メルトという曲について

「メルト」という曲が好きです。ふと、実は世界でいちばん、この曲を愛してるのは私なのではないか、とすら思ったのでこの文章を書きます。

メルトとは、ryoさんが初音ミクをボーカルにして作った楽曲で、2007年にニコニコ動画にアップされ瞬く間に大ヒットした、いわゆるボーカロイドの名曲。ボーカロイド好きな人はみんな知ってるのではないかと思います。

2007年当時、私は中学……1年生だった。
しばらく考えこむほど時が経ったのを実感する。

パソコンとインターネットに寛容だった父親の影響で、当時の中学生にしては頻繁にパソコンを触っている子だった。
お絵かきと漫画も好きで、いわゆるオタク要素が強かったのでニコニコ動画の存在もその頃に知り、熱量の高い投稿をつまみ食いして楽しんでいたころ、ちょうど「みっくみくにしてやんよ」がアップされた。

なんだかよくわからないけど良い曲だな、と思いつつ初音ミクという存在をぼんやりと知る。
「粉雪」を歌わせてみたカバーとか、そういう今でいうレジェンド的な作品をふーんと思いながら再生していたころ、
ほどなくしてメルトが投稿された(正しくは、メルトを知ったきっかけはガゼルさんの「メルト 歌ってみた」だった)。

実際、メルトを聴いて雷に打たれたような衝撃を受けたとか、そういうことではなかった。
でも、どうしても機械性を帯びるはずの初音ミクの声がメルトはとっても自然で聴きやすかったこと、イントロからサビまで、どこをとってもキャッチーなメロディーなど、その頃メルトに出会ったニコニコ視聴者がきっとそうだったように、すぐに私の心を掴んで離さなかった。
そして実際に、初めて聴いた時から10年以上経った今でも、私はメルトに心を掴まれたままでずっと大事に聴いている。

まだニコニコにアップされただけで音源もなかったので、メルトを聴きたいときは毎回動画を再生した。
のちにryoさんが2007年の冬コミに出てメルトを売っていたいたことを知るが、新潟県住みのピュアな中学生はコミケの存在すらまだ知らない。

そして、オリジナルだけではなく、たくさんの人がしていた「歌ってみた」投稿を片っ端から聴きまくっていた。
iPodに「メルト」という名のプレイリストを作って聴くほどで、当時自覚はなかったけど、完全にメルトという楽曲の中毒になっており、その熱意がやや狂っていたとしみじみ感じる。

ガゼルさんはもちろん、うさ*さん、セリユさん、ヲタみんさん、ゴムさん、ジャス子さん、歌和サクラさん、miliaさん、などなど記憶をちょっと辿るだけでも歌い手の名前を覚えているくらい、メルトに関連したものはたくさん聴いた。有名じゃない人の歌ってみたも聴いたし、「演奏してみた」もよく聴いた。

時系列は前後するけれど、メルトが200万再生にいったとき、200万再生ありがとうということで、リミックス版のメルト2M MIXが出た。
リミックスという意味もよくわかっていなかったが、「mp3をzipで配布」という何とも時代を感じる配布方法でありがたくそれをゲットし、当時親から譲り受けたUSBタイプのウォークマンに入れてこちらも沢山聴いた。
カラオケ版までよく聴いていた気がする。その後、あまり時間を経ず「3M MIX」が出て、それがあのガゼルさんが歌を歌ったものと知ったときは興奮した。

こちらも同じようにウォークマンに入れ、飽きもせずずっと聴いていた。今思えば、現在のようにみんながみんなまず動画サイトで音楽を聴くような時代ではなかったときに、300万再生というのはどう考えても偉業だ。
音楽を聴きたければ、まだCDを借りるか買うかするのが当たり前だったから。それだけryoさん、supercellにはパワーがあったし、私みたいに熱中する人が本当に多かったのだと思う。
(※もちろんsupercellは今もすごい)

メルトの後も立て続けにryoさん、もといsupercellの新曲がニコニコ動画に投下され、満を辞して「supercell」というアルバムが出た。
これが自分で初めて買ったCDになった。もちろんコミケ版ではなく、ソニーから出た初回限定版のアートワーク付きの方。

元々はメルトが好きで、なんだかとても心底好きで、全然飽きなくて、ryoさんの作る曲すべてが好きになったころ、こちらのsupercellも滅茶苦茶聴き込んだ。
ryoさんが世に出した曲は全部チェックしていたし、全てフルで歌えるくらい再生していた。当時は全く意識してなかったけど、私はryoさんとsupercellの立派なオタクだった。

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supercell名義の楽曲まで話が及ぶと終わらない気がするので、メルトの話。

2007年に初めて聴いた時から、他のボーカロイドの曲や、アニメやバンドやJ-POPの曲まで広く聴くようになったのでメルトをしばらく聴かない時期はあるにしろ、それでも飽きたことはなかった。いわゆる中毒性がとてつもないのか、私との相性がすこぶるよかったのかわからないけど、例えばシャッフルで再生された時にこれはもういいやと飛ばしたくならないような、飽きない曲に私はまだメルト以外に出会っていない。

