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ロゴデザインは簡単じゃないその理由

こんにちは、どっちかというと「ページもの」が大好きなデザイナーでございます。

まぁまぁ周りよりは長めにデザイナー人生を歩んでこれていますが、それでも私の中での最高難易度を誇っているのが「ロゴデザイン」という分野です。
もちろん、お仕事としてロゴのデザインをさせて頂いたこともありますし、指定で私にロゴのご依頼を頂いたこともあります。

が、よほどのことがない限りは「専門の方へ…」と言ってしまいがちなこのロゴデザインというものの正体、皆様ご存知でしょうか。

ロゴのデザインをやりたいんです

リアル業務を行なっている限りでは、ほとんど聞かないのにSNS上では良く聞く2ステップのフレーズ。

「イラレの勉強を始めたので、ロゴデザインの案件受注を目指します!」

そしてそれと同時に見てしまう、ベテラン勢の(汗)たち・・・。もちろん、チャレンジは良いのです。依頼者側もロゴデザインの依頼内容の重要度を理解しての発注なら誰も心配などしないのです。
それに、稀にロゴデザインにいきなり「才能を発揮」してしまう駆け出しの方も実際にいるので、余計に焦点をどこに持っていくべきかわからず、ただただ心配してしまうベテラン勢がいるのもこれまた事実ではあります。

しかし、残念ながらその「いきなりロゴデザインに才能を発揮」するタイプの方はそのへんにゴロゴロいるわけではなく、相当の突出した才能を持ち合わせているか、実は言ってないだけで基礎的な勉強を学生時代にしていたことがあったり…等が隠されているため「実務数ヶ月でロゴデザインで○○万円!」のインパクトがキラキラ光って見えてしまい…最終的には「これはヤバいよ」な結果になったものが、廻り廻ってネット関係なくお仕事を請けている地元のベテラン勢に【修正案件】として回ってくる現実もあったりします。

そう、「ロゴ」のお仕事で何が怖いって、

・アート的な簡易の文字だから簡単
・Illustratorが使えれば形が作れるから楽しそう(←まだこれいい方)
・Photoshopでも作っちゃえばいいんじゃない?
・きれいに作ればとりあえずOK

このくらいの認識でトライしてしまう人が居るんですが。

・マークなんて簡単だから数千円も出せば出来上がるだろう
・どこに発注すればいいかわからないけどネットで見たな
・相場とかわからないから全部任せればいいかな
・名刺やサイト、チラシに使うだけだからどんなのでもいいや

という、「ロゴ」の役割までは精査していない依頼側がこの程度なら問題が起きないわけなのに、

・10万円くらいするはずのロゴが格安で作れる!
・デザイナーが作るものなら今までの発注内容と変わらないね!
・商標登録も任せておけばいいか
・1回作れば、どんな媒体にも応用できるだろう
・データなんて全部納品に決まってるからね!

欲しているロゴの最終的な役割・用途は従来のガッチリしたものであるにも関わらず、価格だけに飛びついてデザイナー側に全ての要求をしているクライアントも実際に混ざっているのが怖いという部分なのです。
主にベテラン勢が危惧しているのがこの辺りかもしれません。

1:ロゴの役割とは

では、まず「ロゴ」とは何でしょうか。

会社や商品名のイメージを表すための図形。

つまり、その会社や商品等をパッと見て印象づける大切な役割を担っているデザイン成果物とも言えます。それだけに、ロゴを作るにあたっては高いデザイン性と計算されつくした設計、そして使用ルールまでの細心の注意を払う必要があり、それらの中には意匠や著作権含めての法的な知識も必要となってくるため、元々は初心者では手を出せずに「難易度が高いもの」として認識されているデザインの1つのジャンルとも言えます。

とは言え、その場限りのものであれば、単にデザインした図形を用いたり、商用フリーのフォントを使ってさらっと作っても問題ないこともあります。例えば「ページのタイトルに使うもの」や「一度限りで使うイベント用LPやチラシのタイトル」、他には使わない「Webサイト」等がそれに当たります。

しかし、一般的に言うところの「会社のロゴ」「商品のロゴ」ともなると話は代わってきて、一度作ったら最後「その会社の営業活動をする際に一番最初に社外の人の目に入る名刺やWebサイト」等で目にされたり、商品などで言えば「他社に真似をされないように商標登録を行なう」場合だってあります。
つまりは「ブランド」としての認識の最重要ポジションを担うに等しい時。
そんな場合は、デザイナーは意図せずとも世に出てしまっているものの類似と判断されるようなロゴを納品してしまうと、思わぬトラブルにも巻き込まれてしまうことがあるのです。

