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DUB WAR(フラワーマン14日間連続春のDUB祭り)

 さてわたしは両肺の肺炎及び心不全で入院しましたが、治療でステロイドや各種抗生物質をたくさんドーピングしたからか、はたまた41℃の体温と83%の血中酸素飽和度のせいだったのか、まず、病室の天井の照明や火災報知機やスピーカーやブリーズライン(空調吹き出し口)の位置がサイケデリックに動き回り始めました。
『見知らぬ、天井』なんて言ってる場合ではなく、昔のDVDデッキのデモ画面よろしく天井のいろんな物が部屋の端で跳ね返って縦横無尽。ブロック崩しゲームを彷彿とさせるこの現象はアルカノイドかアルカロイドのなせる業──これが幻・視・人か!DUB幻覚のDUB祭りです。

「一本松って知ってる?」

25年前、帰宅途中の車の中で先輩が話し始めました。夕暮れの環状八号線はユーラシア方面に左折したところでサイケデリックなライトショーと成り、片側一車線の人見街道は踏切渋滞で二進も三進もいかず。

「知りません。どっかの地名ですか?」
「いや違う。まず部屋を暗くしてタバコに火をつけるんだよ。そしてそれを伏せた茶碗の上に立てる。んでそれをじっと見つめながら──」
「はい」

「シンナーを吸う。」

それが一本松だそうです。
一本松の達人は、お茶碗山の向こうにブルブル震えながら沈んでゆく真っ赤な太陽を見、それをバックに雄々しく生ゆるアカマツの真っ直ぐで力強い幹を見ながら、タバコ一箱分一本松できるそうです。

「やっぱ一本松にはパーラメントが一番いい。長いので。」
そう言って笑う先輩(当時25歳)の前歯は上下共にありませんでした。

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さて、ところ変わって再びわたしの病室(肺炎のため個室)。深夜、頻繁に出入りする者ありき。ヘルメットを被った作業員だ。
「ベニヤ、持ってきました!」
「桟木(サンギ)、持ってきました!」

「ありがとう!全然急ぎじゃないからゆっくりでいいよ!」
作業は順調だったのでわたしは安全第一でゆったり作業してくれ、と作業員に指示を出しました。
すると、今度は看護師さんが入ってきました。
「大丈夫ですか?なんか大声だしてましたけどどうかしました?」
「大丈夫です。今週中に25階終わって26階行きます。」
と看護師さんと話しましたが結構大丈夫じゃなかったみたいで、意識が混濁してなんか自分が現場にいると思っていました。なんか心電図もその時一瞬ヤバい波形を描いていたようで、当直の先生も病室にかけつけました。先生と一緒に、かつて同じ現場で働いていて亡くなった8人の仲間たちもヘルメットを被って入ってきました。あぶねえ!
 さあ、狂熱の夜が明け、吸入する酸素の量もパワーアップしました。鼻からチューブで入れているのですが、なんか「アーーン、アン、アン、アン」という、自分の体から出ているのが信じられないセクシー・ボイスが鼻から出てきます。結構な音量です。
鼻の力を加減すると、「キャーー!キャーー!」と若い女性の矯声に変化させることもできるので、
「アン、アン、キャーー! アン、アン、キャーー!」
とクイーンの『We wil rock you』のリズムで何時間もずっと鼻を鳴らしていたら、悲しくなってきました──

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まあそんなこんなあったけど、先日無事に退院しました!皆様心配かけてすみません。家族にもすみません。結婚記念日(3月27日)もすっ飛んだし満開の桜を見にも連れていってあげられず我慢ばかりさせて申し訳ないです……。


DUBおわり







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