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朝のチャレンジ

信号待ちで一緒にスタートを切ったはずなのに、彼女と私との距離はみるみるうちに開いていく。なんだか悔しい。

朝、ひそかにチャレンジしていることがある。
家から最寄り駅までの道でよく一緒になる人がいる。20代だろうか。若い女性だ。リュックを背負ってスニーカーを履いている。特別背が高いわけでも、足が長いわけでもない。筋肉質という感じでもない。

が、この彼女は歩くのがとんでもなく速いのだ。

どれぐらい速いかというと、もし並んで歩こうとするなら間違いなく私は途中で小走りをしなければ、彼女の横に並らぶことはできない。走らずに後をついて行こうとすると途中で息が弾みだす。それぐらい。速い。

このチャレンジは、一歩間違えるとストーカーのようでかなり怪しいので、気をつけなければならない。でも、やめられない。歩くのは速い方だと思っていたのに、なぜこんなに差が開くのか、悔しい。

今日こそは、同じペースで歩いてみせると意気込む。彼女が右足を出せば私も右足を出す。次は左。同じタイミングで足を出してみる。歩幅も観察したところ特別広く出しているわけでもない。足の蹴り上げ方?何が違う?

2歩、3歩たったこれだけの短い時間でうそみたいにどんどん差が開いていく。あ~、今日もだめだった。彼女はあっという間に小さくなって、駅に吸い込まれていく。

彼女より1本遅い電車に乗って私は考える。
彼女はスニーカーだけど、私の靴はちょっとおしゃれ靴。彼女のリュックは重そうじゃないけど、私のは異常な重さ。分厚い教科書4冊、水筒、電子辞書、玄米おにぎり二つ、日傘にペンケース・・・。肩にめり込む重さ。

分かっている。一番の違いは、年齢。
でも、明日もきっとチャレンジすると思う。


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