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アスレジャーとファストファッションについての考察 ロンドン百花


バーゲンの季節である。ロックダウン中だけどとりあえずバーゲンだ。今年は各ブランド春夏がはけなかったから、それもまとめてバーゲンだ。店員さんも今までひまこいていて、いきなり店番やらされて、変なテンションの人が多いから、レジで一声「もうちょっとまけてよ」といえば、まかるかもしれない。

昔はバーゲンは1月1日、および7月1日解禁という感じだったが、だんだん早まってきた感じがする。5月末あたりから各社、値引きラックを作って、売れ残りはそこへもっていく感じだ。

洋服が売れないといわれて久しい。どのブランドも大苦戦している。倒産のお話も多い。私が好きだったというか毎シーズンは買わなかったけど、よく見ていたブランド「Monsoon」(フォークロア調もしくはちょっとアンティーク調の服が多かった。)もロックダウン中に監査に入り、倒産という運びになった。「ローラアシュレイ」も「キャスキッドソン」もロックダウン中に倒産した。(キャスは店舗は開いているようですが)

個人的に洋服が売れない、にとどめを指したのはアスレジャールックの流行だと思っている。アスレティックとレジャーの混合語で、造語である。(かばん語っていうのかしら?Brexitと同じような感じ。)運動するときに身に着ける服だけど、街歩きにも対応できる、という服である。レギンス、スポーツブラがついたタイトなトップス、それにパーカーを羽織って足元はナイキのエアフォース1かフィラの厚底靴もしくはニューバランスやアシックスのランニングシューズ、という恰好が街を席巻した。UKで人気ブランドはルルレモン、スウェッティベティ、あとはナイキ、アディダス、フィラ当たりなのでしょうか。

朝の通勤電車はそんな服を着て、リュックを背負ったお姉さんばっかりである。朝、ジムで運動してから、会社で着替えて、仕事に入る。夕方もまたジム服着て帰る。夕方はジムに行く人もいれば、子供のお迎えなどにも行く人もいる。会社にオフィス用の服は置いておく。会社用の服はワンピースが主で、机の下においてあるハイヒールを履いて、それからお仕事。

脱ぎ着の楽でアイロンのいらないワンピースが主で、冬はそれにジャケットやカーディガンを羽織ってタイツはいて終わり。

若い女性は毎日ほどんとアスレジャールックで学校へ行き、アルバイトもそれで、そして、デートや夜遊びもそんな恰好の人が多い。

改まった服はいらないのである。ちょっと前まで若い子はスキニージーンズが多かったが、最近はみんなお尻の形がはっきり出るようなレギンスの子が増えた。それにスポーツブラらしきものを着てルーズなTシャツあたりを上に来て終わり。

体の線がはっきり見えることは見えるがうまく、隠れているようなファッションでもある。ウェストはトップスで隠すことができるし、お尻も長めのトップスを羽織ればごまかせる。お高めのブランドになると、レギンスでもそれなりにスタイルがよく見せてくれるシルエットのものが多い。洗濯が楽で伸縮性があり、とにかく着ていて心地よく、動きやすい。手入れも必要なし。そういう楽さ+アクティブな自分に気分をアゲてくれそうな服が今は人気があるようである。私もなんとはなしに、ニューバランスでキュロットスカートを買ってしまった。ガンガン洗濯できるし、簡単な運動もできるし、街歩きもできる。本当に楽である。

男性には非常に評判がいい、ファッションである。「体の線がはっきり見えるのがいいね」「元気で明るく健康的でいいじゃないか、それが一番だよ」という感じ。

しかし、だ、これがはやってしまうと洋服は売れないのである。(あと個人的にこういう服が私は好きでないので、困るというのもある。)

普通のオフィスで着るような洋服も売れなくなって久しい。日本でいうところのアナイ、ロペ、ナチュラルビューティーといった、ちょっとエレガントなOLさんが着てそうな服や、日本の雑誌「Story」「マリソル」「Very」当たりに出てきそうな服屋は勢いがないといういか、店舗すら見つけるのが難しい状態だったりする。

オフィスで着る服にはお金をかけたくないという考えがこの国にはあるらしく、この手の服はファストファッションもしくはファストファッション系のお姉さんブランド(「COS」など、このブランドは「H&M」と同じ資本のブランドであり、どちらかというとジェンダーフリーでオフィスにもカジュアルにも着回しができるような服を提案している。お値段はファストファッションよりは高めだが、セール時などの値引き率はすごい。「Massimo Dutti」これはZARA系列。60年代のヨーロッパのお金持ちや女優さんが着ていそうな映画から出てきたような大人っぽい服が多い。お値段はそこそこなので、衝動買いしてもいいくらいのお値段。ただし、両ブランドとも仕立て及び素材はそこまでよくない。)で済ませるもしくは、大昔に買ったそこそこいい服をそのまま着続ける、という人も少なくない。(最近はユニクロもこのラインに乗ってるような気がする。)

だから洋服はアスレジャーがオフィスの服、2種類しかない人達を結構知っている。他、何かで服を買いたいとか、気分を変えたい、パーティーなどに行く、となると皆さんだいたい「ZARA」「Vershuka」「H&M」で派手な服買って終わりである。

