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Webサイトがなんと29,800円で作れます!という広告のからくりを読み解いてみる[発注者向け]

どうも、ベテラン組のはしあや(しぐさん)です。

あ、こちら、私が29,800円でWebサイト作りますよ!という広告ではありませんのであしからず(苦笑)。

また、騙されないで!という話でもありません。

田舎でお仕事しているからか、よく「ホームページ作れるんだって?うちのも頼みたいんだけどー」からの、内容と用途の確認を行ってから見積もり提示ーの、「高すぎるからやめる」の連鎖は非常に多いです。

なお、この場合の高すぎるは「Webサイトが10万円もするなんて〜!」という反応だったりします(結構多い)。

なお、提示した内容としては、私としてはデザイン業界自体は20年以上やってきてデザインだけでもこの価格帯なのですが、その他のWeb関連の作業や撮影やライティングまで込み、何なら業務改善案の提出も含めての提案書も上げたりもあり、ほぼご奉仕価格、激安価格のつもりでした。

・お客様側はノープランのため1からのヒアリングと設計
・内容や売りもわからないため総合的に企画から
・文章やコピーもないのでこちらで考えて提出
・ロゴもないので作成(商標登録する場合のみ別の正規料金)
・メインの写真は勿論ないのでこちらで現地撮影or素材の無償ご提供
・まるごとオリジナルのデザインで作成
・もちろんレスポンシブ対応(PC/スマホ/タブレットの3種)
・店舗or企業サイトのため5〜6ページ
・ブログ機能はないが新着更新ができるように(簡易CMSにて)
・メールフォームは必須
・SNSの連携は入れる
・Google登録等も含む
・GoogleMapも入れ込む
・サーバーの契約代行とドメイン取得サポートつき(所有権は全てお客様)
・WordPressではなくフルスクラッチで
・デザインの修正は無制限←!!

当時のご相談に対して、実はこのくらいのフルボリュームで、年間サーバー契約の代行払い代金含めて11万円(税込)でした。デザインはWebサイトのものも含めて自信がありましたし、普通に会社からデザインのみご依頼頂くことも多々ありましたのでそこはもう、デザイン以外は無償奉仕レベルの気合で見積もりを作っていました。
※トータルで10万切ってます、素材提供ライティング含みで

制作予定は約2ヶ月を予定。
保守については別の契約となりますということでこちらもご案内。毎月無制限修正作業コミ(おそらく随時になりそうな勢いだった)でも、月1000円で見守り関連含めての激安契約のご案内。

すべて「高すぎる」で一刀両断でした。

※今はこの価格で提示はしていません

安い見積もりがあるんですけど

さて、「ちょっとしたホームページでいいのにその価格はないわ」という酷評を頂き、Webサイトデザインのお仕事ってなんかやりがいがないなー、だったら今までの紙媒体のほうがいいじゃーん!とも思い始めたところ、そのお客様からご連絡が。

「こういうの見つけたので、せめてこの値段でできない?」

見てみるとそこにあったのは「ホームページまるごと29,800円でできます!」という、とあるサイトのトップページのスクリーンショット(苦笑)。

内容を拝見させてください、ということでしばしおまたせしてそのサイトをググる。なかなか出てこない。でも頑張って同じのを見つける(お客様はブックマークを知らなかった)。

内容を見ると、29,800円のお支払いでは済まないであろうことがすぐに分かりましたが、お客様が見ているのは「トップページのみ」であって、詳細ページは「見ても項目の意味がわからない、だからそんなの追加しなくていいはず!」とのことで…。
デザイン系ではこういう売り方はあまり良くないんだけどなぁ、後で揉める原因になるのになぁ…と思いつつ、こうやって集客している業者はそれなりにいるんだろうなぁとも。

※この価格帯でカスタマイズも対応している赤字覚悟の業者もあるかもしれません(非常に少ないとは思いますが)ので、全てがまずいと言っているわけではありません。

実際、見積もりは低めての最低限の価格で出しておきながら、最終の請求金額が10倍くらいになったのでこれが正当な価格かどうか意見を聞きたい、という謎のお問い合せも会社に頂いたりしています。

じゃあ実際いくらになるのか?

