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KDDI(AU)の内情を有価証券報告書から読み解く。(2022年度参照)


挨拶

このページをご覧になってくれている方ありがとうございます。改めましてコブータと申します。私は米国公認会計士や簿記2級の学習を通じて会計のマニアになりました。企業の財務分析を行うことで皆様の投資判断の材料にしたり、就職、転職の企業分析にお役立ちいだだければと思います。他の方の記事と比べて一歩踏み込んで財務分析を行うので有益な情報を皆様にお届けできればと思います。記念すべき第三回目はKDDI(AU)です!理由としてはNTT、ソフトバンクと解説をしてきたので3大キャリアをコンプリートしようと考えたからです。この企業の分析をしてほしいとリクエストがありましたらコメント等に残してくれると嬉しいです!

企業概要

KDDIは1985年に電気通信事業の民営化に伴って第二電電企画株式会社が発足されたのがルーツになります。NTT、ソフトバンクが国有会社から始まっているのとは対象的に、KDDIは通信業界の市場競争を発展させるために設立された民営会社だったんですね。個人的にはNTTとKDDIが国有企業から始まっているイメージでしたが、イメージと実際は異なりますね。

事業内容

KDDIの事業は下記の2つの事業に分けられています。
シンプルに分けられている分、1つの事業で様々なビジネスを行っています。大企業にありがちなその他の事業がないのも分かりやすいですね。

  1. パーソナル事業

  2. ビジネス事業

パーソナル事業は主に国内の携帯電話事業です。スマホの端末をAUから購入している人も多いと思いますがあれです。また、インターネット回線やAU電気、AU Pay等のサービスもパーソナル事業に含まれています。
海外向けとしてはミャンマーとモンゴルの個人顧客に対して通信サービス、金融サービス、映像サービスを提供しているようです。ミャンマーやモンゴルで働いてみたいと考えている人はチャンスがあるかもしれませんね。
ビジネス事業はコンシューマ事業で提供している携帯電話サービス、インターネット回線を我々一般人に提供しているのではなく、法人相手に提供しているということですね。皆さんの社用のiPhoneも回線がAUだったりしませんか?また、ビジネス事業ではTELEHOUSEのブランドでデータセンターサービスを提供しているようです。データセンターサービスを強調しているのはNTTやソフトバンクには見られなかった点ですね。

人員について

KDDIの従業員数内訳は下記の通りです。
従業員数は約49,000人の大企業でありソフトバンクとほとんど同じくらいの従業員数がいます。ソフトバンクはヤフー・LINE事業を含めて50,000人以上いますので、単純に通信会社としての人数の規模はKDDIに軍配が上がります。ですが、NTTは30万人ですからやはりNTTは桁が違います。パーソナル事業に携わる従業員が半数以上を占めているため、KDDIは個人へのスマホの販売、回線契約に強みがありそうです。

KDDIが従業員数

働きやすさについて

現在注目されている働きやすさですが、KDDIは子会社もかなり多いので今回はKDDI本体のデータのみ持ってきました。KDDI本体の場合、女性の管理職は8.6%です。奇しくもソフトバンクの女性管理職割合と全く同じですね。ですが、男性の育休取得率は総合職で71.8%とソフトバンクと比較して少しだけ高いですね。働きやすさという点では改善の余地ありといったところでしょうか。

KDDIは何で儲けているのか?

KDDIは売上高約5.6兆円の大企業です。従業員数だけでなく、売上規模もソフトバンクとほぼ同程度ですね。そんなKDDIは何で儲けているのでしょうか?
その内の約85%はパーソナル事業で稼いでいます。つまりB to Cで85%、B to Bで15%しか稼いでいないということになります。また、KDDIの売上高の内、殆どが国内で稼いでいます。ミャンマーやモンゴルでのビジネスは発展途上のようですね。その意味ではKDDIはまさに私達がイメージするようなスマホの通信サービス会社と言えるでしょう。
売上高は2021年度と比較して増加しており、その要因はエネルギー事業収入や金融事業収入、ビジネス事業の収益増加によるものです。エネルギー事業は電気の価格が高騰しているのでそれによるものだと推測できます。金融事業ではAU PayやAU じぶん銀行等のユーザーを着実に増やしていっているようです。

KDDIの営業利益率は?きちんと儲かっているのか?

KDDIの売上高は毎年順調に推移しています。3社を比較して改めて感じましたが、毎年着実に売上を増やしているのが本当にすごいですね。営業利益率も18.9%と大手3大キャリアの中でも最も優秀な営業利益率です。ですが、売上高は2021年度と比較して増えているのに対して、営業利益はわずかですが減少しています。この原因は電力サービスの原価が上がったことが原因です。ニュースでもよく光熱費が上がっていると聞きますがこうやって実際に原価を数字で出して貰うとよく分かりますね。2021年度の電力サービスの原価が4,100億円に対して2,022年度の電力サービスの原価は6,300億円となっています。

KDDIの売上原価、販管費内訳

またその他収益も前年度と比較してかなり増えていますね。これはどうやら補助金収入によるものが多いようです。補助金収入が500億円以上増えているということは今後それ以上の投資を行う予定があるということでしょう。

当期純利益は2019年まで遡ってもしっかり毎年利益を出すことができていますね。当期純利益が配当金の原資になるので毎年配当金を出すことができるくらい儲けが出ているといって良いと思います。1株あたりの配当金も135円と配当利回りは3%程度ですが、毎年増配しているのは投資家にとってとれも嬉しいですね。また、配当性向も50%でバランスの良く配当金を出していると評価できます。近年は毎年5円が10円ずつ1株あたりの配当金を増やしているので、今後も増配し続けるのか、いずれ増配が止まるのかは注視していきたいですね。

KDDIも流動比率は良くないのか?

