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所長コラム⑮自らのキャリア発達の要因について

 こんにちは、所長の松本です。私事ですがこの度、神奈川大学客員教授を拝命しました。私の専門のひとつにキャリアカウンセリングがあり、その業績を認めて頂いたものと認識しています。そこで大変僭越ではありますが、私自身のキャリアを振り返り、自らのキャリア発達の重要な要因となった「キャリアモデル」「サードプレイス」について述べてみたいと思います。

■展開のきっかけ 

 私は1995年に医療法人社団慈友会 高田馬場クリニック(現、医療法人社団翠会 慈友クリニック)に入職しました。クリニックに採用された初めての心理職だったこともあり、例えば院内で心理テストのオーダーフローが整備されている訳もなく、しばらくは専門業務よりもレジ打ちなど受付業務が仕事の中心でした。

 思うように自分の専門性が発揮できず、もどかしく思っていたところ、創設間もないジャパンEAPシステムズ(JES)が企業に行ったアンケート結果が机に置かれているのを見つけ、「集計して報告書にまとめましょうか?」と提案しました。集計に加え、論文にまとめて学会投稿したところ、採択されて関係者に喜んでもらえました。以降、私はJESを兼務するようになり、しばらくして社員第1号としてJESに移籍しました。

■執筆のパワー

 集計や論文執筆に手を挙げたのは、現JES顧問の世良守行氏の存在が大きかったといえます。当時、高田馬場クリニックの院長だった米沢宏先生(現、産業ダイアローグ研究所 所長)と、副院長だった看護師の世良さんが二人して書籍や雑誌などを執筆しており、クリニックには書くことが当たり前の文化がありました。

 私も書くことが嫌いではなかったこともあり、世良さんには学術論文や書籍など、様々な共著機会を頂けて、執筆や発表などを行ってきました。そのことで、学会など様々なコミュニティとつながることができました。企業勤務経験のない私がJESで営業やスタッフ育成、経営に関わることができたのは、産業系学会で多くの人事担当者や元経営者と交流できたお陰です。

■キャリアモデルとサードプレス

 今、キャリア形成において「越境学習」「サードプレイス」という言葉が注目されています。家でも職場でもない第3の居場所「サードプレイス」で、自分とは異なる専門の人と交流を深めていくことが越境学習の特徴です。サードプレイスでは自分がやっていることを他の専門の人にも分かるように伝える必要があり、自らを説明する力が練られ、それによって世界が広がっていきます。

 自分を振り返ると、「現場が書かないで、どうする!」と言い続け、自ら組織外に発信し続けた世良さんが、私のキャリアモデルになったと思っています。世良さんを追いかけて執筆してきたことで、外に自分を説明する言葉を獲得し、その結果、幅広い世界とつながりました。精神科医療出身の心理職の自分がEAPやキャリアカウンセリング業界、そして大学とも繋がることができたのは、このお陰だと思っています。

■著者プロフィール

松本 桂樹(まつもと けいき)
ビジョン・クラフティング研究所 所長
神奈川大学 客員教授

 精神科クリニックにて心理職として勤務後、日本初の外部EAP専門機関であるジャパンEAPシステムズの立ち上げを担う。 現在もEAPコンサルタントとして、勤労者の相談を多く受けている。
 臨床心理士、公認心理師、精神保健福祉士、キャリアコンサルタント、1級キャリアコンサルティング技能士、日本キャリア・カウンセリング学会認定スーパーバイザーなどの資格を保有。