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「なんとかなるさ」じゃダメなんか

あと三か月でいよいよ中学校に入学する我が家の息子、親バカで申し訳ないのだが、映像制作の分野でめきめきと才能を伸ばしている。小さい頃はとにかく育てづらくて手がかかる、発達のことで気を揉む、将来のことで絶望するという三点セットで私の心労もMaxだったものだが、私自身の人生を振り返って、とにかく「普通の発達」をすることを押し付けないように、好きなことは好きなだけ没入してOKと言って育ててきた。

小学校高学年ぐらいで映像制作の魅力にとりつかれた彼は、「僕は映像芸術が勉強できる高校に進学して、その道に進む。だから中学に入ったらすぐに美術科高校の受験対策ができる予備校に行かせて」と頼んできた。

こんなに早く進む道を決めてしまうことに抵抗を覚える人も少なからずいるだろうし、増して「つぶしが効かない」と言われる芸術科高校を選ぶことにネガティブなコメントを寄せる人もネット上などではチラホラいたものの、私ぐらいの年齢になると、「つぶしが効かない」と周りに言われながらマイペースに好きなことを続けてきた人の方がよっぽど納得のいく中年期をおくっていたりするのを嫌というほど見せつけられているものだから、特に反対する理由もない。

そして息子に「美術予備校に電話かけて」と頼まれていたのだが、「受け入れは中学生から」と書かれていたので、なんとなく後延ばしにしていた。

で、年も明けたしそろそろ電話してみるか、と電話をかけてみたところ、「もう一人、新中学一年生が申し込んでいるものだから、もう定員一杯かもしれません」とびっくり仰天なお返事を頂いた。とりあえず体験レッスンは申し込んだが、受け入れてもらえるかは神のみぞ知るな宙ぶらりんな状態。

ああああ、何でもっと早く動かなかったのぉぉ、私!!!

そして夫と「もう一つ教室があるはずだから、体験レッスンのときに断られたら、急いでそっちに問い合わせよう」と打ち合わせた。急にザワザワとした不安感と焦燥感が胸をかき乱す。「美術科なんてマイナーだしなんとかなるだろ」という自分の読みがあまりに甘かった。

この嫌な不安感と焦燥感、久々に味わった。

こういう焦燥感、子供が生まれてからずっとだ。保育園入れるだろうか、幼稚園入れるだろうか、療育の空きはあるだろうか、病院の発達外来は予約取れるだろうか、放課後デイサービスの定員に滑り込めるだろうか、、、。いつもいつも少ない定員と、ボーっとしてたつもりもないのに「わ!動くの遅かった!」という胸のざわつきに血の凍るような想いをしてきた。

後になって、周りは少ない定員に滑り込ませるためにありとあらゆる手段を講じていることを知る。幼稚園は入園願書を受け取るために前日から寝袋持って並ばなきゃいけないから、プレで2歳から入れるとか。放課後デイサービスは新しくできたところを徹底的に当たるとか。「わわわっ!みんなそんなに動いているのね!!」と自分を責め、漏れなく情報戦に突入する。

「少子化なんだよね??なんでいつも定員に追われてるの…」とうんざりするのだけれど、それが情報社会のもたらしたものなのかもしれない。「ここが良い」「〇歳までにこうしておくと良い」「この先生が良い」という情報がいくらでも手に入ってしまうから、みんなそこに到達するために早々に動くことができるようになった。

子育て、「なんとかなるさ」が全然が通用しなくなってる!!!

必要なのは徹底した情報収集をして、制度の隙間をかいくぐり、とにかく早期にガンガンアプローチを開始することである。そうでなければ、「あれ、気づいたら無理だった」ということになりかねない。

随分大変な世の中である。

そういえば娘を生んで半年ぐらい、0歳児の赤ちゃんを連れた地域の集いでも、ママたちはもう中学受験の情報交換をしていた。Twitterなどでも、2歳、3歳のお子さんのお父さんが地域の高校受験事情について聞いてきたりする。「もう少し先でいいんじゃないですか…」なんて言っていたら、本当に取り返しのつかないことになるんじゃないかと、みんな恐れている感じがする。

そして、いつだったかTwitterで「子育て、なんとかなるさと思って産んでみたけれど、全然なんとかならなかった」と呟いてみたところ、「先のこと考えないで子ども産むな」「虐待だ」という💩みたいなリプがたくさん飛んできた。(なんだこの修羅みある世界…)

私は「これが少子化の原因だ!!」とか浅はかな分析をする気はこれっぽっちもないんだけど、親も子も「ちょっとの出遅れが許されない」っていうのは結構なかなかやりづらいものだなと思う。

そして「なんとかなるさ」と思って子どもを産んで育てるのって、そんなに悪いことかなあ。先のこと考えて考えて、用意周到に計画して子育てしたって、予想と全く違うことになるのが人生というものではなかろうか。

とりあえず、子どもたちの幼稚園の申し込みのために朝の4時から並んだとき以来の争奪戦に、久しぶりに参加することになりそうだ。レッツゴー美術予備校。ファイティ~ン



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