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スクールフォトのアレの「発注側」にいた立場からもさらに考えてみるといろんな人々の思惑と想いと根底にある物が見えてくるかも知れないというお話

(2024年3月18日、一部修正・追記)

どうもでございます。
先日、私が確定申告でわきゃわきゃと焦っていた時に、ふとXでどなたがかリポストされていたのを見かけて、中を拝見させて頂いたのがこちらのnoteでございました。

スクールフォト業界で“も”カメラマンをされていた、所在ないさんのnote。
スクールフォト、殊に「幼稚園〜小中学校」位までのスクールフォトを指してのお話だと思います。詳細は上記のリンク先のnoteをご覧になっていただきたいです。

ちなみに、スクールフォトカメラマンと言っても、専属でスクールフォトだけしか撮影しない方もいれば、メインは他の形態だけどお声がかかった際に入るという形で引き受けている方、特定の学校とだけ契約をしていて普段はフリーで他の撮影のお仕事をされている方、株式会社形態のフォトスタジオの所属カメラマンでスクール系の写真撮影を多く担当されている方、ピンチヒッターで引き受ける方、諸々状況によりいらっしゃいますので、どの立場から見るかで見え方は絶対違うとは思います。
追記を拝見した限りでは、こちらの 所在ない さんは学校専属契約の方というわけではなく、スクールフォトカメラマンの業務をしたことがあり、その業務を行っている立場から見て、ということのようです。
なお、発注側として私も書きましたが、場合により公立校なんかだと実際に発注する人は「制作会社のディレクター・デザイナー」ではなく「学校の先生」の場合もありえるかもしれませんし、撮影内容もそれぞれで微妙に違うと思います。
という前提を追記させていただきます。

拝見して、身につまされる思いと、あぁ〜という思いと、それをどうにかしたかったけれど「単なる組織の駒」であった当時の私のいろんな思いが蘇ったので、個人的見解となりますがちょっと思い出した色々を語ってみようと思います。

あんまり詳しく書けないけれど

私は「匿名・半分架空キャラ」と言うおふざけアカウントでSNS上にいるので、詳しくは書けないですし実際、詳細まで書くと色々とヤバいところに引っかかってくるので半分ぼやかしながらとなるのはご了承いただきたい。
と言う前提の上でのお話です。

私が長く居たのはある学校関連の業界でした。
義務教育より少し上、かつ、私立系でもあったので実際には「ゆーてもまだマシな労働環境」の現場を見ていたことになります、と言う「運営側にちかいポジションにいた人間」から見た世界。

その世界に飛び込む前の私は、当然ながら「普通の世間一般のクライアント様とのやりとり」がメインでした。
とは言え、意外と会社の関係だったのか「公共機関の入札案件」なんかも多く取り扱っていたがために、なんとなく「スタッフレベルでどうにもならない不条理な世界観がある」ことまでは把握していました。

そして、やはり「教育業界」も同様でした。
私学系でこれだから、公立系はもっと凄まじいのだろうなとは想像がつく感じです。一応、完全内部ではなく、むしろ外部との狭間あたりにいた私のポジションですらその「なんとも言えない空気」は嗅ぎ取ることはできましたし、流されてはいけないなと思いながらもどうにもならんもんはならん、と諦める場面もなくはなかったです。

おっと脱線しました、話を戻します。

スクール写真のカメラマンのギャラ事情

まず「外部のプロカメラマンに依頼して価格交渉を行う」と言う経験をしたのが、私としてはこの業界に入ってからは初のことでした。
それまでの会社の場合は、社内にお抱えのプロカメラマンがいたり、ずっと馴染みの外部カメラマンに依頼するが価格交渉は営業部門が行なったりしていたので、ディレクション含みでの「交渉」して「請求書を受け取る」のが実はほとんど初くらいのことでもありました。
あ、もちろん20年くらい前の話ですよ?