以前にも、ある会社のロゴマークが超大手から「模倣である」と裁判をかけられていたニュースがありました。かなり強引な裁判ではあったものの、最終的にどのような結果になったかはわかりません。
しかしこのように、意図していなくてもそのような法廷闘争にまで発展する危険性もあります。

その他、安易に「フォントをアウトライン化してそのまま使う」等も危険です。類似性や模倣でひっかからなくても、元々のフォント制作者(個人・会社問わず)の規定によっては「ロゴとしての使用は禁止」「商用禁止」「年間使用料と別にロゴ用ライセンス料金」等の決まりごともあり、そちら方面からの法的に引っかかることに巻き込まれてしまう可能性もあるのです。「ロゴ使用可能なフォントを使う」だったり、「ロゴ使用のライセンス料を払う等の処置を行う」もありですが、一番は「文字も含めて全てオリジナルで制作する」のが安全だと思われます。

こんな大変なデザインであるロゴです。ロゴを専門でデザインしている「ロゴデザイナー」という分野があるというのも頷けます。

そして、だからこそロゴのデザイン料金は高いのです。

2:ではロゴを見てみましょう

さて、気分を戻しまして、私個人のぱるぴたデザインのロゴ(仮)を作成してみましたので見てみるツアーでもやってみましょう。

まるいものが好き〜〜〜!

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※正式なロゴではないため、きちんと作ってません(LOGOTYPE.JPさん(https://logotype.jp/)で配布のフリーフォント「コーポレートロゴ(ラウンド)」さんをお借りして一部変えました。
※こちらのフォントはクリエイティブ・コモンズ4に則っての使用であればロゴにも使用可能なものです。使用の場合は、「SIL Open Font License 1.1を遵守してください。」とサイトに記載もありますのでこちらも必ず目を通してからにしてください。

3:ロゴの構成

ロゴの構成としては、一般的には「シンボルマーク」と「ロゴタイプ」を合わせたものが「ロゴマーク」と呼ばれています。

勿論、シンボルマークのみの会社やロゴタイプだけの会社もありますし、シンボルマーク単体/ロゴタイプ単体/組み合わさったパターンの3タイプそれぞれの形が違う場合もあります(ややこしい)。

ぱるぴたデザインで言えば、このような感じです。

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「シンボルマーク」
・図形の部分を指すことが多いです。
・Appleだとりんごのマーク、ナイキだとあのシュッとした部分等

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それだけに、シンボルマーク部分は印象優先で文字や商品・サービスを図形化したり、イラストを使うことが多いようですね。

「ロゴタイプ」
・文字で構成された部分を指す
・文字として認識できて読めるものが多い(中にはデザインされて読めないものもあると思います)

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4:これだけで終わらない!カラー指定も奥が深い

ロゴといえば、1色で終わるものもあれば、数色使う場合もありますし、中にはカラー写真並みに色とりどりのものもあるかと思います。

多くは「ブランドカラー」を軸として作成されたり、カラー設定がない会社の場合は取扱商品・サービスを連想させる色合いを使うこともあります。手書きの文字のみの場合などは1色パターンでシックに決めることが多いでしょう。

私はごちゃごちゃしたデザインが個人的に好きなので今回は「美味しそう」を主軸に持ってきました(ただお腹が空いていただけ?)。

さて、ぱるぴたデザインのロゴを見てみましょう。

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数えると、5色で構成されていました。
本来、3色程度に抑えて作成するほうが良いと思いますのでちょっと失敗ですね。とは言え、ドーナツを同じ色で統一するもなんだか味気ないのでこれはこれで良しとしましょう。

というのも、印刷用途限定ですが、その色に調合した色インク」を使う場合が最も色の再現性に優れている特色インクというもので刷ることがあるためです。そしてこの特殊インク印刷というのは、カラー印刷と比較すると非常に価格が高いのです。社内のグッズや販促物等を作成する場合はコスト面も考慮しつつ、イメージが破綻しないように色を決める必要もありますので、この部分はデザインの作成前にどんな色を使うのかも含めての「設計」が必要となる部分です。

また、特に気にしたほうがいいのは「一度も色校正なしで納品まで進める場合」に、画面の表示色のみで進めてしまうと、納品後に「色が違う!」というクレームにも繋がってしまうところでしょうか。

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めっちゃくすむ!!!!問題勃発。

RGBの色を出したい場合、特色で再現できることもありますが、やはり「画面」で見ているそのままの色を出すことは難しいです。
また、特色はインクメーカーによって「公式のCMYK分解値」を出しているところもあるのですが、それを使ってでさえ再現は難しいのです。
意外と目視や長年の勘でいくほうが近い色画出たりしますし、実は印刷会社によっても発色が違うため、ロゴに関しての色合わせはできれば予算があるなら本機色校正を2回はやっていただきたいところです(現実問題としては予算の問題でしなかったりも多い)。

