J.S.バッハ:「目覚めよ、と呼ぶ声あり」、「主よ、人の望みの喜びよ」

J.S.バッハ (1685-1753) ドイツ

バッハは生涯に300曲もの教会カンタータを作曲している。当時ドイツの教会では毎日曜日、そして主な祝日の礼拝の時、さらには選帝侯などの誕生日、戴冠を祝うための行事、とあらゆる場でカンタータは演奏されており、教会、また市民にとってもなくてはならないものであったといえる。本日演奏する2作品は、カンタータが最も多く作られたライプツィヒ時代(1723-1750)のもので、バッハは聖トーマス教会の音楽監督の地位にあり、礼拝などの音楽を一手に引き受けていた。彼は毎日曜、精力的に新たなカンタータを生み出したのである。

♪「目覚めよ、と呼ぶ声あり」 変ホ長調


 この曲のもとは、1731年に作曲された同名のカンタータBWV140である。1746年以後に出版された、オルガンによる≪6つのコラール(シュプラー・コラール)≫BWV645の第1曲にもこの曲があるが、これはバッハ自身が上記のカンタータから編曲したものである。この曲集はバッハはが特に人気のあったカンタータを、ライプツィヒ以外の市民にも聴いてもらうため、そして一人で弾いても楽しめるようにオルガンに編曲しなおしたのではないかといわれる。
 装飾の無いコラール定旋律(讃美歌の174番の全3節)と、それとは全く無関係な温かみのある美しい副旋律がかけあっている。

♪「主よ、人の望みの喜びよ」 ト長調


 様々な編曲がされ日本でも広く親しまれているこのコラールは、1723年に作曲されたカンタータ≪心と口と行いと生活で≫BWV147の第6曲、第10曲に登場する。もともとはヴァイマール時代(1708-1717)に作曲を始めていたのだが、カペルマイスターの地位に就くことができなかったため一時中断していた。その後のライプツィヒにて再びペンをとるのだが、この地では予定していた教会の祝日にはカンタータは演奏されないということから、聖母マリアの訪問の祝日のためにと書き直された。

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