昨今の流行に漏れず、デートアプリ経由で会いました。

この彼と会うことになるずっと前、私が30代だった頃、元パートナーと付き合っていた時には、この人と一生一緒にいることになるんだろうな、そうだといいなと思っていたのに、10年もしないうちに別れることになるとは…人生ってわからない。

彼との最初の顔合わせで、私が西アフリカの国「ブルキナファソ」に触れたとき、「ああ、首都がワガドゥグのとこね」という返事が返ってきて驚いたのをよく覚えている。よくあの最貧国の一つに数えられる、産業もスーパースターも歴史も、何一つ突出したところの無い国を知ってるね!? と思ったら、NGO 関係者だった。納得。お互いに行ったことのある国を列挙していったら、負けた。NGOの人は、職種よっては世界中回ってたりするもんね。

NGO、特に若者支援を専門にしているだけあって、人権、ハラスメント、心療内科系に明るかった。人間関係の中で発生する暴力についても。それは私には非常にありがたかった。私の方が闇側に引っ張られても、この人は巻き込まれたりしない。安全圏から冷静に判断して助言をくれて、そして深入りしない。そういう人だった。一見すると冷たそうに見える対応だけど、それが正解だと思う。だから何となく安心していられた。

お互いに「恋人」という関係に求めるものが違ったから、長く続く関係ではないと割とすぐに分かったんだけど…何というか「都合が良かった」。会ってから、付かず離れずの関係が続いていた。それはコロナの所為もあると思う。2020年3月に完全ロックダウンに入ったカナダは同居している家族・同居人以外には会えなくなり、生活に必要最低限の業務以外は全て強制停止、公共のイベントも中止。

私は当時、救急動物病院勤務。職場の、私が所属する救急部門のみ「必要最低限の業務」とみなされ、営業継続。完全ロックダウン中に出勤できるだけでも、精神的にかなり助けられた。でも、それでもやっぱりロックダウンは辛い。孤立感を深めた、大勢の、特に一人暮らしカナダ人のメンタルがヤバくなり、ロックダウン開始後しばらくして、カナダ政府は「一人暮らしの場合に限り、特定の一個人(一家)に会いに行くことが出来る」という条件をつけた。これで最低限、恋人・親・子供に会うことはできるでしょう、何とか耐えてという配慮だったんだと思う。

私の家族は皆、日本。カナダでたった一人、しかも元パートナーは出て行っちゃって、その後に完全復活した訳でも無い私は、この時期かなりやられていた。当時の私の人間関係の中で唯一、プライベートな部分に半歩踏み込んでいるという相手が、この人だった。恋人にはならないけど、繋ぎにはなる。というか、あの状況で、会える人が彼しかいなかった。そうして中途半端な関係が続いていた。

2022年、冬至。コロナの規制が、ほぼほぼ解除されたカナダ。


そんなタイミングで、この人が冒頭の台詞を言ったのです。獣医師免許も取ったし、仕事も決まったし、そろそろ相手探さないの?って事だと思われます。言われて別に腹立たしくはなく、まあそういう人だよね、と納得。私達の状況的に、それが正解。都合のいいセフレ扱いでキープしようと思えば出来るのに、貴方はそれをしない。私は以前にそうしようとした屑男を知ってる。だから余計、この人は信用できると思うのかな。搾取しようとはしない。自覚がないままに搾取するようなこともしない。

それからスマートフォンの隅に追いやられていた出会い系アプリを引っ張り出し、忘却の彼方のパスワードを再設定して、男性陣のプロフィールを拝見すること2週間。数人とメッセージのやり取りをするものの、早々に疲れて撤退を決定、其れでも何とか2人と顔合せをしてみた。うち1人は速攻で消え、残ったもう片方が現在の彼氏。タイトルが「黒猫彼氏」になっているのは、彼の肌がダークチョコレート色なため。

現時点で付き合って1年半くらい。いつまで続くんだろうと思う。私の中で「添い遂げる」感覚というのは既に持ち合わせていない。一緒に住んでもいないし、住む予定もない。お互いに生活があり、かつ昨今の賃貸事情を加味すると、一緒に住むメリットが少なすぎ、上手くいかなかった時のデメリットが大きすぎる。

でも、歴々の彼氏の中では、一緒にいて一番楽かな。
今のところはそれだけで十分。

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