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響け!ユーフォニアム~決意の最終楽章~雑感

2023年8月に劇場化2024年TVアニメ化が決定している最終楽章
久美子たちの世代の話です

当然ネタバレありなんで 当たり前ですが

で、大まかな感想ですが
これまでの個性的なキャラと意味深なセリフが少なくなって
大きなテーマを元にストーリーを展開していくという形になります
それはそれで面白かったのですが
メタな事情があったのかも知れませんが、次の世代も書くぞー
くらいの感じで書いて欲しかったというのが欲張った感想

アニメでは、そこの部分は脚本家はもちろんわかっていると思うので
どう魅せてくるかが期待です

主人公目線がこれまでより強くなった作品

主人公久美子の苦悩

最終楽章では、基本的に久美子の苦悩の話になります
これまでも主人公として、いろんなトラブルに巻き込まれた久美子ですが
物語の本筋になるような事に関しては、周りが解決している事が多いです
それが、3年生かつ部長となった最終楽章 周りに頼れないという状況に追い込まれ自分で解決しなければならないのですが

やはり、久美子の優柔不断さからいろいろこじらせる事になります
この世界にはもう あすかも優子もいない 自分自身が『特別』にならないといけないという困惑
久美子から最も近い存在であるはずの、秀一と麗奈との考え方の違い葛藤
そして、自分自身の将来を決めるという重圧
そういうものをはねのけて、ハッピーエンドを迎えられるのか?

ライバル出現

久美子に真由という強豪校から転校してきたライバルが出現
奏者としての久美子と部長としての久美子に挟まれ混乱している上に
久美子派と真由派(滝派)に別れる部内
ここが物語の中心になっていきます
真由の真意はどこにあるのか?滝先生のねらいはどこにあるのか?
部長としてどう解決するのか 久美子という奏者としてどうしたいのか?
悩む間もなく進むスケジュール
誰でもない自分との戦いがはじまった

滝先生の憂鬱

いままで絶対視しかしてこなかった滝顧問 しかし3年目になった今滝先生の人間として弱い部分がでてきます それに対する各人特に幹部3人の意見の違い立場の違い
特に秀一は滝先生ではなく、滝サンと呼んでいる事からも神格化してない事がわかる
大人と子供その中間の高校生という危うさを、あすかの時とは違う形で表現されています
しかし、これにつっこんで真っ当な意見を挟んでくる奏ちゃんの鋭さはさすが…

「音楽を楽しむ」ということ

橋本っちゃんの口癖 でもこれも最終楽章のテーマの一つ
コンクールで結果を残す そのために頑張るのも必要
でも、そのためについてこられない人は切るという選択はどうなのか?
そもそも音楽を楽しむってどういう事なのか?
久美子、秀一、麗奈の3人で微妙なズレがある
真由をはじめ、部員ひとりひとりその定義が違う
部員103人の意見が一致するわけがない、その上でどう音楽と向き合うか
それもテーマの一つだったように思える

                 *

総じて前作品より難しいテーマになっていると思う
結果として、ストーリー全体に関して一貫したテーマを持って書かれている作品ではないだろうか

ただ、ストーリーを重視したばかりに エピソードというものが薄くなってしまった感は否めない
あれ?これって滝先生と同じ悩み???w

この後は気になった点を

キャラが薄いのが気になる

キャラは沢山出てくるのですが、どのキャラもこれまでに比べて薄いです
ある程度キャラが立っているのは奏くらいではないでしょうか?
基本的に心理戦のこの作品。キャラの弱さはどうしてもエピソードの弱さにつながってしまいます。

一年生4人組

釜屋すずめ 義井沙里 針谷佳穂 上石弥生
この4人全然キャラがわからん…

すずめは、親父ギャグをいうキャラという微妙な特徴づけをされているが
沙里がずる休みした時に、久美子にウソを言って伏線を張ったりしている
そこをもうちょっと伸ばしたら、奏世代の次の部長候補としてのキャラ立ちができたのではないだろうか?
あと、つばめの能力を引き出した順菜と久美子のエピソードを挟めば
さらに厚い話になったのではないかと