会社が潰れてしまう可能性があるか?を判断するには流動比率の分析はかかせません。流動比率とは流動資産÷流動負債で求めることができ、短期的な資金繰りに問題がないかが分かります。
儲かっている企業が倒産してしまうことを黒字倒産と言います。なぜ黒字倒産が起きるのか?それは企業が儲かっていても企業は基本的にお客様に後払いを容認しているからです。もちろん会社が払う場合にも後払いにしてもらうことが多いのですが、黒字倒産の場合は会社にお金が入ってくる前にお金を払う期日が来てしまい、支払いができなくなることから起こります。
つまり、サラリーマンで言うと預金残高に1,000円しかないのにクレジットカード10,000円分の支払い期日が来てしまったような状態です。その5日後に給料が振り込まれるとしても支払いが期日までにできないと企業は倒産してしまい株はパーになってしまう可能性があります。
このような罠にかからないためには流動資産と流動負債の比率を分析する必要があります。流動資産は現在持っている現金、1年以内にお金に変えられる現金を示しています。流動負債は1年以内に支払う必要がある現金と考えれば良いです。つまり、1年以内に支払いお金を現在の現金や1年以内に現金になる物で賄えるかが分かればいいのです。
KDDIの流動資産を確認すると約3.5兆円あります。その内棚卸資産は990億円ですので流動資産の約2.8%です。一方で、流動負債は約4.6兆円と流動資産より1.1兆円多くなっています。これはかなりまずいのでは?と思いがちですが、ソフトバンクと同じく流動負債には銀行事業の預金が含まれており、こちらが2.6兆円程あります。つまり2.6兆円は預金としてみなさんから預かっているお金ということです。そしてこの2.6兆円は1年以内に引き出されるものではありません。みなさんも銀行の預金を一気に引き出すことは滅多にありませんよね?
この2.6兆円を除くと流動負債は約2兆円となり流動資産が流動負債の約1.5倍ほどあります。しかもKDDIの非流動負債は1.6兆円しかなく、こちらを含めても流動資産で殆どが賄えてしまいます。KDDIは他の3大キャリアと比較しても短期的な資金繰りには困っていないと考えられます。一番堅実なキャリア会社と言ってもよいでしょう。

KDDIの負債一覧

KDDIは何に投資しているのか?

KDDIの非流動資産は増加していますね。特に金融事業の貸出金が大幅に増えていますね。つまりローンを外部に貸し付けている状態です。ですので今後多くの利息収入が期待できそうですね。
NTTやソフトバンクと比較するとビジネスに使用する資産をあまり購入していないので2023年度にどれだけ投資をしたのかが気になりますね。
有形固定資産の内訳は下記のようになっています。どれも増大はしていませんね。

  • 通信設備

  • 建物及び建築物

  • 土地

積極的な自社株買いは嬉しいが・・・

KDDIは積極的な自社株買いを行っています。自社株買いを企業が行う理由としては、世間に出ている株数を減らすことで株価を上げて投資家達に還元することが挙げられます。例えばKDDIは時価総額が約12兆円ですが株数が24億であれば1株あたり約5,000円になります。ですが株数を12億まで自社株買いで減らすと時価総額は変わらないので1株あたり10,000円になり投資家が儲かるわけです。株主は1株あたり5,000円儲かるので嬉しいですよね。
ですが、自社株買いにも落とし穴はあります。それはお金が余っているから自社株買いをしているのでは?という懸念です。自社株買いを行うということはそれだけ会社の現金が出てしまっています。
それだけの現金を使うのなら設備等に投資をしてさらに利益を増やして配当金や株価の向上に繋げてほしいという投資家の意見もあります。
つまり自社株買いを積極的に行うのは短期的には投資家からは喜ばれますが、目先のことしか考えていない、それだけ投資して利益を増やす手段がないとも取れます。

まとめ

  • KDDIの売上は殆どが国内向け。海外はこれから成長することを期待。

  • 私達のイメージ通りのTHE通信会社。

  • 売上高は堅調に増えているが、電力エネルギーの高騰により営業利益が圧迫。

  • 補助金収入が500億円以上あり今後大きな投資をする可能性はある。

  • 配当のバランスは良い。自社株買いも積極的に行っている。

  • 流動比率は3大キャリアの中でも一番健全。

  • 金融事業の収益拡大が今後見込まれる。

  • 長期で株を持つなら3大キャリアの中で配当金を含めて一番安定しそうな印象。

ここまで読んでいただきありがとうございます。コメントにどの企業の分析をやって欲しい等書いていただければ分析します!

出典:EDINET閲覧(提出)サイト https://disclosure2dl.edinet-fsa.go.jp/searchdocument/pdf/S100R0PR.pdf?sv=2020-08-04&st=2024-03-24T22%3A54%3A53Z&se=2033-06-22T15%3A00%3A00Z&sr=b&sp=rl&sig=V2p4xKqLo8wszUnXALor1h0v7y44ZkckE%2F0ZA2v7Z2g%3D

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