資本政策の感想戦ショート版 | 株式会社インティメート・マージャー

株式会社インティメート・マージャーの資本政策の特徴を6つのポイントから解説します。

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shihonユーザーでは無い方がお読み頂く場合でも、解説している企業の資本政策の特徴をご覧になることができます。資本政策について全体論として1つの視点、各論として5つの視点から特徴を解説しています。

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1.資本政策の特徴

インティメート・マージャーは、フリークアウト(現フリークアウト・ホールディングス)とPreferred Infrastructure(PFI)の合弁会社として2013年6月24日に設立された。非上場のスタートアップ2社(後日フリークアウトは上場している)による合弁会社として設立されて、IPOをした珍しい例と言える。

インティメート・マージャーは、DMP(Data Management Platform)を開発・提供するために設立された。

設立時に出資を行ったフリークアウトは、広告出稿側のプラットフォームであるDSP(Demand-Side Platform)に関する事業を営んでいる。DMPは、広告出稿者のサイトの情報や第三者に提供されるオープンデータをベースに、DSPの精度をより高めるためのプラットフォームだ。
DSP,DMPという2010年前後から注目されはじめた分野に対して、いち早く国内で両分野に取り組んで、自社と子会社(インティメート・マージャー)を上場させた企業がフリークアウトだ。

インティメート・マージャーが上場までに行った資本取引の全取引を表形式で記載する。

設立からIPOまでの全13取引

インティメート・マージャーが設立からIPOまでに行った資本取引は13取引にとどまる。2013年6月に創業してからフリークアウト・PFIが出資した資金で事業運営を行っていたが、2015年10月にPFIとの資本関係を解消して以降、IPOに向けて各種資本取引を実施している。

資本関係を解消してから1年後の2016年7月に、プライベートラウンド(シリーズAラウンド)で、2億6000万円を調達している。シリーズA以降については、会社が黒字化していることもあり、資本提携に際して親会社であるフリークアウトの保有する持分の譲渡を行っている。

エクイティ・インセンティブの設計方法について、経営陣含めた内部向けのインセンティブは全てSOで付与している。創業時代表取締役に対してのSOを発行済株式総数の1/3近く発行しており、IPO時において発行済株式総数の25%に相当するSOが発行されていることが特徴的だ。

IPO時には、IPO前に株式譲渡で行った資本提携時のValuation(75億円)よりダウンラウンドとなる形(Valuation63億円)となっている。ダウンラウンドが強く影響して、売出される株式が0株(他オーバーアロットメント39,000株)と、ほぼほぼ公募のみでIPOをする事態となっている。

以下、資本取引について興味深い点について述べる。

興味深い点
・Preferred Infrastructure(PFI)との合弁解消時について、株式譲渡時のValuationが1.7億円として取引が行われている。取引直前の第3期末には売上高3.3億円で8200万円の当期純利益となってる。株式買戻を行う場合の取引価額がどのように決められていたのか興味深い。合弁会社設立時に締結した契約書上で、業績がある程度安定的に推移していて、かつ、早期に合弁を解消するケースを想定できていたか興味深い。
・インティメート・マージャーの上場後である2020年11月16日に、フリークアウト・ホールディングスが保有するインティメート・マージャー株式の一部をSBI証券に譲渡したことで、インティメート・マージャーはフリークアウト・ホールディングスの子会社でなくなった。インティメート・マージャーの上場前から、いずれ子会社ではなくすことを視野にいれていたかどうか興味深い。
資本政策を見習う場合に追加で検討したい点
合弁会社における経営陣のインセンティブ設計や、100%子会社として設立した会社における経営陣のインセンティブ設計を行う際に参照したい事例となる。インティメート・マージャーでは新株予約権のみを用いたインセンティブ設計が行われていたが、株式も交えたインセンティブ設計を行う場合はどのような手法があるのか検討したい。
・経営陣に対して税制適格SOを付与する場合、年間行使価額の上限があることを踏まえて設計したい。何年にもわけて行使が必要となる量を付与するのであれば、有償SOを付与することも積極的に検討したい。
・A種類優先株式の設計上、上場申請にかかる取締役会決議をキーとする取得条項の設定が行われていない点は、どのような投資家が相手だったとしても是正したい。

関連リンク
shihon 株式会社インティメート・マージャー
shihon 株式会社フリークアウト・ホールディングス

以下、各論点についてポイントを記載する。

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