そして、そこでまず「撮影専門の会社に所属しているカメラマン」と「フリーランスのプロカメラマン」がいることを知りました。

スクールカメラマンと言っても、おそらく炎上?した系のものは「行事を撮影する」のがメインであったかと思います。
半分は記録写真、いい写真が撮れていればなお良し。
あとは卒業アルバムに掲載する「内部のみで消費されるコンテンツとしてのスナップ写真撮影」と地獄の「生徒本人の顔写真」撮影会、この辺りのみを想定して、一流の商業カメラマンたちが上からなにかしら言っていたのかも知れません。

カメラマンへお支払いするギャラなのですが、普通の撮影(ポスター用の芸術系のものからタレントスナップから物撮りからひっくるめて)であれば確かに1現場2〜4時間くらいの拘束で10万円以上は普通にかかってくることも多いでしょう。

これが高いか安いか?
私も、現場で体験するまでは「あら、意外とお高いのね」と思っていました。人によっては1日拘束なら15万円、くらいで「安くディスカウントしてます」と叱られたこともありました。

そして極め付けが「10カットまでなら◯◯万円、それ以降は1カットにつき◯万円」みたいな形。おそらく、我々が間違えて雑誌やマス媒体のカメラマンさんに見積もり取っちゃったんでしょう。

そう、実際問題「10万円」くらいでのお仕事をされている方が多いんですよ。でも、noteにあったようにスクールフォトの現場では「2〜3万円」くらいでの交渉が入ります。※
それはなぜか?

年間予算が決まっているのが学校運営だから。

ちょっと公立校の事情はわからないのですが、私立関連だと前年度の年明け〜2月末くらいまでの段階で、次年度予算を立ててしまいます。
定員オーバーしている学校なら定員数で単純に予算を組みますし、そこがわからない場合も最近では多いでしょうが、大体1月頃には「推薦枠」の目処が立ち、2月頃には「自己推薦枠」がちらほら出始め、この頃にはもう願書の締め切りがあるのでラストスパートの「本試験あり枠」でおおよその翌年1年〜在籍年度終了までのその学年の入学者数で数年間の収入が一気に決まってしまいます。

普通に物を売る会社であれば、期ごとに分けて売上を確認しながら調整していく物だと思いますが、学校はそうじゃない。
4月の時点で完全に年間予算は確定して、それ以上に途中でぼこぼこと予算が増えるわけではなく、下手をすると学校を辞めたり転校したりがあれば減るだけ。

と言うことで、3月にはなににどれだけの予算を割り振るかが決まってしまいます。募集要項には「卒業関連費」みたいな項目があると思いますが、あれのごくごく一部が卒業アルバム製作費でもあるわけです。アルバム以外にも、記念品だったり認定証や卒業証明書、その他卒業式式典にかかる諸々の費用だったりまでが含まれているので、アルバム製作費はそのごく一部でもありまして、実際には「えっ、そんなお安いの?」ってなってる場合もあります。

アルバム製作費は、制作部門の人件費+印刷代+加工代(アルバム形式だとカバーあたり)+郵送代に加えて、カメラマンのギャラ(個人写真撮影、イベント撮影)を始めとしたものも含まれています。

で、昨今は1学年の生徒の数が少ないと言うこともあり、製作費の中の「印刷費」の割合がぐぐぐぐ〜〜っと増えてきているわけですね。
1学年300人いる場合は300冊+αを印刷依頼かけるのですが、1学年が50人だと小ロット印刷となりますが、そこは卒業アルバム、一生の思い出でもあるのでちゃちい仕様に変えるわけにもいきません。となると普通にこの1冊あたりの印刷コストは激上がり。

では、なにで調整しているか?って話なんですが。
減らせるところって1つしかないんです。そう。
「人件費」なんです。
ある程度は印刷会社にもお願いしたりもしますが限界があり、次にどこにいくかというとまず制作メンバーの制作費取り分カットが入ります。減ったぶんは外部の仕事をして部門売上の埋め合わせをしないといけないので、当然ながら長期拘束されるはずのアルバム制作と並行して外部の仕事もしているので、激務となります。そもそも、外部の仕事と学校関連の仕事は「ペース配分が全く違う別物」でもあるのですが、そこを両立しないとやっていけません。
そしてさらにそれでも間に合わないとカメラマンへのギャラ交渉なんかが入ったりします。そこでギャラ交渉に失敗した場合、カメラマンのチェンジ?または、イベント撮影自体の回数を減らす、なんてこともあり得るのです。
どちらにしても、制作側にいるみんなが「ヒー」となってしまうのですが、最初に書いた通り、実は「入学前に卒業関連費のアナウンスをしてしまっている」ということもあり、数年前のレートから急に「今年足りなさそうなので追加で徴収します!」なんて、どこかの国の政策みたいなことはできないのです。

