覚書き「刀法・前切り(英信流)」

正座にて、正対する相手に対し、第一刀目は柄頭を正中線に向けて、抜きながら立ちながら、横一文字に斬りつける。
正座は、背筋を伸ばし、両膝の間は緩く拳一つ分くらいで、右足親指が左足に乗っており、両手は、腿と股の付け根から少しだけ離れた位置、正面よりやや内側に向けて指先を真っ直ぐに揃え、脇が少し空いた状態にする。
目付けは、床下3m先を見る。
このとき、正中線に向けた刀に引っ張られるように、両膝を絞りながら爪立って、斬りつけると同時に右足を素直に正面に出す。
注意点として、まず、刀は右手ではなく左手で抜くということ。
その前段階として、左手は鍔に右手は柄に、下からそっと手を送って軽く握り、少し鞘を前に出しておいて、横一文字に抜くために鞘を持った左手は外側へ捻りながら後方へ押し上げていき、鞘で刀を抜く心持ちが肝要。
前に出した右足の角度は床に対して直角、斬りつけた右腕の高さは肩くらい、刀は床に平行で切っ先は真っ直ぐにする。
上体も天井から頭が吊り下がっているかのごとく垂直で、顔は正面を向いていること。
このとき、切っ先を外側に散らさない。
小指と薬指でしっかり握って止めること。
第二刀目は、斬りつけた刀を振り被り、真っ向から斬り下ろす。
斬りつけた刀を少し握り込んで刀を内側に入れ、左肩の上方を突くようにして、最短距離で刀を上に運ぶ。
左手は、右手が動くと同時に鞘を少し前に送ってから、真っ直ぐ上方へ持っていき柄を握る。
振りかぶったときの刀の角度は背中に対して45度で、柄は頭上から拳一つ分離れた位置にする。
左手を上に押し上げるように、刀を真っ直ぐに構える。
「エイ」の発声とともに斬り下ろす。
物打ちで斬るように、右手は前方へ投げる、左手は後方へ落とす、といったイメージで動かす。
斬り下ろしたときの鍔は右膝の線、右手の拳は右膝の高さにする。
背筋を真っ直ぐにして胸を張るが、肩が上がらないように注意し、顔も正面を向いた状態。
目付けは、1m半先の斬り倒した敵の位置にする。
横に血ぶる。
血ぶりは、反動をつけず、布を引き裂くように、斜め前方に切っ先を動かす。
刀と体との幅は半身ほど。
角度は、床と平行あるいは、やや切っ先下がり。
鍔は腰板の線、腰板の高さに揃える。
次に納刀する。
左手で鯉口を握って、鞘を少し後ろに引き、納刀しやすい角度に鯉口を向ける。
小指、薬指、中指の半分で鯉口を握り、人差し指と親指で鯉口を狭める。
手首を少し内側へ折って、刀を左側へ運ぶ。
刀の物打ち15cmくらいの位置で、棟を鯉口を握った左手に乗せる。
このとき、鍔はへその辺りに来ている。
刀を上下に揺らすことなく、右45度方向に真っ直ぐ前に出して、切っ先が鯉口に落ちたら鞘を持った左手で刀を納めていく。
刃の角度も45度で、納めていくにつれて刃が上になる。
注意点として、納刀時に鯉口を持った左手の指を立てたり動かしたりしないこと。
一文字納刀であるため、刀を上下左右に揺らさないこと。
納刀と同時に右足も納める。
納刀したときの鍔は正面、腹から拳二つ分の位置、尻と踵は若干の隙間がある。
最後に残心。
心の中で3つ唱える。
残心を忘れた居合は死物であり、八方心眼の心持ちで行う。
爪立って、右手をそっと動かし親指を柄頭にやる。
このとき、鍔ではなく柄頭を正面の位置にし、右足を前に出して立つ。
左手は鍔にかけたまま、右手は体の横に戻し、左足から小さく元の位置に戻る。

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