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ハイストリートの小売業危機について

ロンドンにも数店舗ある無印良品を経営している、Muji Europe が昨日清算管理人を任命したというニュースが出た。

このニュースが出るとだいたい、まあ、お店は閉店、スタッフは解雇というのが常道のような気がする。今のところ通常営業だが、そのうち店舗はたぶん閉まるだろう。次の家賃を払うところまでは普段通りなのだろうが、そのうちお店はなくなる、はず。

誰かがお店の権利を引き取って、営業をそのままということであれば、お店は続くのかもしれないが、今のところわからない。どうなるかは不明だと思う。

一時期は飛ぶ鳥落とす勢いというか、2000年代あたりは本当に人気のあった店だと思ったし、ロンドンのどこかの店へ行くと必ず有名人が買い物しているお店でもあった。有名人といってもその辺のわーきゃーとなる人達ではなく、アーティストの誰々、ミュージシャンの誰々、ストリート系のファッションのモデルさん、とかそういう人達が平日の午前中などにMujiのレジに並んでペンだの透明のアクリルケースなどを買っていた。現に私もミュージシャンのxx(顔は思い出せるけど、名前出て来ない)が自分の目の前に並んでいて、かみさんらしき人と木のブロックでできているクローゼットにぶら下げることができる防虫剤みたいなのを買ってるのを見たことがある。

何かがあればよく立ち寄っていたが、最近なんとなく感じていたのは、お店に来て洋服やらインテリアものを買っていた人達がかなり高齢化というか、それなりにお年を召された方が多いな、ということ。若い子もいないでもないが、単価の安い文具ばっかり買ってるのを見て、なんとなく、うーんとなることも多かった。あと、食品がある時点を過ぎると極端に安売りになっているのに、誰も買わないのを見るのはつらかった。(もずくのフリーズドライのスープとかさ)

まあ、いろいろあるんだろうけど、何が原因でどうなったのかはよくわからない、が、とにかく近い将来イギリスやヨーロッパでは無地がなくなる可能性が非常に高くなっているということは間違いない。

(私も今いろいろ何を買い足しした方がいいのか、リストアップ中。)

とにかく、昨今、イギリスではこの手の小売りチェーン店の倒産やら清算、買収などの話がものすごい多い。

日本でも話題になっているのかどうかはわからないけど、ボディショップも清算管財人がついて、一部店舗を残して閉店ということになっている。うちの近所の店はまだ開いているが、これもわからないだろう。

元の創業者がロレアルに権利を売って、ロレアルがブラジルのファンドに権利を売って、そこからまた別の会社が買ってと、親会社が転々とし、今また別のオーナー会社を探しているという話で、不採算店舗や買収の邪魔になりそうな店舗はさっさと閉店し、買い手を待っている状況らしい。

ここも2000年代くらいまではそれなりにブランドパワーがあって、私も相当お世話になっていた。なぜかというと、最寄の駅にあったデパートがつぶれてしまい、デパートで買うようなコスメが買えない時は、ボディショップで替わりになりそうなコスメを買っていた。眉を描くパウダーとか足の裏用のミントがスースーするスクラブ石鹸などをよく買っていた。あと、人に何かしてもらったときのお礼などはほとんどここのグッズを買っていた。オレンジの香りのするボディーソープとスクラブのセットみたいなのや、ボディケア用品のセットなどもよく買っていた。が、そのうち、ボディショップでなく、競合他社になるのであろうロクシタンで買い物をすることが多くなり、いつの間にか行かなくなった。親会社が変わり、自然派に行きたいのかマスに行きたいのかがなんだかよくわからない立ち位置になってきて、私も最近は全然買い物に行っていなかった。

キャス・キッドソン、ここもつぶれてしまって、今は店舗はピカデリーサーカスに一応基幹店があるくらいで、他は店舗はみない。一応オンラインショップはあるらしく、そこで細々やっている感じか。ここも2000年代から10年くらいめちゃくちゃはやった。家の近所に創業2店目か3店目あたりの店があり、創業者を何回か目撃したことがある。お店の奥に壁紙用の生地や洋服用の生地がメーターで売っていたので、安売りの季節になるとよく買って、日本に送って母が家のクッションケースやら何やらを手作りしていた。オールドファッションな花柄のビニール加工のバッグやリュックが街にあふれており、土日や観光シーズンになると日本人、韓国人、中国人やらのアジア系の人がお店に駆け付け、イギリス土産を調達していた。一時期はお店の外まで人が並んでいた。コロナ禍でインバウンドの客が減り、売り上げが減ったというのと、売り上げが減少ということで、倒産し、一応ブランドは存続させるということで基幹店とオンラインだけ残ったという感じなのであろうか。とにかくはやったし、日本から来た友人みんなここに行きたがったので、相当の日本人を案内した自負はある。

ペーパーチェイス、カードやちょっとした高級文房具が売っているお店だった。日本のミドリやサンスターの文具も売っているのを見たし、アピカのノートなどもよく見た。ショッピングモールや駅前にある商店街などには必ずあるお店でまあ、ちょこちょこ買い物をしていた。カードなどはかなり種類も多くて、デザインもこじゃれてはいるが無難なものが多く、間違いがないという感じでよく買っていたが、ここも倒産した。結局、カード事業はスーパーマーケットチェーンのテスコが買収し、テスコでペーパーチェイスのカードなどが買えるようになっているが、お店自体はなくなっている。