※ちなみに、私のところはカメラマンさんは5〜6万円くらいで交渉になってました。当初は3万円くらいと上層部から言われていたのを、かなり掛け合ってレートをほんの少し上げてもらったというのがこれ。公立校関連よりは多少マシ?な価格設定だったようです。

カメラマンさんは体力勝負の仕事

ところで、撮影機材一式って見たことありますか?
きっとお詳しい方々も多いと思いますのでぼかしておきますが、あれ、ものすごいです。個人の方にお願いしても、バンや大きめの車の後部座席にいっぱいの機材類を出したり積み込んだりという重労働も入ってきます(手伝いますが大切な機材なので大体のカメラマンさんはご自身で行われます。何度も現場をご一緒して、ある程度「こいつカメラ知ってるな」とご理解いただけるまでは全然触らせてもいただけませんでした)。

さらに現場までが遠い場合は移動もあります。
車移動でなく、電車移動での撮影の場合もありますが、それでも大きなカメラバッグに三脚やらなにやらを担いだ状態での移動となりますので、撮影開始まででもかなりの体力仕事だと言うことがわかります。

そして写真撮影の最中もずっと、我々「制作側」のものもある程度お手伝いをします。高いギャラになっている「商業カメラマン」の世界ではアシスタントさんがついてきて、スタッフも潤沢なのでしょうが、ここは学校。
外部の人がたくさん入って来られると色々と問題ということもあり、内部にちかい制作会社(関連会社でした)のディレクターとして入る者数名が必ずライターやカメラマンに同行して初めて「撮影許可」が出るという感じで進みました。

さらに、アシスタントがいないということで、撮影ディレクションをしながら横で学生に注意事項説明したり、トラブル対応したり、列に並んでもらったり、カメラマンさん自体のアシスタント業務みたいなことまでやったり、撮影場所から学校側のスタッフや講師のところへ駆けずり回ったりして(日によっては2万歩くらい走ってくたくたになってました)というすごい状況が繰り広げられます。
学校側のスタッフさんも手伝ってくれる場合もありますが、基本は「外部の人にはお金払ってるんだからそっちでなんとかしろ」の世界です。
なにしろ、学校スタッフ(先生や講師)は、制作者やカメラマンに対していくらくらいのギャラを払っているのか「全く知りません」から。
お金を払っているのは大体、運営部か事務局の人でしょう。この人たちは直接授業を持っていませんし、職員会議にも出ないポジションの方々です。

で、こういう「裏側事情」を知っていると、ディレクター役として入っているこちらが必死に間を取り持つしかなくなります。

カメラマンさんには「安いギャラで頑張ってもらっている」、先生方は「そもそもギャラの価格をしらない。その上で協力してくれている」というわけですから。

学校での撮影は禁止事項がいっぱい

さて、話は変わりますが、学校での撮影は気を使うというだけでなく、なんか知らないけど「意味不明なくらいに禁止条項」がてんこ盛りとなっています。

特に、プライバシーのなんちゃら、個人情報がなんちゃらと言い始めたあたりからと、生徒たちがガラケーではなくスマホを持つようになったあたりからガラッと変わったように思います。

まず、撮影する場合は入学時のオリエンテーションなんかで「学校行事の際に撮影が入った場合、写り込んでもOKです」みたいなものの誓約書を用意している学校も中にはあります。
しかし、実際に映り込んでいるものを使用するのは基本的には「関係者内部だけしかみない媒体に限る」としています。卒業アルバムだったり、卒業生や在校生向のWebサイト(パスワード制)あたりに掲載するものを指していると思われます。

それ以外に、学校のパンフレットや広報版のWebサイトに使いますという条件の場合もあるでしょう。なおこの場合でも、個人情報保護の観点から「顔写真×フルネーム」は完全NGで、掲載するなら「苗字のみ」だったり「名前は伏せる」だったり、関連校や提携校があってその中で掲載するなら「都道府県に止める」だったり、特別にインタビュー等に応じてもらって初めてフルネームで記載する、だったりと、事前にデザインする前の段階の確認事項がてんこ盛りなため、逆に「一般の製作会社」に依頼するととんでもないトラブル発生してしまった事例も実際に見たことがあります。
(で結局内部企業に戻ってくる制作物・・・仕事減らない)