この辺りの「色」の知識もある程度必要となるでしょう。

5:まだあるよ!色設計

そう、ロゴといえばカラーの色だけではありません。
勿論ながら、1色での表現をする場面も出てきますので、その設定が必要です。特に、グラデーションや複数色で構成されている図形を織り込んだ場合には、どのような分解方法で表現するのかも含めて、デザインの際に最初から「設計」として織り込んでおくことも重要なのです。

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今回はそこまでではなかったものの、ドーナツのなにかかかってる部分をどうするんだ?問題が出てきました。

これが「グッズ制作」だとして、例えばTシャツの印刷をするとしましょう。もこもこインクを使うとして…そう、「最小線幅」問題とがっちゃんこしてしまいます。ドーナツのかかっている部分は白抜きにして周りに枠を作りましたが、枠の線幅が印刷規定より狭ければその部分は線がないか保証されないデータとして作成されることになるため、そんな場合にはどうするのか?の設計が必要なのでした。

ほら、奥が深いと思いませんか?

6:色の設計はまだまだ続く!

ロゴの1色パターンを決めてもまだ安心はできません。

「近似色」や「濃い色」にカラーロゴが重なった場合の処置についても、デザイン時点での規定を予め行なっておくことが通常です。
見えない場合にどうするのか?

多くは①白フチを付ける②白枠をつけるで対処することとなりますが、他の対応方法もあるでしょう。

例えば、③別色バージョンを用いる④そもそも背景色までも指定してしまうなど、ありとあらゆる可能性を考慮しておくのが設計です。これらは初回の打ち合わせ時にしっかりと想定される使用用途を含めての打ち合わせを行なっておくことで序盤の時点で対応ができるでしょう。

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色が薄い場合は白フチパターンより、白枠パターンの方が良いかもしれませんが、背景が単調になったり使用用途によっては使いづらくなるかも知れません。

7:実はまだ他にも設計すべき事があるロゴ

さて、ここまででも「ロゴデザイン」における大変さがある程度伝わったかと思いますが、まだまだ仕上げまでにすべきことがあります。

・ロゴの著作権侵害チェック
・類似のものが商標登録されていないかのチェック(商標登録する場合)
フォントの使用に関しての規定がクリアしているか
・ロゴのレギュレーション(規則・規定)設定の残り
納品形態(ベクターorラスター)(用途設定がない場合、一般的にラスター形式で納品しないとクライアントが流用できないです)
使用禁止パターンの設定
・縦書き/横書きのバターンを策定するかどうか?
最小使用サイズの設定(最小サイズを設定しないと意図せず見えないレベルで使用されることもあります)
著作権譲渡を行うかどうかの取り決め(多くは譲渡パターン)
著作者人格権についての定めをどう取り扱うか(多くは契約書で規定)

詳細は長くなりそうなので割愛しておきますが、これらのチェックを経て、ようやくロゴ規定書とデータと一緒に納品…となるのが一般的なロゴ制作の流れなのです。
デザイン性以外の部分でも、高額になるのも当たり前と思われるほどの綿密な設計とチェック等も裏で行われているので納品までの時間がかかります(クライアントさんの想いも込めるため、デザイン自体も二転三転してなかなか決まらないことも多々あるので挫けそうになったりもします。最高で40回×3案のやり直しを経た事があります)。

ただし、昨今のオンラインのみで完結する「簡易なもの」は全てを満たしていない場合も多いようです。その分、著作権や商標権がからむような使い方をするとクライアントにも迷惑がかかってしまうリスクがあるので、その知識を持った上で正確な説明を行って取り組んでいけると一番良いのではないかと思われます。

まぁつまり…めちゃくちゃ大切な場面で使うロゴの制作のお仕事は、楽しいしやりがいはあるんだってことですね。ただ、重要なロゴで、プロジェクトの予算がある場合は専門の方に任せてしまうというのも、全体のクオリティを上げることにも繋がるということだけは追記しておきます。

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ちなみに、私もロゴのお仕事も勿論請けますが、取材込みの冊子やパンフレットは超得意ですのでお待ちしておりますよっ(と言い続けているけどWebのお仕事の方が多い)。

記事を読んで「コンビニコーヒーでも1杯おごってあげよう!」と思った方はサポート頂けると嬉しいです♪ ※高額はやめてくださいね。あくまでもコーヒー代の足しにさせていただければこれ幸いです(笑