沙里も真面目で気弱でクラリネットが上手い
それだけのキャラになっている、考え方からして真由と意気投合して久美子を混乱の局地に追い込む くらいのエピソードが欲しかったところ

佳穂に至ってはつばめのギャグを笑う担当でしかない
真面目でちょっと天然 で終わっちゃうキャラでもったいない
梨々花あたりと組ませて、天然パワー炸裂なエピソードが欲しかった

弥生に至っては…もうググっても絵しかでてこない
バンダナ巻いてるくらいしかキャラづけがない
4人全員キャラづけってのは難しいので、無理にエピソードまでつける必要はないにしろ、誰と仲がいいとか簡単なキャラづけはあってよかったと思う

剣崎梨々花

天然だが聡い部分がある…と書かれてもよくわからない
確かに「リズと青い鳥」では、重要な役割を持っていたが、本編ではほぼ空気 の割にはプールや大学展には誘っていたりちぐはぐさが目立つ
これがきっかけで、りりりん組が一騒動起こしてくれれば物語として面白かったのだけど

月永求

ここまでの中では一番キャラが立っているエピソードも豊富だけど
解決がちょっと弱い…
緑輝の本気モードを出せるエピソードだっただけにちょっともったいない

久石奏

小悪魔的存在で、重要キャラだけに登場回数は多いが
どうも、ぱっとしない… あすかと比べると常人を離れていない
奏の場合はもっと『特別』な存在でよかったのではないだろうか?
小悪魔どころか悪魔的に久美子を振り回してよかったと思う
その方が、奏の魅力を十分に引き出せるし あすかを連想させて面白いと思う
最後はただのいい子になってしまったし…

黒江真由

正直性格がわからない
無邪気で言っているのか、久美子を困らせる為に言っているのか 心からの親切心なのか…
奏がかなり警戒していて、そのあたりのやりとりは面白かったけれど
結局何も解決していない、黒江真由という人物がどういう人物だったのか最後まで不明
小説なので、完全な解決は必要ないかも知れないが 読者に「こういう人物なんじゃないか」と想像させるくらいにはヒントが欲しかった

黒江真由の清良学園時代のエピソードを求める声が上がるのは当然だと思う

久美子・秀一・麗奈

この3人仲が良すぎる
もちろん、3人がギスギスしていたらストーリーが破綻してしまうけれど
もうちょとぶつかったり喧嘩したりしても良かったんじゃないかと
秀一と麗奈がぶつかりかけるけど、結局なーなーになっているし
あそこは、久美子が本気で怒っていい場面だと思う
終始感情的にならない久美子があからさまな怒りを露わにすれば、読者の久美子を見る目が変わっただろう
そしてその時の麗奈の心理描写によっては、低い麗奈の評判を覆すくらいのエピソードになったかもしれない

魔法のチケット

久美子が魔法のチケット(絵はがき)を使うわけですが
正直使う理由が弱い
自分があすかなら「えーもしかして麗奈と喧嘩したとかー」「だめよーそんな事でチケット使っちゃー」
とか言ってるとこです
実際、具体的には何の解決もしてないですし
久美子がいらんこと口走って、あすかに怒られてもいないし
あすか登場という千載一遇のチャンスをもうちょっと快活にまとめてほしかったなと

こう書けるのもここまでがあってこそ

最終楽章が嫌いとか、そう言っているわけではないんです
ただ、ここまでの濃いキャラと意味深な言動を重ねてきた作品にしては
ちょっとそういう場面が少なかったかなと思うのです

メタい事情もあったかも知れませんし、まあそこは詮索しないこととしても
この手の作品は、読者に想像力を与えてなんぼだと思うんですよ
それがちょっと弱かったかなと思います

でも、そう思わせるのは ここまでの作品の経緯があったからこそであって
「それに比べて」という話です
決して全面的な批判をしているわけではないということをご理解頂きたいです

なんやかんや言ってますが、一日一冊のペースでしっかり読めたので
十分たのしめました ありがとうございました

多分、これで完結ではないかとは思いますが
ちょっとの期待をこめて…外伝的な作品期待しています


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