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マジックハンドを買おうかどうしようか迷っている話

(今日はGが出てくる話です。嫌いな方はここで読むのを止めてくださいね。また次のnoteでお会いしましょう)

一年に一回だけする名もなき家事がある。

Gキャップ(ホウ酸団子)交換。
私はこの名もなき家事(いや、名前ついてるか)が嫌いだ。

家具の隙間、冷蔵庫と壁の隙間、レンジ台の下などに這いつくばって、古いGキャップを回収して新しいのを置いていく。
たまに古いのを取り損ねて手の届かぬ奥のほうへ押し込んでしまい、定規だの床モップだの持ってきて対応する。それでも取れなくて引っ越しのときに歴代のGキャップが埃まみれになって出てくるのを思い浮かべながら、回収するのを諦める。

この嫌いな作業を楽しくするために、マジックハンドを買おうかと真剣に検討中だ。


北海道出身の私が初めて、Gを見たのは東京で一人暮らしを始めた春先のことだった。

ある晩、背後に何か気配を感じて振り返るとヤツはいて、しかも飛んだ。心臓が止まるかと思うほどびっくりした。たぶん、腰を抜かした。

その夜は、恐怖とショックで一睡もできなかった。
翌朝、学校で友達に開口一番に「どーしたの?」と言われるほど、私の目は真っ赤だった。

母親にも電話をしてしまった。
母は「どうしようって言われても、Gのためにそっちに行くわけにもいかないのだから、自分で何とかしなさい」と言われてしまった。一人暮らしの自由さに浮かれていた私だったが、この時初めて一人暮らしの心細さに心が折れそうになった。

泣きそうになりながらも、とにかく何とかしなければという思いで、いろいろやってみた。

まずは、缶の中から煙がでてくる「バルサン」。バルサンを炊いた後、半べそかきながら、全ての食器と調理器具を洗って熱湯消毒をした覚えがある。

これは、ただGが移動するだけで、効き目がなかったように思う。その後、アパートの隣室から、Gを追い回しバシッバシッっと仕留める音を聞くようになったからだ。

バルサンと同時に買った「Gホイホイ」。
これは、恐ろしいものだった。後処理がとんでもなく大変なことに気がついたが、後の祭りだった。

ゴミ袋の口を大きく開けて、へっぴり腰になりながら火ばさみでGホイホイをつまんで袋に入れる。顔を背けながらゴミ袋口を縛る。生きた心地がしない。

そういえば、北海道を出る時、母が長年我が家で使っていた火ばさみを私に持たせた。「何かと使うから」と。母はこれを想定していたのだろうか。

そんな格闘の日々に終止符を打ってくれたのは、東京在住の母の友達だった。ある日アパートのドアノブに紙袋が下げられていた。中を見ると、手作りのホウ酸団子というものが入っていた。玉ねぎの匂いがするそれは、アルミホイルに包まれていた。メモが添えられていて、部屋のいろいろな所にこれを置いておけばGを見ることはなくなるらしいことがわかった。

あの日、私が半泣きで電話をした後、母は友人に電話をしてくれていたのだ。親切にその方は私のためにホウ酸団子をつくってアパートまで届けにきてくださったのだ。幼少の頃、東京に住んでいてうっすら記憶にある人だった。

ホウ酸団子の効き目は抜群で、恐怖におびえることはなくなった。それからというもの毎年私はホウ酸団子を買って家中に設置している。

今年もそろそろその季節がやってきた。


最後までお読みいただきありがとうございます。
また次のnoteでお会いしましょう。





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