他、ファストファッションで人気なのが、「Next」「GAP」イギリスのスーパーマーケットチェーン「Marks &Spencer」あたり、ちょっと流行から距離を置いたファストファッション系(比較的年配の人が多い。)ちょっと前まであったゆるいアメカジ風カジュアルファッションブランド「Fat face」(かわいい服多いけど、お仕立ての割にちょっとお値段は強気)あたりになるのか。イギリス、割にブランドのレンジは狭い。この辺を好んで着る人は流行を追うタイプではないので、アスレジャーもあまり着ないのかな。ただし、「ときめきますか?」と言われるとそういう類の服ではないような気がする。買っている方も「お洋服大好き」というタイプではなく、「こざっぱりとした、清潔な」を心がけているタイプが多いような気がする。

ファストファッションは7回着てポイされるという記事を読んだことがある。当たっていると思う。飽きたら捨てるもしくは寄付する。イギリスにはあちこちにチャリティショップがあるから飽きたらそこへもっていく。チャリティショップはきれいな服はそのまま店でキープして売る準備(洗濯など)をする。そうでない場合は東欧の洗濯工場でまとめて洗濯して、アフリカの業者などに持っていく。アフリカに行くと何年か前のファストファッションの洋服をみんな着ているという。が、今はそれも飽和状態で、行先に困っているという記事も読んだことがある。

まともな服作りをしているブランドやちょっと前の価値観で服を作っているブランドはあっという間に置いてきぼり、売れない→倒産の一直線なのである。

だいたいまともな素材、仕立てのいい服などを探すと、どのブランドもお値段設定が3ケタ超えてしまう。100ポンドというと今のレートだと15000円くらいになるが、やはり100ポンド超える服を買うのは勇気がいるものである。が、仕立てのいいものに投資となると、100ポンドは最低水域になる。

ファストファッションだと4枚くらいのお値段?になるか。庶民だと思い切りのいる値段である。というか、最近思うに、庶民が出入りする場所に高い服を置かなくなった。ショッピングモールなどもファストファッションがほとんどで、デパートにも紳士服及び婦人服売り場があることはあるが、値段も抑え気味である。だいたい、デパートで服を買う人は今、ほとんどいないし。(デパートらしいデパートでそれなりの値段になるが、ちゃんとした服で庶民にもギリギリ手を出せる服を売っているデパートはジョンルイスですかね。ここのお洋服セクションはそれなりに面白い。)

となるといい服、ちゃんとした服が欲しいとなると、ロンドンのお金持ちがいるエリアの商店街に行くしかない。ロンドンだとメイフェア、リッチモンド、ソーホー、ノッティングヒル、ハンプステッド、リージェントストリート、紳士服だとジャーミンストリートなど。そういう場所でひっそりやっている店を見つけ、乗り込んでいくしかない。

マーガレットハウエルというブランドがある。これイギリスで2店舗あり、時々見に行くが目の玉が飛び出るほど高い。が、この店がある場所はロンドンでも屈指のお金持ちエリアであり、値段を見ないで服を買っている人をみかける。だいたいある程度年齢の行っている人がお客様である。しかし、そんな人以外は全く買い手のないブランドだと思われる。セール狙いでたまに見に行く。ある時にシャツを一枚購入した。そのときに「日本人でしょ」と店員に言われた。「うちの会社潰れかけたときに日本の会社が買ってくれたのよ。だから日本の会社なのよ」と言っていた。確かにこの店は「野田琺瑯」や「月星のスニーカー」がたまにおいてあるので、何かしら日本とコネクションがあるのだろうと思っていたが、そういうことでしたか。マッキントッシュも確か三洋がかなり絡んでいるという話を聞いたことがある。ここも「ポーターとダブルネームのリュック」とかおいてあるので。

ただ、この手のブランドが庶民にまで食い込んでいるかというとそうではない。イギリスでいいと思った服などに日本の資本が食い込んでいることが多かったり、イギリスで見て素敵と思ったものが、日本の雑誌ではかなり紹介されていて、主に買い支えしているのは、日本、もしくは日本の雑誌などを熱心に見ている中国や韓国の人、というのも聞いたことがある。

じゃあ、イギリス人のファッションって今どうなってんの?と思いますよね。キャサリン妃とかってどうなの?と。あの人のファッションは特例です。ミドルクラス、それも本当の上流に属したら別ですが、一般人は年に一回でもああいう恰好をする機会があるかどうか、です。だったら、ZARAで似たようなのを探せばいいのです。あの人だって最近は私たちが簡単に買えるブランドものを着ていることがあります。(ZARAがお好きなようですね。)パーティ-バッグは、クラッチバッグを持つ人が多いので、クラッチバッグだけ、ブランドアウトレットなどでブランドものを買って使ってる人が多いです。ヒールもパテント(人工皮革)の黒のエナメルなどを一足もってはきまわしです。

夢も希望もないよ、という話ですが、イギリス人という人種は夢も希望もない人達です。情緒的でなく、実際的です。フランス人の求めるフェミニティやイタリア人が好きなエレガンスはいらない、服にアイデンティティがあってもなくてもいいんです。今の時流に乗っていけて、洗濯が楽な服、動きやすければそれでいいんです。アスレジャーやファストファッションがはやるのも彼らの行動原理を突き詰めたからです。はやりものは安く楽しんでポイしたいし(ものを捨てるのに罪悪感とかあるのは困る)、一生ものの服なんてないんだから、人間飽きっぽいし、着替えや洋服の手入れはめんどくさい、ジムとかにはさっと行けて運動したい、とある種彼らの開き直りの本音に近いから売れていると思います。













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