お洋服ブランドのテッドベイカーも今月、破産申請しているという話。イギリスのブランドでどちらかというと紳士服強めのブランドである。正直、なんというか、洋服は独特のやくざっぽさがあるブランドで、ちょっとこちらの度肝を抜くような配色や柄の服が多かった。細身の茶色のピンストライプのジャケットだが裏地だショッキングピンク、とか、派手なガラの夏物の開襟シャツなどが印象に残っている。お値段はそれなりだが、ハイブランドほどではない。一時期、本当によくサッカー選手が着ていた。白人のちょっとワーキングクラスよりの選手、一時期みんなここの服着ていた。(今パッと着てそう、ってイメージが浮かぶ選手はスパーズのマディソン、シティのグリーリッシュあたり。まあ、今は昔と違ってみんなもっとワールドワイドのハイブランドの服着るようになりましたが。)独特に細身のシルエットにカラーリング、似合う人が着ればそれなりにカッコよく見えるブランドではあるとは思うが。(一時、私の連れがここのブランドのシャツにはまり何枚か買ったが、恐ろしいことにかなり長いこときてるが、色あせもなく、へたりもなく、何年たっても現役なのは恐れ入る。それなりにものは悪くなかった。)まあ、ここはデザインなどに影響力があった創業者が一度派手にセクハラスキャンダルを起こし、その人が退いてからいろいろあったみたいなので、不景気関係ないのかなとも思うが。

イギリスではかなり人気があったトップショップも倒産して、ブランドが消えてなくなった。

そして、なんとなくではあるが、私の生活に一番打撃のあった閉店した小売りチェーンはウィルコというチェーンである。

日本でいうところのホームセンターである。なんでも売っていた。布団から絨毯から掃除用品やらアイロンボードやら、ブルートゥースのやっすいスピーカーやらスマホの充電器やら、ハリボのお買い得セットやら、園芸用品、植木鉢にカー用品、ペンキにコーキング用のテープやらコピー用紙やら書き出すといろいろ出てくる。日本のホームセンターほどものは充実していないし、クオリティはどうかというところはあるが、お店はあちこちにあったし、夜遅くまでやっていることが多かったので、アマゾンで間に合わないような場合はウィルコで調達していた。アマゾンで注文するほどでもない場合や、なんとなく現物見た方がいい場合などはほぼここで済ませた。お店の人も感じ悪くなく、まあ、普通に使ってる店だった。

が、昨年ここも倒産し、倒産発表後、あっという間に店がなくなった。一応売り上げがよかった店やよい立地の店は期間限定でパウンドランド(イギリスの1ポンドショップ)が借り上げて、ウィルコの残った商品と自社商品との組み合わせの店をやっていた。

コロナ禍後に中堅のデパートだったハウスオブフレーザーがなくなり、デべナムもなくなった。そして小売りのお店チェーンがどんどんなくなり、今やほんと、お店がたくさんある通りに行ってもお店自体がなく、「リース募集中」などといった看板が下がっているお店ばっかりになってしまった。

何が悪いのかと言えば、まず、家賃高騰、だいたいうちの近所にある小売の小さな店も10年リースなどで店舗を借りているが、最近リースの契約が切れ、再契約できるほどもうかっていないから店をたたみますという店がなんと3軒出てきた。(チーズだけを専門に売るチーズ店、アンティークの家具屋、カレー屋、カレー屋は本当においしくてそれなりのお値段でいい店だったので今でもあそこのカレーが食べたくてしょうがない。チーズ屋はかなりカルト的な人気があり、なんとノッティンガムあたりから車で買い出しに来る常連がいたという。この店は家の近所に住んでいるオーナーの息子が家を改造して店をやることにした。)そして人件費、光熱費の高騰。戦争があり、物価自体が上がってしまい、皆さんの財布のひもが固くなり、消費も見込めない。もの自体は、やはり輸入などの場合、スエズ運河の閉鎖で船が迂回することになり、輸送費が上がってしまって、儲けが取れなくなっている。

あと、イギリス、相当インバウンドで中国人、ロシア人などにお金落としてもらっていた側面はあるんだよね。例えばだけど、老舗で有名な靴のお店など、せいぜい日本人なら一足か2足でギブアップだが、中国人なら一族郎党の分全部買っていくから一度に20足とか、そういう話はたくさん聞いた。今はご存じの通り、ロシアはああいうことがあり、ロシアの金持ちは大っぴらには買い物に来なくなり、中国人のインバウンドも前に比べれば相当減った。

ということがあり、正直、小売り業は今踏んだり蹴ったりである。もう一度よみがえることができるかというと、正直、不明。

正直、生き残れるのは大手、それもほんの一握りの大手しか生き残れないだろうと思う。もしくは圧倒的にブランド力があるブランドくらいしか。

正直、ここから2,3年ずっとこんなんだろうと思うし、なんとも言えない後味の悪い展開がずっと続くのだろうなあと思う。

自分の好きな人達と、過ごした街の風景がどんどん変わって行くのはいいのだが、悪い方に変わって行くのは結構悲しいよね。


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