そして、カメラマン選出の場合も、それらを「事前に理解してくれているカメラマン」という観点でお声がけすることが多くなってきます。
いくら「凄腕で受賞歴が多数あっても」内部のアレやこれやを説明しないといけない場合の時間的人的コストとの天秤で、「いつもの人」に声がけとなるのは当然の話でしょう。

学校って行事の時期が被るのよ

で、そこで気づいたと思います。

大体、学校って行事も前年度に「何月何日になんの行事がある」までが決まってしまっているんです。

当然ながらここでも、10ヶ月後のこの日にこの撮影がある、程度までは確定しているわけで、そうなってくると半年以上前から「いつものカメラマンさんの予定を仮押さえしたい」となってくるのですが、なんとなんと、大体の学校が似たような時期に似たような撮影現場が発生しちゃうんですね。

ほとんどの学校で共通して確定しているだけでも、3月は卒業式、4月は入学式、その他は文化祭や体育祭、研修旅行や修学旅行、夏休みのイベントなどなど。特に3月4月のカメラマン確保、カメラマンさんも大変ですが、ディレクションのこちらはもっと大変。

私は「内部企業扱い」でのカメラマンさん確保でしたが、それでも全国で30校くらいを担当していたため、日程と地域が被っていない状態であっても、同日に1現場につき3〜4名のカメラマンが必要(壇上撮影と会場撮影、他に動画用スタッフとしてのカメラマンなど)となると、2、3現場を受け持っているだけで普通にカメラマンさん20人以上に声がけしてスケジュールを押さえないといけなくなるんです。

カメラマンさんも、スクールフォト専門の方だと公立校で何年分も押さえてしまっているので、外からのアポが全く取れないんです。となると、一般の商業写真やスナップ撮影のカメラマンさんに声をかけることもあるのですが、やはりギャランティの関係もあり、カメラマンさんとしても「できれば普通の雑誌の仕事の方がギャラ高いからそっち優先したい」ってなっちゃうわけですよ。(心情としてはわかる。わかるけどこちらは困る)
さらに時期的にも、他の学校法人の行事も3月4月は被ってるので、多分カメラマンさんいないでしょう。現場に慣れてるような方。

かといって、すでに予算がいくら、と決まっていて、増額の交渉すらできる余地がない製作陣、製作の人件費カットします!って言っても元々実は低め設定されているのでそこはどうにもならないし、その時点から上層部に「製作部の人件費をカメラマンのギャラに使っていいですか?」と掛け合うことはできない。掛け合うタイミングは多分1年前か2年前に戻らないと無理なのである。そもそも、私の場合は「内部扱い」ということで制作メンバーの人件費も実は決められた定額での算出がとっくに終わっちゃってる状態。

予算動かすには来年以降の話となる・・・。
そんな未来視できないのですよ(しかも2年目くらいだと全然意見通らない)。

そう、だからなんとなくあの炎上ポストで「100人でも200人でも」ってつい言っちゃったのはわからなくもない。それだけ全員採用するかどうかは別としても、気持ち的にはすごいわかる。

と、まぁなんか色々書いてよく分からなくなりましたが、言いたいことは一つ。

スクールカメラマンさんは現場で重宝されてるし、決して「下に見る」ジャンルじゃないってこと。
学校という特殊な縦社会の世界があって、その世界がまだ崩壊してない(そろそろ崩壊してる気もしなくはないけども)分にはこの問題、特にスクールカメラマンさんのギャラ問題や人が足りない問題が解決しそうにないわけですが、再度言いたいのは「ギャラが低いのは業界の発注構造がおかしい」のが原因なんじゃなかろうか?というところ。

しかし、学校の学費納入の部分を「生徒の親族」という目線、つまり「最初に言われたぶんを先に払ってる」というシミュレーションをしてみると、この構造を変えるのは容易ではないということもわかるんじゃないかなと思ったりもします。
後から「色々足りませんでした」は、もしも家を建てているような場合は「あり」なのに、学校の学費に関してははっきり言って「ない」ですからね。

とまぁ、長々と失礼しました、なのですが。
学校関連の制作物自体は、私個人としては好きなジャンルですし、とてもやりがいがあります。しかし、クリエイター側からみると「やりがい搾取」でもあるし、保護者(スポンサー)側からみると「高い金払ってるのに!」てのもあるしで、本当に何が正解かわからんなぁ、というのがもやるところではあります。

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