さて、どういう値段の付け方をしているかというと。

テンプレートによるホームページ(5ページ)が29,800円 ※WordPress

まず、お客様は「テンプレート」がどういうものかよくおわかりでなかったため、希望を伝えればきれいなオリジナルのサイトが出来上がるのだと思っていたようでした。

そして、このテンプレートが表に出ていなかったものの、選べる数は非常に少なく汎用性もないためにカスタマイズが必須となってきそうでした。

実績を見るとほぼ同じページだったので、おそらくそれが該当しているのでしょう。ものすごくシンプルなテンプレートでした。

「こういうデザイン以外はできないってことのようですよ、特に何の機能もついてませんので別料金が加算されますね」
「それは困る、思ってるデザインにして欲しい」

まず、お客様がどうしても欲しいと言っていた内容で「最低価格のプランに」追加していきましょう。

・メールフォームは欲しい:20,000円追加
・SNSとの連携をして欲しい(2種):5000円×2種=10,000円追加
・提供できるメイン写真がない:1枚につき5,000円追加
・スマホにも対応させたい:20,000円追加
・サーバーの手持ちがない:年契必須15,000円(毎年必要)
・ドメインの手持ちがない:取得に3,000円(毎年必要)
・低額プランのため保守契約必須:月3,000円×12ヶ月先払い=36,000円
※あくまでも実際のものを参考にしましたが仮の金額です

一旦ここまでで計算すると、追加だけで「109,000円」となりました。
初期費用と思われる29,800円を足してみると、138,800円となりましたね。
ページトップのビジュアル写真のみ加算してみましたが、もしかするとその他の写真も…となってくる場合、普通にさらに数万円の加算になりそうです。

ただし、この価格帯なら制作側から見ても「格安制作」でもありえる許容範囲ではありますし、内容を見ればもっと安くできそうな気もしなくはない…と思います(11万で高いって言われましたので額面だけ見られたらそれでNGだと思いますが…)。

さらに、上記の条件として、

・デザインは変更なしのテンプレート
・さわれるのは写真、文章、色のみ
・入れる文章は全てテキストデータ形式でお客様が用意
・ページ追加は別途料金が必要
・追加機能は別途費用が必要

内容を聞いたところでは、おそらく「デザイン変更」がご希望とのことで、最安プランはまず使えなさそうでした。そしてここには「テキストライティング」は一切不可の文字もあったので、ライティングや手直しが欲しい場合は一つ上のプランでオプションが必要のようです。

ランク別では、

①完全にテンプレそのままに近い最安プラン
②WordPressを実際に多少はカスタマイズ可能の基本プラン(88,000円)
なお、一番このプランが発注されていると書かれていました…。
③さらにカスタマイズできる上位プラン(150,000円〜)

もっと色々としたことを実現したい場合、150,000円〜の上位プランとなるようです。なお、私が提示したのはこの価格帯になるはずのところです。
※上限書いてないのでコワイところ

つまり、多くの人が発注している基本プラン88,000円にオプションを入れた場合は、「197,000円」程度となり、結構普通の簡易なサイトクラスの価格帯に突入し始めてしまうようですね…。
(地方の制作会社だとこれでフルカスタマイズも可能な場合もありますよ)

さらにその上の価格帯のものだと「368,000円」になります。
※純粋に足しただけで複雑だから等での追加や写真素材も1枚のみの見積もりなので実際はもっと高いでしょう。

ついでによくよく読んでみると、2回目以降に修正が発生すると修正箇所ごとに数千円の修正費用が追加されていく仕組みのようです。
上位プランは除外等の文字もなかったので、下手をすると細かく追加修正を繰り返した場合は3万で依頼するつもりが、50〜60万円越えの見積もりにだってなりかねません。

要は売り方、買い手の読み解き方

ここまで見て、私の出した価格帯が安いことに気づいた・・・のであればよかったのですが、お客様は大きくトップに出された「29,800円でホームページができる!」に固執してしまい、私からの「追加料金の説明」も半信半疑で発注、その後、かなりトラブってまだ納品に至っていないと風のうわさで聞いた悲しい結果となりました。
その後どうなったかはうかがい知ることはできません。

