見出し画像

ブラームス:2台ピアノのためのソナタ ヘ短調 Op.34b

J.ブラームス (1833-1897) ドイツ
♪2台のピアノのためのソナタ ヘ短調 Op.34b
1862-1864年完成。
この作品はもともと弦楽5重奏曲として作曲され、その後2台ピアノ版、さらにそれを土台にピアノ5重奏曲へと改作されていった。弦楽5重奏においてはブラームス自身、弦にその能力以上のものを求めていたため、友人であるヴァイオリニストのヨアヒムは「精力的な演奏でなければ不明瞭に響く」と指摘している。
2台ピアノ版も作品として素晴らしいことには違いないが、弦楽器のように滑らかにつながる音を意識した部分や、明らかに弦の持つ豊かな色彩や甘さ響きを求める箇所、また弓の弾みから生まれるテンポ感、音の並びは、打弦楽器であるピアノでは表現がなかなか難しく工夫が求められる。最終的にピアノと弦楽器の良さを存分に発揮できる形はピアノ5重奏曲であったといえる。

作品は極めて綿密に作られており、ベートーヴェンの影響が大きいが、ブラームスらしい重厚さ、渋さ、モチーフの扱い方も作品からうかがえる。
第1楽章(Allegro non troppo)は全体的に暗く、力強さと威厳を持つ。
第2楽章(Andante un poco Adagio)はシュ―ベルト風の歌である。ブラームスはウィーンを訪れた際にシューベルトの作品と出会い、深い感銘を受け、作品の収集、研究にも携わった。その自然な旋律はブラームスに少なからず影響を及ぼしている。
第3楽章(Scherzo Allegro)は性格の違う3つの主題が交互に現れる。ベートーヴェンの第5、9交響曲のスケルツォ楽章に似た性格を持ち、思わず首を振りたくなるようなリズム感が全体を支配し、激情ほとばしる楽章である。
第4楽章(Finale Poco sostenuto-Allegro non troppo)は暗く神秘的な序奏で始まり、続いてブラームスらしい哀愁をおびた民族的な旋律が登場し紡がれていく。この楽章の結尾部は長大で、とどまるところを知らない非常に速い音の流れが駆け抜けていく。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?