見出し画像

イーロン・マスクの家にはアニメがいっぱい

LAからNYへ向かうエコノミー・クラスのシートで雑誌 ヴァニティ・フェア(VANITY FAIR) 4月号を手に取る。表紙はアーティスト「グライムス」のスタイリッシュな撮り下ろしインタビュー特集、ウラ表紙はリリー・ローズ・デップをフィーチャーしたシャネルの広告。

そのシャネルはインスタグラムで彼女をフィーチャーしたショート・フィルムを発表した(上記リンク)。ハリウッドのグラマラスなイメージを思いっきり詰め込んだこのフィルムは、大スターであるジョニー・デップの血を引く彼女にピッタリと言える。

ヴァニティ・フェア誌のインタビューから(その1)

しかしリリーはウラ表紙のスターであって、表のスターはグライムスである。グライムスはイーロン・マスクのパートナーであり、二人の初のベイビーの名前が「X Æ A-Xii」(英語表記は"X A.I. Archangel")であることが話題になった。

ツイッターを通じて数々の発言が取り上げられ騒がれたイーロン・マスクが、とうとうツイッターに経営陣・資本家として参加することになったのは、ご承知の通り。そのずっと以前から、彼のツイート「『君の名は』は良かったね。(I love Your Name.)」から伺えるように、彼はアニメの大ファンであることも知られている。

ヴァニティ・フェアのグライムスへのインタビューは彼女の部屋で行われた。そこにはおそらくイーロン・マスクの影響と思われる「『もののけ姫』の毛布」やら「『デスノート』の絨毯」といったインテリア、インタビューの途中で彼女がベイビーXに「ラップトップで『となりのトトロ』を見せる」といった描写がある。またグライムスの最新シングル「Shinigami Eyes」のプロモーション・ビデオは題名通りアニメの影響を感じさせるものであった。

ヴァニティ・フェア誌のインタビューから(その2)

しかしインタビューは一人のポップ・ミュージックのスターとして、彼女を取り上げたものであり、彼女はイーロン・マスクとのロマンス以前から「自分で全ての音を作り上げるクリエイター」としてミュージック・シーンでは知られていた。インタビュアーにとって彼女の話を聞くのは「まるで日本語の話せない貴方が東京の地下鉄のマップを眺めているような」気分、と感想を述べている。記事中「イーロン・マスクが彼女と別居することに賛成したのは賢明だった。彼女曰く『何もかもが散らかっていてアニメなのは好きじゃない』」とのことである。

もちろんグライムスは純粋にイーロンから得たインスピレーションを楽曲にすることも出来る。例えばイーロンのパートナーとしての生活を指しているらしい「2077年のマリー・アントワネット」"Marie Antoinette 2077"といった作品。その一方で自身のアーティスト活動をより新しい方向にアップグレードにするために、彼女の新しいマネージャーに「ツアーもしたくないし、グッズも売りたくない」と主張することも出来る。(なおマネージャーは彼女の難題に対して「分かった、じゃあメタバースでツアーしてデジタルのグッズを売ろうじゃないか」と提案したらしい。さすが、彼女のマネージャーだけあって、よく分かっていらっしゃる。)

ヴァニティ・フェア誌は「彼女は音楽的に別の惑星から来たようだ」と評している。昨年秋に封切られた評価の高い映画「DUNE/デューン 砂の惑星」へ楽曲を提供する予定もあったそうだが、この映画の原作小説から受けた曲を過去に発表している彼女が今注目されるのは、イーロン・マスクと彼のベイビーのせいだけでは決してない

グライムスを「前門の虎」とすれば、ハリウッド俳優の血を引くリリー・デップは「後門の狼」。偶然の組み合わせかもしれないが、この二人のギャップこそがハリウッドが今日においても魅力的である理由であろう。次から次へと現れるスターたちは貴方を魅了してやまない。彼女達の魅力がまったく異なる種類であるからこそ「前門のグライムス、後門のリリー・デップ」に抗うことが出来るだろうか?

気がついたら着陸まで一時間をきっている。私に出来るのは、せいぜいエコノミー・シートの上で彼女達の登場する夢でも見ることだったのだろう。(終)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?