安いって威力のある言葉なのですね・・・(特に関西人にとっては

格安で売りに出した業者が悪いわけでも、知識がないゆえに予算をケチったお客様が悪いわけでもないと思いますが、業者はもっと内容をわかるように打ち出して錯誤が発生しない広告の打ち方をするのがモラルではないかと思いますし、業界を守ることにもつながるということをわかっていて欲しいです。

『自分の出しているものが今売れればそれでいい精神』
『同業を出し抜く方法しか考えていない』

では、後々自分が巻いた種で足元をひっくり返されかねません。
そもそも種まきすらできていない可能性もあります

また逆に、お客様も「何もわからないから」と言って価格だけを見て丸投げをして、最終的にトラブルに・・・という前に、相談に来られたのですから耳を傾けて、まずご自身が何のために制作を依頼したいのか、それによって何がかわるのか何を期待しているのか、制作費の捻出と回収についての予算ぐりはできているのか等々、経営と同じだけの真剣さを持って臨んでいただければ、回避はできていたのではないかと思うところです。

そして、お客様への請求時に見積額より大幅に跳ね上がるような場合、事前にわかっていることでもあるのできちんと契約時に説明をしてお互い納得の上で仕事をすることも、業界を守ることに繋がります。

かつて「Webやデザインの業界って、詐欺ばかりですね!」と憤慨された相談の方がいらっしゃいました。当初見積もりが20万円で依頼して、請求額が80万円に跳ね上がった例です。
この方の場合は、よく聞けば途中何度も大きく仕様変更やデザインのやり直しを繰り返した結果、説明無しで修正費が知らぬ内にかさんでいたようです。契約書には小さくその旨が書かれていましたが、まず、制作を行ったことがない方に「修正すると大変だから」という説明では全く何を言っているのかは伝わりません。
金額が絡んでくる部分の説明は、必要以上にしっかりとご納得頂いてお仕事をするのは基本中の基本なので、業者側の手落ちもあったように思います。

(うちは相談受けただけなので何とも…ですが怒鳴られてしまいました…)

じゃあデータを引き上げてくるから後を引き継いで簡単にやってくれない?

なお、既に発注されて中途半端な状態でデータを引き上げてこられ「この続きをやってほしい、途中までデータがあるからあとすること少ないでしょ、だから格安で!」ということも何度も体験しましたが、一つだけ言っておきますが「どこかの誰かがどこまでやったのかわからない、仕様書もないものを引き継いだ場合のほうが大変なので元より高くつきます」ということも知っておいて欲しいところです。

よく、料理や家を建てる時に例えられますが、家の場合、途中でめちゃくちゃになったので残り工程の価格のみで後を引き継いでやってほしい、と言われても引き受ける大工さんはほとんどいないでしょう。

なぜなら、きちんと出来上がっていないということは、基礎部分の瑕疵担保をつけられないからです。引き受ける側のデメリットが果てしないのです。

基礎がきちんとなっているかわからないような途中までの建築物は、後々崩れる可能性があるようなもの。それを簡単に引き継いで作って、もし崩壊してしまった場合の責任は一体どこに行くのか?
そういったことを考えると、安易に引き受ける人はよほどの技術がある人か、もしくは無責任な人&まだ仕事の重要性をわかっていない素人のどちらかです。前者は「安く」は引き受けてくれませんので、当然ながら後者が引き受けることが多いでしょう。
つまり、待っているのはさらなる崩壊・・・。

最終的に、更地にしてから立て直したほうが安全で安価に済んだ・・・というような、本当に建築と同等のことが起こりうるのです。

とりあえず・・・

お客様の要望を叶えられるものを作成して納品するだけでも「あの人に頼むときちんと仕事をしてくれた!」と喜んで頂けるのです。
それが基本になる業界であってほしいなぁ・・・と、思います。

記事を読んで「コンビニコーヒーでも1杯おごってあげよう!」と思った方はサポート頂けると嬉しいです♪ ※高額はやめてくださいね。あくまでもコーヒー代の足しにさせていただければこれ幸いです(笑