オタクロードを歩み始めた中学生は高校生になった。前述したように、「メルトを歌ってみた」だけでなく「メルトを演奏してみた」も要チェックやで状態だった私は、ティッシュ姫のベース演奏にもハマっていた。  
「ベース」という楽器についてもよくわからないのに、その頃入手したiPodに動画サイトから落とした「メルト ティッシュ姫バージョン」を入れてずっと聴いていた。

ベースラインが癖になった私は、安いバッカスのベースを買い、アンプに繋ぎもしないで、ひたすらティッシュ姫のTABを追いかけた。上手くできてるかは置いておいて、好きな曲を弾けるというのは純粋に楽しいんだというのを知った。
その後高校で入ったゆるゆるの軽音部ではメルトをバンドでコピーした。楽しかったな。やっていることは完全にニコニコのオタクだけど、青春だった。

そして2010年ごろ、アルバム「supercell」のトリビュートアルバムが出た。どうやって入手したかはっきり思い出せないけど、コミケに行くというネットの友人に買ってもらったような気がする。

メルトに関連するものはちゃんとチェックしておきたかったし、supercellも好きだから、当時、田舎の高校生なりにずっとインターネットから情報を得ていた。トリビュートアルバムのメルトは暴走Pがリミックスしたもので、これもまた初音ミクの暴走みがいい塩梅にでていて良いメルトだった。軽やかでキュートで、ちゃんとメルトらしくて気に入ってこれもよく聴いた。

思いだせば、着メロもこっそり購入したメルトだった。好きな人の着信だけメルトにしていた気がする。なんてかわいいんだ、JKの私。

カラオケにメルトも入った。好きな曲がカラオケで歌えるなんて嬉しい!と思って、自己満足だったけどカラオケに行くときは必ず歌っていた。こんなに聴きこんでいて、メルトに関しては音程は完全に理解しているのに、高音すぎるゆえ、サビでオエッとなるので悲しい。ボイトレにでも通って今からでもちゃんと歌えるようになりたいものだと思う。

その後、メルトに関する公式の更新はいったんストップしたが、2017年、メルト10周年ということで、再びガゼルさん(ていうか、nagiさんといったほうが正しい)がカバーしたメルト10周年バージョンがアップされた。もちろん、すぐiTunesストアで購入した。聴きなれた曲だったけど、久しぶりのnagiさんとsupercellのコラボはとっても嬉しかった。

メルトの魅力ってなんなんだろう。改めて考えたこともないくらい、自分にとって自然と生まれた「なんか好き」という感情だけでここまで聴いてきた曲なので、何がそんなにいいのと聞かれるとやや困ってしまう。

ただ、ryoさんの歌詞に共通することだが、メルトを筆頭に、ryoさんの書く曲は「普通なら恥ずかしくてこんなにストレートに表現しないのでは?!」と思うことが歌詞になる。秋元康って本当は女性なんじゃないかと思うのと同じで(?)、ryoさんって女子高生なの?って思ったことが度々ある。

「ピンクのスカート お花の髪飾り 今日の私は可愛いのよ」「君に心から思ってほしいの 可愛いって」「わかってる?私が君をどれだけ好きか」「ドキドキ止まらないheart beat 女の子女の子したいの」

……ちょっと考えただけでも、とてもアラサーになった今ではなかなか歌うのも恥ずかしいような歌詞がたくさん出てくる。褒めてます。でもそんな歌詞にツッコミと疑念を抱かせない、説得力のあるメロディーとサウンドがまずは魅力なのだと思う。作曲についての理論も何もわからないけど、メルトは、特にそれが秀でていたような気がする。だってあの、イントロがもう唯一無二。優しいハーモニーから始まる静かなAメロ、だんどんと盛り上がりをみせるBメロ、そして思わず挑戦したくなる音域で盛り上げるサビ。Dメロの後の長い間奏も素晴らしく、ピアノできっちりと聴かせる感じも、こだわってこだわって作られた珠玉の一曲といった感じがする。ryoさんはとにかく音にこだわるタイプの作曲者だそうなので、そういうこだわりが如実に評価に表れたのではとも思います。本当、音楽については詳しいことは知らんけどね。

そんな曲としての圧倒的なパワーをもってして、ryoさん独特の具体的で情景が浮かぶ歌詞を追いかけながら、視聴者は漫画を読んでいるように、曲の主人公である女の子の恋を応援してしまうのではないか。ryoさんの曲はどれも映像を観ているかのような体験をさせてくれるとしみじみ感じる。

神曲だなんてそんな一言で片付けたくないくらい、私の半生のかたわらにあった大事な曲だなぁというのを今日改めてふと思ったので、文章にしてみた。きづいたらこれを書くのに1時間半経っていた。

もう27歳の、いい歳になってきた大人ですが、これからも気恥ずかしくも心をくすぐられながら、沢山メルトを聴くのだと思います。



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